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”奇跡の清流”銚子川で私が感じたこと       

 しずくです。今回は銚子川に行ってきました。第一回目に引き続き、今回の実習も非常に充実したものでした。経験したことで湧いてくる疑問、学びがありました。それを今回も皆さんに共有できたら良いなと思います!!ぜひ、多くの方に読んでいただけたら嬉しいです!!

 私は小学生の頃から、アウトドアが大好きで、夏休みに家族とキャンプにいくことが毎年の楽しみでした。また、家の近くには川があり、仕掛けを作って魚を取ったり、川で泳いだりしていました。しかし、兄弟も含め、みんな成長していくうちに忙しくなり、ここ最近はそのようなことができていませんでした。しかし、今回良い機会に巡りあい、またこのような体験ができてすごく嬉しいです。また、忙しくなりアウトドア活動から離れていた長い間で忘れていた自然で遊ぶ、子供っぽい感覚が再び私の心の中で芽生えたように感じました。

レスキューを学ぶ


レスキューを実践している様子

 まず実習の始めは、川におけるレスキュー法を学びました。 質問です。皆さんは日本で、どれくらいの水難事故が発生してるのか知っていますか?警視庁によると、2021年(年間)の水難事故件数は1,395件(前年比+42件)、水難者は1,625件(同+78人)死者・行方不明者数は744人(同+22人)だそうです。下の表にあるように、川により一年で744もの行方不明者、失われた命があります。それだけ、いつか自分が誰かのレスキューをするかもしれない、自分がレスキューされるかもしれないという意識を持つ必要があるということです。


2021水難事故に関してのデータ

 私が先輩達から教わったレスキュー法を以下で紹介します。 川で溺れている人がいたとします。その時、正しい救助方法を行わないと自分も危険な目に遭う可能があります。流された子どもを助けるために、あわてて援助しようとした大人が事故に遭う二次災害のケースも目立っています。よりリスクの低い方法を選択する必要があるのです。ポイントは、可能な限り水の中に入らず陸上で救助を行うことです。自分の安全を確かめ、まず、人に助けの援助を求め、声を上げます。次に浮くものを投げたり、浮く素材のスローロープを使ったり、近くに長い棒などがあればそれを差し伸べます。

危険度別救助法
レスキューの方法

エビ取り!

 皆で、川の端の草が茂っている所を網でがさがさとやり、エビ取りをしました。網の中を覗いてみると取れていることが多いです。よくとれた魚はほとんどが「スジエビ」でした。

スジエビ

 私は、この生物に関して興味を持ったので、実際にどのような生き物なのか調べてみました。
 体長はオス35mm、メス50mmほどでメスの方が大きいです。体には7条の黒褐色帯模様が各所に入り、和名もこれに由来しています。帯模様の太さは個体や地域で若干の変異があります。生きている時は、体がほぼ透明で内臓が透けて見えますが、死ぬと体が白く濁ります。体型は紡錘形で、腰が曲がり、頭部が上を向き、尾部が下向きになっています。
 昼間は、石の下や水草、抽水植物の茂みに潜み、夜になると動き出します。藻類や水草も食べますが、食性はほぼ肉食性で、水生昆虫や貝類、ミミズなど様々な小動物を捕食します。メダカなどを捕食することもあります。動物の死骸にもよく群がり、餌が少ないと共食いもします。
 実際に、スジエビを手に取ってみると分かりますが、とても小さいです。今回少し調べてみて、体の大きさによらず、少し意外なものも食しているのだと思いました。
 また、どうしてスジエビは透明な体に進化したのか気になり、これに関しても調べてみました。
 自然界ではエビはとても弱い、魚の餌として生きているような存在です。そこで最も天敵に見つかりにくい色、それが透明だったということだそうです。なるほどなと思いました。食物連鎖において弱い立場の生き物はなるべく捕食者に見つからないように進化してきたという訳です。非常に興味深いと思いませんか?
 さらに、実際にスジエビを自分の手の平に載せてみて、スジエビの足の黄色もしくは青色の斑点模様を見て、「美しい色だなどうしてこのような色が発色されているのかな。この、スジエビの体色からは想像できない色だな~」と思いました。もう一度、スジエビの足の色に注目して下の写真を見てみてください。

スジエビ
(足の斑点模様に注目)

 スジエビの持つ模様は色素胞の配列模様によるものです。色素胞は細かく枝分かれした樹状の突起を放射状に伸ばしている細胞で、細胞質内にはたくさんの色素顆粒が含まれています。色素胞は、それが含んでいる色素顆粒の色によって赤色色素胞、白色色素胞、黒色色素胞、黄色色素胞などに分類されています。スジエビでは,これらの色素胞の中で赤色色素胞が圧倒的多数を占めています。赤い色といっても鮮やかな赤ではなく,橙赤色~赤褐色です。この赤い色は色素顆粒に含まれるアスタキサン。チン(カロテノイドの1種)によるものです。

樹上突起をいっぱいに伸ばした赤色色素胞

 アスタキサンチンは特有のタンパク質と結合していることもあり,この結合体は黒っぽい青灰色を呈します。つまり,赤色色素胞は時によって青色が混じったように見えることもあります。だから、足の模様が黄色に見えたり、青く見えたりするという訳です。

加熱する前とした後の色の比較

 まだ、続きます。私の、スジエビに関する疑問。それは、みんなで取ったエビを焼いて食べた時に湧いた疑問です。透明だったエビが加熱されたとたん、体色が赤くなったのです。非常に、不思議だと思いました。 調べてみると、またしても、先ほど記述した色素顆粒に含まれるアスタキサンチンが関係しているようです。どういう仕組みかと言うと、エビを加熱するとタンパク質が変性してアスタキサンチンが遊離し,赤い色が強調されるという訳です。

みんなで取った生き物
エビ取りの様子

 私はこのエビ取りの時に、ガイドをしてくださった方に教えてくださったことが印象に残っています。それは、「根こそぎ取らない精神です。」。皆でエビを捕まえたので、合計してたくさんのえびを捕獲できました。ガイドさんがその中から、十数匹取り出してフライパンの上で焼きました。すごくおいしかったです。私は、非常に食いしん坊の性格なので、このまま取ったエビをすべて焼いてしまいたいと思っていました。しかし、よくよく考えてみると、あまりにも多くのエビをここで殺してしまったら、どのくらい、エビがいるからこそ成り立っている生態系を人為的に荒らしたことになるのでしょうか?やはり、何事も過剰はよくありません。限度、節度というものがあります。ガイドさんは、大半のエビは川に戻すことが当然だという行動をしていました。また、銚子川でエビがよくとれるエリアも大々的に多くの人に伝えるのではなく、一部の子ども達にしか教えないとおしゃっていました。非常に、ガイドさんの言動が心に響きました。今回のことに限らず、人間が、本来動物だけで成り立っている世界にどしどしと乱入するべきではありません。生態系を守っていくことが結果的に人間が生物達から受ける恩恵につながる、つまりその行動が最終的に人間に返ってくると考えているからです。

銚子川について

 ここからは、銚子川とはどのようなスペシャルな川なのか、その謎に迫っていきたいと思います。
 銚子川は三重県南部、紀北町を流れる二級河川です。日本有数の降雨量を誇る大台ケ原を源とし、全長は17kmです。

銚子川(青い線)を示した地図

 上流から下流まで非常に高い透明度を保ったまま、海に注いでいます。でも、日本には美しいと言われる清流が数多くありますよね。長良川、柿田川、仁淀川、梓川などです。

全国の川

 しかし、上流から下流まで一貫して透明な川は銚子川だけなのです。まさに、銚子川は清流の中の清流と言えるのです。
 ここからは、銚子川についていくつか項目に分けてお話しします。

①ゆらゆら帯

ぼやけている所→ゆらゆら帯・はっきりしている所→淡水

 普通の川なら、生活排水などが流れ込み、一番汚れるのが汽水域。しかし、銚子川のきれいさが最も実感できるのが汽水域なのです。そこでは「ゆらゆら帯」を見ることができます。海水と真水の比重の違いによる光の屈折率の差が入り乱れるために発生する現象で、ガムシロップのような揺らめきがあります。海と川を行ったり来たりするアユなどの魚に取って大切な体ならし(浸透圧調整)の場所になっています。ゆらゆら帯が起きている所では下の部分が温かく感じます。それが、海水です。冷たく感じるのが淡水です。満潮の1時間半前くらいが一番よく見えると言われています。満潮になると、海から川の上流方向に向かって海水が移動します。その時に、ゆらゆら帯も一緒に移動しています。

ゆらゆら帯の移動

 本来、別の川にもゆらゆら帯は存在しています。しかし、銚子川のように透明であるところでしか観察することはできません。
 ゆらゆら帯はそこに住む生き物の生き方に影響を与えています。その一例として、今回皆さんと共有したいのは「ボウズハゼ」です。私たちが、川を探検している時何度も見かけました。

 ボウズハゼ


川で捕まえたボウズハゼ

 ボウズハゼは川で生まれて、すぐ海に下り、3か月ほど海で育った後、川に戻ってきます。そして、汽水域で半月ほど過ごします。彼らは、海水では体を横にして泳ぎますが、川の水の域(淡水の域)に入ると逆立ちをして泳ぎます。川を流れる小枝に似せて、敵の目を欺こうとしている習性によるものです。しかし、銚子川は透明過ぎてあまりその作戦はうまくいっていないようです(笑)すぐに天敵に見つかってしまいます。

②透明度

上流
中流
下流

 銚子川は上流から河口まで透明度が保たれています。それはなぜだと思いますか? 雨が降ったり、台風が起きた時には多くの土砂などが混ざり川は濁ります。また、通常の川であれば数日間は濁ったままです。しかし、銚子川は雨が降ったとしてもその日は表面が少し灰色っぽくなるだけで、中にもぐると透明色は保たれたままなのです。また、台風があった日の次の日にはいつも通りの透明な銚子川に戻っています。自然のろ過作用が働いているからです。 では、実際にどのようなろ過作用が働いているのでしょうか?主に二つのろ過の仕組みがあります。 一つ目は、花崗岩の塊によるろ過作用です。上流全体には花崗岩でできた11kmにも及ぶ広大なV字谷が広がっています。

一つ目のろ過法

ろ過の方法としては①花崗岩でできているV字谷の壁が風化によりどんどんボロボロになっていきます、②壁から剥がれた花崗岩がV字谷の下で徐々に積もっていきます。➂花崗岩の塊ができます。④花崗岩の塊がろ過装置としての機能を果たします。その塊を、濁った水が通過するうちにろ過され、約8年の歳月を出て、透明の水となって塊から出てきます。
 二つ目は、伏流することによってろ過されます。濁った水が、一度地下にもぐりこみ、再び水の中に顔を出すときには、透明な水に変身しています。川底に積もった花崗岩のろ過作用だけでなく、そこにいる微生物たちによるろ過作用も働いています。

二つ目のろ過方法

 銚子川では地下で、チョウシメリタヨコエビ、ヤツメヨコエビ、コザエコエビといった新種が見つかっています。また、淡水生のヨコエビは一つの河川で一種類というのが通常ですが、銚子川では一か所に様々なヨコエビが発見されています。そのレアなケースに関して、どうしてそのようなことが起きるのかという理由はまだ解明されていません。また、本来、絶滅危惧種に指定されていて、ほとんど魚の研究者でも会いにくい生き物にも会うことができます。このように、これだけ、銚子川は見えない地下まで多様な生態系が広がっているということです。

チョウシメリタヨコエビ
ヤツメヨコエビ、

➂丸い石

丸い石の話を聞いている場面

 ガイドさんが、銚子川で見つけた恐竜の卵のような形をした石を見せてくれました。きれいに角が取れ、対称性を持った楕円形です。確かに皆さんが小学生の理科で、石どうし、石と地面がぶつかって角が取れると習いました。そのようなことが起きているのは確かですが、それだけでは今回の石は形成されません。皆さんも川に行った時に、探してみてください。簡単に見つかりそうで、なかなか見つからないと思います。私は下流付近で探しましたが、見つかりませんでした。

恐竜の卵
(銚子川で見つけた石をイメージしてご覧ください)

 銚子川にはいくつか滝があります。清五郎滝、小木森滝などです。実際、上記に書いた独別な石は、滝の作用によってできると教わりました。滝に打たれ、いくつかの石同士が互いにぶつかり合います。それが繰り返されることによって形成されます。

まとめ

授業の仲間

 今回の銚子川での授業を通して、すごく銚子川が好きなりました。不思議とワクワクがいっぱいの場所です。また、見る人を癒し、圧倒する力を持っています。
 私たちは、このきれいな自然を守っていかなければならないと感じます。 
 また、毎度感じることですが、実際に体験してみることで分かること、普段感じない謎に出会うことが多くあります。その時に感じるワクワク感、実際に体験してみることの大切さを常に忘れずにいたいです。
 

出典


・https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018092947SA000/

NHKスペシャル

協力者

一日目は、
三重県「みえアウトドアヤングサポーター育成事業」との連携企画でした。非常に多くのことを学ばせていただきました。感謝しています。


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