おばあちゃんのはなし 23

「ずるいはなし」

 昔から不器用でお裁縫が特に苦手でした。
なぜそうなったかが全く思い出せないのですが、小学校の時に「手芸クラブ」に入ってしまいました。クラブの時間はほとんど布を縫っている「フリ」。ちまちまと隠れて布を動かしていたような気がします。
その経緯が記憶にないのですが、ひとつだけ想い出として残っている事があります。

 年度末、作品をひとつ提出することになりました。
大変です。ペーパーフラワーですらまともに作れなかったのですから。

 どうしよう!
悪戦苦闘する私を見かねてか、おばあちゃんが小さい簡単なウサギのぬいぐるみをちゃちゃっと作ってくれました。
クラブの時間、何事もなかったように前に出て「ウサギです!」と発表しました。先生にはもちろんバレバレだったでしょうが。

 小学生が作った風な簡単なぬいぐるみでした。ウサギの形の2枚の布を縫い合わせただけ。でも縫い目もきれいだし、着脱できる洋服までちゃんと来ています。おばあちゃんなりになるべく簡単に、孫のレベルを考えながら、でも恥をかかないようにいろいろと考えながら作ったのをすごく感じました。

 どこにいったのかな、ウサギ。ちゃんととっておけば良かった。

(2009.9.9の記事転載)






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