モノタロウをDCF法でざっくりバリュエーション
モノタロウをDCF法でざっくりバリュエーションしようと思います。
工場用間接資材を主にネットで販売している事業を展開している企業です。
まず2011年12月期〜2015年12月期までのBS・PL・CFの数値を、有価証券報告書・決算短信からexcelシートに落とし込みます。
※今回は2016年12月期以降を将来としてバリュエーションしています。2015年12月期は決算短信から参照しています。有価証券報告書が開示されたら、再度バリュエーションしてみたいと思います。
excelシートに落とし込んだ情報から、過去の業績を分析していきます。
●投下資本
短期有利子負債・・・借入金 + 1年以内返済予定の長期借入金 + リース債務
長期有利子負債・・・長期借入金 + リース債務
運転資金・・・売掛金 + 商品 + 未着商品 + 貯蔵品 − 買掛金
●資本コスト
株式の時価総額は、2016/2/19のものです。
株式コストですが、
・リスクフリーレートは、10年物の国債の利回りがマイナスになったりしているので0%にしました。(前回同様)
・マーケットリスクプレミアムは、一般的であるらしい6.5%を使用しています。後でこれをいじって安全余裕率を持たせます。(前回同様)
・ベータはブルームバーグから参照しています。(前回同様)
・上記からCAPMの公式より、株式コストを7.60%とします。
・有利子負債コストは有価証券報告書を見ると1%未満ですが、簡易的に1%としています。
CAPM : 株主資本コスト=リスクフリーレート(0%) + β(1.2)×リスクプレミアム(6.5%)=7.78%
そして、現時点(2015年12月度)の資本構成の有利子負債と株式の時価総額を加重平均し、WACC(加重平均資本コスト)を求めます。
rE = 株式コスト
rD = 負債コスト
D = 有利子負債の合計
E = 株主資本の額 = 時価総額
T = 実効税率
WACC : [rE × E/(D+E) ] + [rD×(1-T) × D/(D+E)]
7.78% × 290,520,245千円 ÷ (7,494,067千円 + 290,520,245千円) + 1% × (1-40%) × 7,494,067千円 ÷ (7,494,067千円 + 290,520,245千円) = 7.60%
●リターンとフリーキャッシュフロー
NOPLAT = 営業利益 × (1 − 税率)
ROIC(負債ベース)= NOPLAT/負債ベースの投下資本
ROIC(資産ベース)= NOPLAT/資産ベースの投下資本
Spread(負債ベース) = ROIC(負債ベース) − WACC
Spread(資産ベース) = ROIC(資産ベース) − WACC
Economic Profit(負債ベース) = 投下資本合計(負債ベース)× Spread(負債ベース)
Economic Profit(資産ベース) = 投下資本合計(資産ベース)× Spread(資産ベース)
安定して価値を創造し、フリーキャッシュフローを生み出しているようです。
B向け事業なので、大きな景気後退がない限りは、大きくぶれないのでしょう。CMの効果も大きそうです。
●販管費の分析
2015年12月度の変動費を4,779,117千円、固定費を5,460,501千円とします。
●DCF法によるバリュエーション
最後に将来のフリーキャッシュフローを予測し、WACCで現在価値に割り引いて企業価値を算定します。
※ここで使用するフリーキャッシュフローは、
営業利益 × 税率 + 減価償却費 − 運転資金の増加分 − 設備投資 ⇒要は事業そのものから最終的に生み出されるキャッシュ
過去5年間の業績に基づき、幾つかの仮定を設けて、今後10年間をざっくり予想します。
グロスキャッシュフロー = NOPLAT + 減価償却費
運転資金の増加分 = 前年度の運転資金 − 当年度の運転資金
設備投資 = 当年度の有形固定資産 + 当年度の無形固定資産 − 前年度の有形固定資産 − 前年度の無形固定資産 − 当年度の減価償却費
フリーキャッシュフロー = グロスキャッシュフロー − 運転資金の増加分 − 設備投資
<仮定>
・2016年12月度は会社予想を使用する。
売上高 71,076百万円
売上総利益 21,746百万円
販売管理費 12,446百万円
営業利益 9,300百万円
・売上が1000億円に達するまでは前年度比30%増、1500億円までは15%、以降は5%増とする。
・売上原価率は69.5%を固定で使用する。(2016年12月度予想から推定)
・固定費成長率は19%を固定で使用する。(2016年12月度予想から推定)
・減価償却の平均償却年数は5年を固定で使用する。
・設備投資は、売上高1000億円までは前年度比20%増、1500億円までは10増%、以降は0%増とする。
・2025年12月度以降のフリーキャッシュフロー成長率は2%とする。
以上の仮定をexcelに落とし込みます。
継続価値 = (10年目のフリーキャッシュフロー × (1 + 11年目以降のフリーキャッシュフローの成長率 )) ÷ (WACC − 11年目以降のフリーキャッシュフローの成長率)
現在価値 = フリーキャッシュフロー ÷ (1+WACC)^年数 (10年目の現在価値は、10年目のフリーキャッシュフローに継続価値を加算して算出)
事業価値 = 現在価値の合計
余剰現金同等物 = 運転資金として使用しなかった現金同等物(運転資金がマイナスの場合⇒現金同等物を使用、運転資金がプラスの場合⇒現金同等物 − 運転資金)
企業価値 = 事業価値 + 非事業価値
企業価値 = 有利子負債 + 株主価値
であるので入れ替えると、
株主価値 = 事業価値 + 非事業価値 - 有利子負債
であることから株主価値は、
215,271,291千円 + 4,054,259千円 − 7,494,067千円 = 211,831,483千円
と算出されました。
そして、
一株あたり株主価値(理論株価) = 株主価値 ÷ (発行済株式総数 - 自己株式数)
であることから、
211,831,483,000 ÷ (124,498,800 − 1083233) = 1716円
と算出されました。
現在の株価が2354円なので、-27%の乖離が発生しているということになります。
ここでマーケットリスクプレミアムをいじるとどうなるか?
(EXCEL上で変更してみます。)
・10%にした場合・・・理論株価894円
・15%にした場合・・・理論株価486円
・20%にした場合・・・理論株価312円
となりました。
●結論
・個人的には将来の予測を甘めに見積もってバリュエーションしたと思うが、それでも今の株価は若干の割高という結果になった。
・ROIC - WACCスプレッドは十分プラスであり、フリーキャッシュフローもきっちり生み出していて、経営は非常に上手に運営されていると思う。また、エンタープライズ向けの事業であり、業績への大きなブレも生じにくいだろうと思う。
以上、少しでも参考にして頂けたら幸いです。
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