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演技と驚き◇Wonder of Acting #23
タイトル画像:歌川国貞「中村座舞台開狂言仕初之図」
演技を記憶、するマガジン [November 2021]
00.今月の演者役名作品インデックス
髙石あかり:杉本ちさと・伊澤彩織:深川まひろ『ベイビーわるきゅーれ』/永瀬廉:及川亮『おかえりモネ』/(居るのに居ない、居ないのに居る)/小松政夫:店員『孤独のグルメ』/上白石萌音:宮水三葉『君の名は。』/斎藤工:内山茂『愛のまなざしを』/柄本明『情熱大陸』/(大学で演技を学ぶ)/大竹しのぶ/土屋太鳳・小松菜奈・役所広司・広瀬すず/江口のりこ:氷河衛『SUPER RICH』/アダム・ドライバー/ジェレミー・アイアンズ:エリオット・マントル|ビヴァリー・マントル『戦慄の絆』
01.今月の演技をめぐる言葉
本マガジンのメインコンテンツです。毎月、編集人が見つけた、演技に触れた驚きを引用・記録しています。※引用先に画像がある場合、本文のみを引用し、リンクを張っています(ポスター・公式サイトトップ・書影などは除く)。
アドリブなのか脚本なのか、みたいな話をよくされますが、例えば「ベイビーわるきゅーれ」のおでんのシーンはほぼ100パーセント「脚本」です。カメラをとりあえず置いて「アドリブでどーぞー」みたいな感じで撮っている。みたいなことを想像してる方が結構いらっしゃりますが、そんなに無いです。 pic.twitter.com/6DSzLcYTZk
— 阪元裕吾@「ベビわる」「黄龍の村」「国岡」公開中! (@ashida10721) October 21, 2021
#おかえりモネ 本当に永瀬廉という人の演技はすごい。いまここで、同じ顔の男なのに、ちゃんと肩の荷がおりた顔をするんです。
— かな ドラマ鑑賞アカ (@kanadorama) October 27, 2021
スクリーンにいま映っている、いないを通り越えて、映画のなかで居るのに居ない感じ、居ないのに居る感じ、また、映っているときの存在の強弱を出せる芝居にときどき出会ってふるえる。
— yabesaya (@y_b_s_y) November 6, 2021
yamasaci tohru やまちんぬ >
『孤独のグルメ』ドラマは店員が「芝居してます」感が見えてそれだけマイナス。オレ知ってる回でおそろしく自然だったの博多うどんの小松政夫のときだけ。
上白石のwiki >「2016年8月公開の劇場アニメ『君の名は。』にて、主人公・宮水三葉の声を演じる。監督の新海誠は、彼女の声優としての技術や声にのせられる情報量のすごく多い人と高く評価している」
— Komatsud Yoshisad (@harudexi) November 20, 2021
声に情報(「思い」)をのせる文化も日本独特という気がする。声キャラ、声優文化の文化論の可能性
オクターヴ >
斎藤工も求められている茂という変なキャラクターを淡々と演じていた。どんな役まわりなんだ?と観察しても、ずっと変なんだよな。そのヒントらしきものは随所にあるんだけど、それがわかったところで何にもスッキリしないのよ。彼もまた移動シーンがない。ある瞬間にいるのよ。 #愛のまなざしを
おはようございます😌💓!
— 柳田りかおん🎬 (@rundgrentodd) November 21, 2021
昨日の #情熱大陸「俳優・ #柄本明 」
深かったです☺️。
特に劇団員達にダメ出ししてる場面が印象的でした🙂。以前、役者さんは正確に演技を評価できると聞いた事があって、そういう場面を見れた気がしました😀。
皆さんも楽しい映画ライフを~🤗💕https://t.co/aAm7IUcPS5
大学で演技を学んだハリウッドの俳優が珍しくない一方で、大学で演技を学んだ日本の俳優は極端に少ない。そもそも演技を学ぶことのできる大学がほぼない。日本の俳優業界の抱える大きな問題の一つかもしれない。
— ぽよこ (@poyoco666) November 21, 2021
大竹しのぶさんが出演する舞台を観ると、必ず最初は会話のテンポや言い回しがリアリティとはほど遠くて違和感あるのに、途中からそのテンポが心地良くなって、後半必ず感情と芝居でまくってくるの、すごくない?😳
— maehara minori (@minori8823) November 23, 2021
私が映画で役者さんに求めてる一つは画面から感じる「引力」で、それがめちゃくちゃ強いのが土屋太鳳と小松菜奈。この2人は作品によって強さにばらつきがあるけど、どの作品でも恒常的に引力を感じるのは役所広司、広瀬すず。強い。
— キーノ (@1289ttkf) November 24, 2021
江口のりこめちゃくちゃ演技上手くないか?
— 不知火ちゃん (@moodinlove2046) November 26, 2021
関西弁が上手いというより、間の取り方や所作が行き届いているというか、非常に丁寧に演じられている気がする。
来週も楽しみ、スーパーリッチ。
適切な言い方かどうかわからないけど、アダム・ドライバーはある種のたおやめぶりを持っていると思う
— pulpo ficción (@m_homma) November 25, 2021
じぇれ@映画アカ >
『戦慄の絆』のジェレミー・アイアンズは、見た目に頼らずに双子を巧みに演じ分けていく。しかも、弟が兄のふりをしたり、兄が弟に近づこうとしたりと、キャラクターが変化していっても、我々にはきちんと誰だかわかるんですよ。この高度な演技は映画史に残すべきもので、語りついでいかねばならない!
引用させていただいた皆さんありがとうございます †
02.雲水さんの今様歌舞伎旅(ときどき寄り道) 第十三回:この人は誰だったかな~箕山 雲水
この僧侶はいったい誰なのだろう。そう思って、ひらいてあった筋書に目を落とす。「仙英禅師 歌六」この声だからやはりそうなのだろうけれど。
11月の歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」第一部の『井伊大老』は、そんな狐につままれたような気持ちで幕をあけた。井伊直弼の妻・お静の方(中村魁春丈)とこの仙英禅師が直弼のことを話す場面である。たしかに中村歌六丈の声で、歌六丈の名前が筋書に記載されているこの禅師が、私の目には禅師にしか見えないのだ。メイクがうまいとか下手だとか、そういう見た目のことではない。存在そのものが、他の何者でもない、禅師なのだ。
まただ。歌六丈を認識できるようになって、何度この気持ちを味わっただろう。はじめてきちんと出会った時、歌六丈は父親だった。『女殺油地獄』の放蕩息子・与兵衛の母親の再婚相手で、河内屋徳兵衛という役。与兵衛の亡き父が自分の主人だったことから息子を甘やかしてしまうその葛藤がリアルで、まるでわが家の出来事のように見えて散々泣かされたものだ。
次に出会った歌六丈も父親だった。『風の谷のナウシカ』のヴ王。トルメキア王で、子どもたちを信じることのなかった人である。娘である皇女クシャナへの風当たりはことに強い。それがかえって、ヴ王自身が世の中の汚いものすべてを引き受けているかのように、私の目には映った(ただし姿形は大変な美男子で、思わずブロマイドを購入してしまったのは余談)。はじめて「この人はいったい誰なんだろう」と思ったのは、この公演の時だった。筋書を見れば、そこに書いてあるのは必ず「歌六」の文字なのだ。何度見ても、どう見ても、この方は紛れもなく中村歌六丈。でも、そこにいるその人は心根も存在も全部が「ヴ王」の雰囲気で、これが他の誰かだとはとても思えないし、まして徳兵衛と同じ人だとは、どうやっても納得できるものではない。
そこから、巡り合わせもあって急に歌六丈の舞台を観る頻度が増し、やがて「歌六丈が出ている舞台は必ず観る」ようになった。それでも毎回「これは誰なのだろう」、これだ。今、ここまでに見てきた役を思い出してみても、たしかに顔や声は共通しているけれど、どう考えても全くの別人。それなりに様々なジャンルの舞台を見てきたつもりなのに、こんな脳内バグは経験したことがない。たまらない。これはもはや…虜。
さて、蛇足が伸びに伸びたが、肝心の『井伊大老』である。北條秀司の作・演出によるこの作品は、歌舞伎といいながらほとんど現代劇に近く、写実な台詞の連続で物語が進行する。幕があいたらまず、たしか斜めに背中を見せていたのだと思うけれど、お静の方、老女雲の井と侍女たちが座っていて、歌舞伎では見たことがない光景に面食らう(歌舞伎の場合、そういう場面では客席に対して平行に並ぶのが常)。そこに仙英禅師だ。読経を終えた禅師は、普段からそういう日常を送っている人の「今日」を切り取って覗いてみているような、そんな自然さでお静の方と話しはじめる。この脚本がまた気がきいていて、井伊直弼の名前はまるで出てこないし、それがいつの話なのかはほとんど触れられることがない。「日常であれば当たり前」をやりながら、しかしここで語られているのが誰で、このあとどうなるのか見事に匂わせる台詞の応酬。まるで脚本と俳優の真剣勝負に立ち会っているかのような感覚にすらなる。歌六丈はこの場面だけ出てすぐに去っていくのだが、これがあとにじわじわと効いてきて、ごく静かで何も起こらない作品なのに終盤は涙を止めることができなかった。この作品について書き始めるとあと5倍ほど必要になるので割愛するが、井伊直弼の松本白鸚丈はじめ出演者も、それから、ほとんど見えないのに降り続ける雪など細かい演出も、もちろん脚本もどこをとっても良い作品だった。甲乙つけがたい良作ばかりの2021年にあっても出色の出来。世の中が揺れに揺れ、ちょうど首相がかわるタイミングで観たものだから、余計に考えさせられることも多い。その前提をこともなげに敷く手腕がさすが歌六丈。観終わったあとに思い返して「見事」と唸らされるなど、しかし得難い体験をした。
それにしても、歌舞伎というのはなんと懐の広いジャンルなのだろう。次はどんなショックが待っているのか、これからのチラシを見ながら想像の旅にでも出ようかな。††
03.(突然報告)編集人より
ほそぼそ続けて間もなく2年。着眼点はいいと思うのですが、なんかぱっとしないなあ。ジャスト2年で閉じてもよいか知らん。そんな風に前号を発行したあたりで考えておりました。が。今月の言葉を集めだす。正確には、おりおりにブックマークしていたのを編集の段になってから、読み返し、取捨選択していると、あ、やっぱ、面白いやこれ。と、皆さんの言葉に、うむ。ほそぼそと続けていきますか、と思い直した次第です。つまり、わざわざ書かなければ、何事もなかった体で続いていたわけですが、たまには泣き言と笑いごとも開示しておきましょうと。以上 †††
04.こういう基準で言葉を選んでいます(といくつかのお願い)
舞台、アニメーション、映画、テレビ、配信、etc。ジャンルは問いません。人が<演技>を感じるもの全てが対象です。編集人が観ている/観ていない、共感できる/共感できないも問いません。熱い・鋭い・意義深い・好きすぎる、そんなチャームのある言葉を探しています。ほとんどがツイッターからの選択ですが、チラシやミニマガジン、ほっておくと消えてしまいそうな言葉を記録したいという方針です。
【引用中のスチルの扱い】引用文中に場面写真などの画像がある場合、直接引かず、文章のみを引用、リンクを張っています。ポスター、チラシや書影の場合は、直接引用しています。
【お願い1】タイトル画像と希望執筆者を募集しています。>
【お願い2】自薦他薦関わらず、演技をめぐる言葉を募集しています。>
05.執筆者紹介
箕山 雲水 @tabi_no_soryo
兵庫県出身。音楽と時代劇、落語に浸って子ども時代をすごし、土地柄から宝塚歌劇を経由した結果、ミュージカルと映画とそして歌舞伎が三度の飯より好きな大人に育つ。最近はまった作品はともに歌舞伎座の2021年2月『袖萩祭文』、同3月『熊谷陣屋』、ミュージカルでは少し前になるが『7dolls』、『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』、マイブームは日本舞踊。
06.編集後記
私事ですが、なんていうと全部私事なのですが、主宰する劇団の宣伝を
12/12(日)に「マヂカデミルゲキ#1」と題して、大阪市内の2カンパニーの対バン短編企画を行います。
![](https://assets.st-note.com/img/1638070518405-GpmpEbIkrm.jpg?width=1200)
1ドリンク付きで1時間程度3本の短編集となります。よろしければ、ぜひ!
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では、次は12月26日に。ごきげんよう!
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