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犬の新商品の説明を受けるきっかけは世間話だった

長かった梅雨が明け一気に真夏へ突入した。
あちこちの松の木からは待ってましたとばかりに大声を張り上げているセミの声が聞こえて来る。
そんな外に出ただけで全身から汗が滲み出てくる8月の初旬、スーツ姿の男性たちが私の教室へ現れた。
教室は通称サーファー通りという通りに面していて辻堂海岸まで徒歩3分である。
真っ黒に焼けた上半身ハダカの人々がビーサンで闊歩するこの街には似つかわしくない彼らは約束の時間より早く到着したらしく、サーファーが集まるカフェで時間を潰していたという。

繋がりは意外なところに

「いやー、風が気持ちいいですねぇ。湘南は良いところですねぇ。」

名刺交換を終了するや否やその中で一番年長であり経験も豊富な彼はさすが営業マンとも言うべきトークを展開し始めた。こちらも”しゃべり”が本職が故に彼の明るい積極的な流れも手伝いいつも以上に目的以外のことをペラペラ話してしまう。
しかしこうした一見関係ない話も意外な発見となる可能性があることを私は充分に理解しているつもりだ。それが仕事やその他の有益なことに発展し、人の繋がりが人生を豊かにしてくれることを何度と経験してきた。

今回もそんな繋がりがきっかけとなった。
以前に別の仕事の会場で同席した彼とは初対面ではよくやりがちな世間話をした。
その中で私は湘南で犬の行動治療をしていること話したらしい。
(本人は何を話したのか全く覚えていないのだが。)
実は私は複数の仕事をしているため、名刺も使い分けている。
当時彼へ渡した名刺には地元湘南の住所ではなく、事務所のある東京の住所が載っているものだった。
新商品の販売戦略に頭を抱えているチームのリーダーである彼は突然私のことを思い出し、当時の立ち話で記憶していた”湘南”が彼の会社から遠くないことに気づきすぐに連絡をしてきたのだ。
電話の先から聞こえてくる彼のパワフルな声を聞いても、全く顔を思い出せないほどを当時はあらゆる人と社交辞令で世間話をしていたことがわかる。
(ご本人には心底申し訳ない。。)

スピーディーな営業マンに動かされる

どれだけ急いでいるのか、彼らはすぐにでも会って説明をしたいという。
そして電話の翌日、真夏の湘南へマスクとスーツという姿で現れたのである。
私を思い出し、当時交換した名刺を探してから二日目だ。
これが営業マンのスピードというものなのだろう。

お互い目的以外のことをペラペラ喋りながらもスムーズに本線に戻り、準備された資料とともに実に無駄のない商品説明が始まった。
一緒に連れてきた若手の男性たちが時折追加情報を加えながら、ベテラン営業マンの彼は我々が出したお茶を一回も飲むことなく熱く語り続け、結果私たちの気持ちを動かした。

「使ってみる?」

私の真横に座るうちのもう一人のインストラクターの顔を覗き込んで聞いた。
彼女の顔には迷いの様子は全く伺えないどころか、
「この部分の効能に興味があり、まずは自分の犬に使ってみたいです」
と提供された資料を指差し、営業マンたちを喜ばせた。


つづく。。。。。




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