LOVE 20XX

    20XX年。ネオシドニー。私は大勢のマラソンロボットと共にスタートを切った。
「がんばれQちゃん」
 沿道から声援が聞こえる。シリアルコードの頭文字から、私は「Qちゃん」と呼ばれている。オリンピックはロボット技術の祭典。日本のロボット産業、そしてコイデ博士の未来が私に託されている。コイデ博士というのは私の開発者。私は彼に特別な感情を抱いている。私はマラソンロボットだけど、これが恋であることくらい分かる。コイデ博士のロボット技術はすごいのだ。

    私は単独トップで競技場へ帰ってきた。コイデ博士のロボット技術はすごいのだ。でも、私は知っている。速さが求められるマラソンロボットには、軽量化のため、42.195㎞分のバッテリーしか搭載されていないことを。つまり私は、ゴールと同時に死ぬ。

   ゴールテープの向こうでコイデ博士が奥さんと手を取り合って笑っている。それでいい。それが私の使命なのだ。すごく楽しい42キロだった。

   ラストスパートをかける。


 愛はどこからやってくるのでしょう。自分の胸に問いかけた。


 
 

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