34 「本音」

 お盆はゆっくりおばあちゃんに会ってきました。

 3ヶ月ずっと点滴のみで栄養をとっているけれど、いよいよ点滴をする箇所が無くなりそうな状態になり、今後どのような選択をするかを迫られる時期になってしまいました。

 ウトウトしている事が多く、ふとハッキリたした表情をしてニコッと笑ったり、半分夢うつつなのかな?という時間が多くなりました。
痛みはなさそうだな、眠たいのかな、体がしんどくはないのかな、そう思いながら、声をかけても顔のしわが少し動くくらいのおばあちゃんを見ていると、切なくてそれ以上声をかけられなくなります。
 それでも、看護士が来て、処置をしてくれた後には
「ありがとうございます・・・」
意識してかはわかりませんが、そう呟きます。昔からずっと、自分がされて嬉しいかはともかく
「ありがとうございます」
と頭を下げてきました。

 骨が目立つようになった肩を、父がずっと撫でていて
「目を開いて話をしなさいよ。ほら。笑いなさいよ」と声をかけると、今回初めて、おばあちゃんの本音らしき言葉を聞きました。じっと眼を閉じてやっと絞り出すように。

「めんどくさい・・・」

 父と、そうかそうか、と笑いあいましたが
100年間ずっと我慢してきた言葉なのかもしれないです。

 家族のため、ご近所のため、ずっと働いてきたおばあちゃんが、本当に初めて自分のためだけに言った本心だったような気がして。

 本人は顔をしかめていましたが、また聞きたいです。

(2010.8.17の記事転載)

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