シマノをDCF法でざっくりバリュエーション
シマノをDCF法でざっくりバリュエーションしようと思います。
自転車部品や釣具などをメインに製造・販売している会社です。
・自転車部品82.9% 314,010百万円 フリーホイール、フロントギア、変速機、ブレーキ他
・釣具部門17.0% 64,245百万円 リール、ロッド他
・その他0.1% 390百万円 冷間鍛造品、ロウイング関連用品他
売上の90%以上が海外のようです。
まず2011年12月期〜2015年12月期までのBS・PL・CFの数値を、有価証券報告書・決算短信からexcelシートに落とし込みます。
※今回は2016年12月期以降を将来としてバリュエーションしています。2015年12月期は決算短信から参照しています。有価証券報告書が開示されたら、再度バリュエーションしてみたいと思います。
excelシートに落とし込んだ情報から、過去の業績を分析していきます。
●投下資本
短期有利子負債:短期借入金 + リース債務
長期有利子負債:長期借入金 + リース債務
運転資金:受取手形及び売掛金 + 商品及び製品 + 仕掛品 + 原材料及び貯蔵品 − 買掛金
●資本コスト
株式の時価総額は、2016/2/26のものです。
株式コストについて、
・リスクフリーレートは、10年物の国債の利回りがマイナスになったりしているので0%に設定します。
・マーケットリスクプレミアムは、一般的であるらしい6.5%を使用しています。最後にこれをいじっていくつかのパターンの株主価値を算出します。
・ベータはブルームバーグから参照しています。
・上記からCAPMの公式より、株式コストを7.16%とします。
CAPM : 株主資本コスト=リスクフリーレート(0%) + β(1.1)×リスクプレミアム(6.5%)=7.16%
・有利子負債コストは、2014年12月度の有価証券報告書に記載されていた長期借入金の利率を採用しています。思ったより利率は高かったです。
・税率は、2015年12年度の決算短信に記載されていた税効果会計適用後の法人税等の負担率の税率を採用しています。
そして、現時点(2015年12月度)の資本構成の有利子負債と株式の時価総額を加重平均し、WACC(加重平均資本コスト)を求めます。
rE = 株式コスト
rD = 負債コスト
D = 有利子負債の合計
E = 株主資本の額 = 時価総額
T = 実効税率
WACC : [rE × E/(D+E) ] + [rD×(1-T) × D/(D+E)]
7.16% × 1,686,304百万円 ÷ (10,022百万円 + 1,686,304百万円) + 2.94% × (1-24.1%) × 10,022百万円 ÷ (10,022百万円 + 1,686,304百万円) = 7.13%
●リターンとフリーキャッシュフロー
NOPLAT = 営業利益 × (1 − 税率)
ROIC(負債ベース)= NOPLAT/負債ベースの投下資本
ROIC(資産ベース)= NOPLAT/資産ベースの投下資本
Spread(負債ベース) = ROIC(負債ベース) − WACC
Spread(資産ベース) = ROIC(資産ベース) − WACC
Economic Profit(負債ベース) = 投下資本合計(負債ベース)× Spread(負債ベース)
Economic Profit(資産ベース) = 投下資本合計(資産ベース)× Spread(資産ベース)
ここ5年間は右肩上がりで価値を創造しているようです。為替の影響、海外事業の進捗が良好なのでしょう。
●販管費の分析
わかる範囲での分析です。
2015年12月度の変動費を9,605百万円、固定費を59,856百万円とします。
●DCF法によるバリュエーション
最後に将来のフリーキャッシュフローを予測し、WACCで現在価値に割り引いて企業価値を算定します。
※ここで使用するフリーキャッシュフローは、
営業利益 × 税率 + 減価償却費 − 運転資金の増加分 − 設備投資 ⇒ 要は事業そのものから最終的に生み出されるキャッシュ
過去5年間の業績に基づき、幾つかの仮定を設けて、今後10年間をざっくり予想します。
グロスキャッシュフロー = NOPLAT + 減価償却費
運転資金の増加分 = 前年度の運転資金 − 当年度の運転資金
設備投資 = 当年度の有形固定資産 + 当年度の無形固定資産 − 前年度の有形固定資産 − 前年度の無形固定資産 − 当年度の減価償却費
フリーキャッシュフロー = グロスキャッシュフロー − 運転資金の増加分 − 設備投資
<仮定>
2016年12月度は会社予想を使用する。
売上高は350,000百万円(前年同期比7.6%減)
営業利益は80,000百万円(前年同期比5.9%減)
経常利益は80,000百万円(前年同期比20.9%減)
親会社株主に帰属する当期純利益は58,000百万円(前年同期比23.9%減)
・売上は2016年12月度以降は5%増とする。
・売上原価率57.5%を固定で使用する。(2016年12月度の会社予想から推定)
・固定費成長率は2016年12月度は0%、以降は10%増を固定で使用する。(2016年12月度予想から推定)
・減価償却の平均償却年数は8年を固定で使用する。
・設備投資は、2016年12月度から売上高が4000億円(2019年12月度)までは300億円程度、以降は前年度比15%増とする。
・2025年12月度以降のフリーキャッシュフロー成長率は2%とする。
以上の仮定をexcelに落とし込んだ結果が以下になります。
継続価値 = (10年目のフリーキャッシュフロー × (1 + 11年目以降のフリーキャッシュフローの成長率 )) ÷ (WACC − 11年目以降のフリーキャッシュフローの成長率)
現在価値 = フリーキャッシュフロー ÷ (1+WACC)^年数 (10年目の現在価値は、10年目のフリーキャッシュフローに継続価値を加算して算出)
最後に一株あたりの株主価値を算出します。
事業価値 = 現在価値の合計
余剰現金同等物 = 運転資金として使用しなかった現金同等物(運転資金がマイナスの場合⇒現金同等物を使用、運転資金がプラスの場合⇒現金同等物 − 運転資金)
企業価値 = 事業価値 + 非事業価値 = 有利子負債 + 株主価値
であるので入れ替えると、
株主価値 = 事業価値 + 非事業価値 - 有利子負債 - 少数株主持分
であることから、
株主価値 = 事業価値(971,533百万円)+ 非事業価値(105,068百万円)− 有利子負債(10,022百万円)− 少数株主持分(913百万円) = 1,065,666百万円
と算出されました。この数字は、株式全体の価値となります。
そして、
一株あたり株主価値(理論株価) = 株主価値 ÷ (発行済株式総数 - 自己株式数)
であることから、
一株あたり株主価値 = 株主価値(1,065,666百万円 )÷ (発行済株式総数(92,720,000個)− 自己株式(15,000個)) = 11,495円
と算出されました。
現在の株価が18,190円なので、-37%の乖離が発生しているということになり、現状は37%割高であるということになります。
ここで先ほど出てきたマーケットリスクプレミアムをいじるとどうなるか検証してみます。(WACCそのものを変更してみて検証するのも良いと思います。)
・10%にした場合・・・理論株価7,095円
・15%にした場合・・・理論株価4,839円
・20%にした場合・・・理論株価3,811円
となりました。
●結論
・昨今の自転車ブームもあり、ある程度の成長は見込めるとは思うが、急成長するような事業でもなく、現状の株価から考えると今投資してもキャピタル・ゲインはなかなか見込めないのではないか?
・とはいえROIC − WACCスプレッドはプラスであり、これが大きくブレるような事業内容でもないと思うので、株価次第では良い投資対象になりうるのではないかと思う。
以上、少しでも参考にして頂けたら幸いです。
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