9.腕を使わずに泳げる?

先日より開催中のパラリンピックでは、多くの選手が活躍する様子に、勇気や希望や感動を頂いた方は多いと思う。どうしてあんなふうに動くのかなと疑問を持った方もいたのではないだろうか?先天性にせよ後天性にせよ、動かせるところをフルに動かし動作を工夫し筋力をつけバランスを整え、競技に取り組んでいる。彼らの幸せそうな笑顔を見ていると、これまで越えてきた大きな壁や、関わってくださった多くの方々の温かい気持ちを感じずにはいられない。

水泳というスポーツは、誰にでも優しい。
犬にも泳ぐ仔がいるのだから、人間の区別なんてゆうに超えていく。男性も女性も、日本人も外国人も、赤ちゃんも、小学生もおじちゃんも、おばあちゃんも、手や足がなくても、目が見えなくたって聞こえなくたって、ちょっと頭がぼんやりしていても、おデブでもマッチョでも…(マッチョは浮きにくいので大変だが)泳いだり浮かんだり回ったり自由に動き回れる。

自分たちが見えない状態で泳ぐとどうなるのか?パラの選手達がどれだけ上手く泳いでいるのか(その工夫や努力)や手が使えない状態を試してみよう!とレッスンでやってみた。

具体的なやり方や解説は、ドリル映像で折り込まれているので見ていただければと思うが、私達は目で見てバランスをとって体の動きを微調整している。試しに目を瞑ってその場足踏みをしてほしい。
元の位置に居続けられただろうか?あらぬところまで大行進をしてしまった方もいるのではないだろうか?

水泳では怪我をしないためにも薄目を開けて挑戦する。
自分では左右を同じように動かしているつもりでも、曲がってしまったり、感覚でまっすぐ進むを理解しているつもりでも、上手くできていなかったり。見えない怖さから力んでしまうこともしばしばだ。
バランス感覚も、やはり目で見て合わせていることが多い。本来目を閉じてリラックスして体の動きを観察すれば良いのに…。目が見えないだけでもとても不便である。だからこそ、もっと体の動きや使い方に気を配って、まさに体の反応に目を配って感覚を高める可能性に気がつく。

筋肉が思うほど均一に動かせなかったりする事実に気がつけば、私達は、日々この体のコントロール方法や力の出し方を練習することもできるが、やはり、見えていて、簡単に動かせて器用に動く「あるもの」に頼っている。

腕がないことを考えてみても、体から体重を前に動かせれば、浮いていることも進むこともできるが、体幹が弱かったり使いこなせなかったり、体が凝り固まって動かせなかったり、筋力不足など、さまざまな理由でうまく出来ないならば、そこを直せばよい。また体幹から動かすことをせずに手先足先から動いている人は、本来の自己の持つ力を発揮しきれていないことにもなる。腰を捻るから手がかける。腰を捻るからキックが蹴れることを体幹の力を手先足先に伝えると言うならば、彼らが動かせる部分を必死に鍛え上げ使いこなしている様は、とても興味深く勉強になる。無駄に力んでしまっても動きは当然悪くなる。 素早く動こうとして力んで固まってしまう方のヒントにもなるはずだ。特にバタ足においては学ぶべきことだと思う。

パラアスリートの活躍をブームで終わらせることなく、彼らの泳ぎをみたりする機会があれば一緒に泳いで彼らの泳ぎをじっくり観察してほしい。

また、あなたの動きと見比べて、何がどのように違うのか、間違い探しをしても面白いと思う。

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