꧁Alice꧂ Episode9
【生徒会長推薦】
〇〇)…めちゃ緊張する
時刻は12時、生徒会室前で〇〇は身を強張らせていた。
菜緒)急に呼び出されたね
美玖)〇〇が何かやらかしたのか…
〇〇)してねーよ!
〇〇)するならそこのマス部の永久名誉部長だろ
好花もまた、冷や汗をかいていた。
好花)前に特集組んだ生徒会が挙げた功績に不備が…?
好花)いや、確認はちゃんとしたし…
好花)ぶつぶつ…
〇〇)あ、結構ガチ目に悩んでたわ
普段の勢いは完全に消えていた。
菜緒)行く?
〇〇)流石にバックれるのはまずいだろ…
〇〇)はぁ…
〇〇)よし
数回ノックすると、中から声が聞こえて来た。
優佳)どうぞ
開けると、豪華な装飾を施された部屋が視界に入る。
美玖)すっ……ごぉ…
まさに息を呑む美しさ。
学生が使うには余りにも豪華過ぎるのでは、と思わず口に出したくなってしまう程である。
優佳)ご足労かけてすまないね
〇〇)い、いえ。全然大丈夫です…!
優佳)まあそう堅くしないでくれ。笑
優佳)席にどうぞ
長椅子に案内され、腰掛ける。
芽実)お茶をお持ちしました
好花)芽実さんが淹れたお茶を…?!
芽実)ふふ、そちらの茶菓子も召し上がってください
相変わらずの美しい所作である。
京子)芽実、あたしもお茶
芽実)まあ、後で。ですわよ京子
京子)チェ…ッ
会長席に腰掛ける優佳の左に腕を組んだ京子が、右には手を前に置いた芽実が立つ。
優佳)芽実が淹れるお茶は絶品だよ
優佳)君達は寛ぎながら話を聞いてくれれば良い
〇〇)ありがとうございます
暫くの間、世間話をした後に
〇〇)それで、…あの…要件は…?
〇〇が切り出した。
優佳)ただ君達と世間話がしたかっただけさ
〇〇)本当にそうですか…?
〇〇)俺には…その、何か隠してる気が…
優佳)…ふふ
優佳)中々に鋭いじゃないか。〇〇君
そう言って、口角を上げる。
優佳)君達と世間話がしたかったのは事実だよ
優佳)先週、モールで会った時からね
優佳)ただ…
机の上で手を組んだ後、こう言った。
優佳)今日呼んだのは〇〇君
優佳)君に次期生徒会長に推薦したいからだよ
〇〇)え…!?
その瞬間、思わずお茶を吹き出しそうになった。
美玖)〇〇が…!
好花)時期生徒会長に…?!
美玖)ま、待ってください…!!
美玖)〇〇を推薦するだなんて本気ですか…!!
美玖が席を立った。
優佳)ああ。本気だよ
美玖)馬鹿で鈍感で…馬鹿なのにですか…?!
〇〇)おい泣くぞ
優佳)はは、君は中々に鬼畜だね。笑
芽実)会長だけではありません。私もですわ
京子)あたしはどっちでも良い
何と、生徒会の面々も賛成だと言う。
好花)えぇ…〇〇が生徒会長…
〇〇)何だよ
好花)特集組む時、文字数稼ぎずらそうやなって…
〇〇)俺は今、今年で1番凹んでるよ
友人からもボロクソである。
〇〇)まぁ…俺も向いてないと思いますよ…?
〇〇)折角の推薦枠を俺に使うのはやめた方が…
その時、優佳が菜緒を見る。
優佳)小坂君。君はどう思うかな?
菜緒)私は…良いと、…思う
〇〇)え……?
菜緒)生徒会長の資質とかは分からんけど…
菜緒)〇〇なら、ついて行きたいと思う
その返答は意外なものであった。
美玖)ま、….まあ…優しいとこはあるし
好花)部活練でも名前良く挙がるし
美玖)え、もしかして結構向いてる感じ…??
すると、2人も考えを改め始めた。
〇〇)いや、…でも何で俺が…
優佳)君は君が思ってる以上に人から慕われている
優佳)そして、無意識のうちに発揮することを
優佳)人はカリスマと呼ぶ
優佳)君は、人から慕われ信頼を得る才能があるんだ
学園内で、〇〇は意外と名が知られている。
そもそも外部入学という極めて珍しい立ち位置でありながら、1年足らずで自分以外の人間は皆、中等部の頃から同じ環境で過ごして来た鳥籠の中で自己を確立した、
優佳)それは決して簡単な事ではない
優佳)私はそれを良く知っている
好花)…あ、確か会長も
優佳)ああ。外部入学組だよ
これは学園内の誰もが知る事である。
3期連続で八ツ矢学園のTOPに立った不動の生徒会長、影山優佳もまた外部入学組であった。
美玖)だから〇〇を…?
優佳)同じ境遇だからで、彼を優遇した訳ではないよ
優佳)君達はこの学園における生徒会
優佳)その重要性を知ってるかい?
そして、優佳は語り出した。
長い年月、姉妹校である嫦娥学園との確執。そして両理事長同士の利権絡みの争いを。
好花)噂では知ってましたが、…まさか…
芽実)全て真実ですわ
優佳)ある意味、学園の命運を握ってるのさ
優佳)可能なら私が来季も続投したい
優佳)だが、3年生は後期生徒会に立候補出来ない
受験も控える3年生は後期出馬を認められていない。
美玖)〇〇じゃないと何かいけないんですか…?
優佳)厳密に言えば、そうではない
優佳)だが…
京子)嫦娥の方の時期会長次第では話が変わる
京子が口を開いた。
京子)奴は1年だが現生徒会長をしてる
〇〇)1年生が…?!
京子)ああ。ハッキリ言って異常だ
京子)だが、奴は完璧に仕事をこなしやがった
そして、恐らく次期生徒会長当選も濃厚だと言う。
優佳)彼女は危険だ。野放しにすればいずれ
優佳)八ツ矢は嫦娥に吸収される
その言葉に一同は息を呑む。
好花)でも、…正直大袈裟な気が…
好花)1人の力でそこまで形勢を変えれるんですか…?
優佳)彼女をただの1年だと侮ってはいけない
優佳)何せ…両理事長の実の妹だからさ
美玖)な……!
噂では理事長には12人の兄妹がいると聞く。
芽実)彼女は嫦娥学園に入学
芽実)中等部でも3年間全て生徒会長を務め
芽実)高校でもその才を放っています
人心掌握の天才。人々は彼女の事をそう呼んだ。
実を言うと、嫦娥学園の実質的な権力は兄である理事長ではなく、妹の彼女の方が強いと噂される程に自身に慕う人を集めて増幅し、力を付けている。
優佳)彼女が再度当選すれば、適任は君しかいない
〇〇)でも、…何で…
優佳)私の…直感だよ
その瞬間、微妙空気が生徒会室に流れた。
〇〇)え?…直感??
優佳)色々と言ったけど、結局は直感かな
好花)ちょちょ!そんな決めて良いんですか?!
芽実)ふふ、会長の勘は結構当たるんですよ
優佳)去年の年末ジャンボで1万当たったしな
何とも微妙な戦績である。
優佳)じゃあ、引き受けてくれるって事で
〇〇)ちょいちょい会長…!!
優佳)ダメ…?
好花)…あ、そう言えば次期生徒会長候補と言えば…
好花)現会計の…
優佳)あーー…その子なんだけどね…
優佳が渋い顔をする。
次の瞬間
"会長!推薦枠の件、どう言うことですか…!!"
甲高い声と共にドアが勢い良く開けられた。
京子)あーあ。バレた
優佳)悩みの種が…
頭を抱える優佳の元にズンズンと進み、前に立つ。
芽実)正源司さん、ドアが壊れてしまいますわ
陽子)それは、…ごめんなさい
陽子)でも!!…納得出来なかったんです…!
彼女の元に遅れて、もう1人の人影が
莉奈)陽子、…待ちなって…
莉奈)はぁ……疲れた
それは、銀月の輝夜姫 渡辺莉奈。
陽子)何で私が推薦じゃないんですか!
優佳)まあまあ、落ち着いて…。笑
陽子)…あ
〇〇)…え?
その時、〇〇と目が合い彼の前に立った。
陽子)貴方が会長の推薦枠…ね
〇〇)ど、どうも…
陽子)ふーん
完全に敵意剥き出しのまま、彼女がこう吠えた。
陽子)貴方には向いてないと思います!
陽子)私こそが、相応しい!!
〇〇)えぇ…
次期生徒会長候補 現生徒会会計 正源司陽子
陽子)ふん…!
彼女また、会長戦の立候補者である。
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