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怖がる犬の対応:「犬に耳を傾ける」&「背中を押してあげる」

犬が怖がるのには様々な原因がある。

一番大きな原因とされるのは、幼い頃の社会化不足だ。

生後2ヶ月齢までは優れたブリーダーのところで母親ときょうだい犬と、そしてその他の成犬たちと過ごす。その2ヶ月間の間にブリーダーはトイレトレーニングを開始し、様々な刺激に慣らす社会化プログラムも行っているはずだ。特に人の手や音など可能な刺激を良い体験として積ませていく。盲導犬や介助犬などはこの頃から食事中は生活音などを録音したものを聞かせ慣らしていく。家庭犬もこうした社会化が重要であると言われ続けているが、残念ながら未だそうした状況で育つ子犬が少ないのが残念である。

生後2ヶ月で一般家庭に来た子犬はすぐに続けて社会化を行わなければならない。この時期は生後4ヶ月で終わってしまうため、期間限定の時期なのである。
人間でいう幼稚園生や小学生時期にあたる生後4ヶ月の経験数(良い経験)がその後の行動へ影響してくる。

何か嫌な経験や恐怖体験などが影響する場合もある。とても大きなトラウマ的な経験が類似した刺激に対する嫌悪を覚え、恐怖反応として出てくることもある。

行動学的に、、、

私はずっと怖がりの犬ばかり受け入れてきた。どこへも譲渡できないような怖がりの犬を見ていると、「じゃあ、うちにおいで。」となってしまう。
虐待を受けてきた犬や恐怖が大きくなるとものすごく噛み付いてくる犬もいた。
それぞれの状態を見ながらリハビリをしてきた経験からお話ししよう。

トレーニング方法はいくつもある。
基本は古典的条件付けという手法の中の拮抗条件付けを行うのだが、それはあくまで手法であり、大事なことはいつでも「犬に耳を傾ける」ということ。

怖がりの犬のトレーニングほど繊細で、そして寛容でなければならない。
こちらからアプローチするよりは犬からのアプローチを待つ、というスタンスが基本となる。犬の気持ちに寄り添い、「ムリ」というメッセージが出ているようならそれを尊重することも必要なのである。犬自身が安心安全を感じれば、犬から心を開いてくれるようになる。

例えば、ブラッシングをしている時に、犬から「ムリ」のサインが出たとしよう。この時に飼い主の対応の選択肢は、次のいずれかになる。
① ブラッシングを止める
② 声をかけながらもう少し続けてみる
③ 何かを変えてやってみる(体勢、強さ、部位など)

私は①か③を選ぶことが多い。

行動学的に見ると、①の止めるという選択肢は良くないと思われる人も多いだろう。確かに以下のような図式が成立する。

   犬がブラシを嫌がる →  ブラシを止める
             ⬇︎
       ブラシを嫌がる行動が強化される

オペラント条件付けの「負の強化」が発生していることになる。

確かに。。。

犬の言い分に耳を傾ける

しかし、犬のトレーニングとは時として学習理論だけでは片付けられないものもあり、それは相手の状況や気持ちに寄り添い尊重することで生まれるコミュニケーションとなるのだ。

ブラシを嫌がったからやめてあげる、のではなく、

「そっか、もう限界なんだね。」
「今日はそういう気分じゃないんだね」
「まだブラシは無理かな」
「じゃあ、別のところをやってみようか」

といった言葉を掛けながら一旦休憩をとったり変化をつけてあげると良い。

すると犬は「この人は自分の言い分を理解し聞いてくれる」と判断し、逆に心を開いてくれるようになることも多いのだ。

犬の背中を押す

私はこの表現が好きだ。
教室で私がこの言葉を使っているのを聞いたことがある方も少なくないだろう。

犬が「ムリ」と表現した際に、理解を示す言葉と態度を犬に示しながら、

「でももうちょっとだけやってみない?」と声をかけて誘うのだ。

あくまで誘うように促すのがポイント。強制してはいけない。

例えば散歩が怖くて歩けない犬はできるレベルからちょっとずつ行うのが基本で、犬がムリと言ったら止める選択肢も頭に入れながら、

「でももう数歩だけ頑張ってみちゃう?」などとと誘うのだ。

基本のコミュニケーションの練習も大事

怖がる犬ほどトレーニングの時間を持って欲しい。
私の言うトレーニングとはいわゆる「トレーニング」ではないのかもしれない。
トリーツなどを使って回るスピンの練習やお手でもいい、何でも簡単なことから練習をすることで、それが犬にとって楽しいコミュニケーションの時間になる。

たくさん声をかけ、褒め、食べ物を手から与えるなどし、楽しいゲーム感覚でトレーニングを積むことで、飼い主とのコミュニケーションが多くなる。
結果、怖がる際の対応も取りやすくなり、犬が自信を持つようになる。

期待しすぎない期待!?

明るい元気な子になって欲しい!と大きすぎる期待を持たずして期待して欲しい。
そして少しの変化を認めてあげよう。
犬は変化しているのに、「まだできない」「まだ怖がる」「まだ吠える」といった表現をしているとそれ以上改善しなくなる。
前回よりほんの少しでもできるようになったことを認めることで、結果大きな変化につながることが多い。

実際、私が保護してきたたくさんの犬猫たちは大きなトラウマを持っていながら、劇的に変化した子もいた。まるで別の犬のようになった子もいる。

頑張りすぎない頑張りで、恐怖を一緒に克服してみよう。


怖がりさんのトレーニングはお任せを。

パップスフレンズ しつけ教室


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