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Grim Reaper Vol.3

【死の追跡者】

〇〇)じゃ、また明日ね

鞄を肩に掛け、鈴花にそう言った後に教室を出る。

好花『学校ってすーっごく退屈』
好花『まるで、死神大王様の長い説教みたいに』

宙に浮いた好花は心底退屈そうにしていた。

〇〇)人間に同じですよ
〇〇)学校は退屈で面白みが全く無い…

〇〇)ただの繰り返すだけの平常に過ぎません

好花には一瞥もせず、淡々と返す。

好花『あぁー暇』
好花『これが後、何年も続くとか退屈で死んでまう』

〇〇)死神も死ぬんですね

好花『比喩じゃ』
好花『そもそも、お前が指輪を着けなければ…』

また小言が始まったのかとうんざりしていると

"ドン…っ"

女の子とすれ違いざまに肩をぶつけてしまった。

〇〇)あ、すいませ……あれ
〇〇)行っちゃった

咄嗟に謝ろうと振り返った〇〇だが、その少女は既に離れて行ってしまい、声が届かない場所に居た。

好花『感じの悪い』
好花『人間はここまで他人に無関心とは』

〇〇)…感じが悪い…と、いうか

気付いて無いように感じた。



〇〇)帰りに夕飯買わないとな…

金欠で買えるものも限られているが。

好花『チョコを買え』

〇〇)高いんですよアレ…
〇〇)死神の舌に合うなんて思っていませんでしたが…

好花はカカオ100%のダークチョコが好物である。

好花『アレは人の魂の味と似てる』
好花『苦くて溶けるあの感じが…ああ、恋しい』

〇〇)安物で良ければ

そして、事件が起きる。

それは近道の為に路地裏の角を曲がった時だった。

〇〇)…え、…あ…??

頭から夥しい数の血を流した男が横たわっていた。

〇〇)う、…うわあぁぁぁぁ…ッッ!!!
〇〇)し、しししし…死んでる…!

腰を抜かし、後ずさるする。

好花『頭を撃たれてる』
好花『即死。今頃三途の川を渡ってる最中かな』

〇〇)な、何を冷静に…!!

腕を組みながら男をまじまじと観察する。

そして

好花『まだ主犯隠れてるかもしれん』
好花『死神の指輪の効力を考慮すると…長居は危けn…』

〇〇の方に振り返ったその瞬間、目を見開く。

〇〇)え…??

好花『早速かい…!!』

〇〇)うぉああああ…!!
〇〇)て、…後ろぉぉ…?!

鎌の側面で彼の後頭部に迫る弾丸を弾いた。

好花『立て腰抜け!』
好花『走らな全身穴だらけにされんぞ!!』

〇〇)うわあああ…!!
〇〇)なに!何が起きてるんですかああ…!!!

何とか立ち上がり、よろけながら駆け出す。

"ダァーーーンッッ"

追撃される弾を背後で好花が弾き続ける。

〇〇)もしかして撃たれてますうう…?!!

好花『走れ!』
好花『考えるのは隠れてから!!』

〇〇)もう何でぇぇぇ…!!!

自らの運命を呪う。

可能なら今直ぐ指を切り落とし、指輪なんかとはおさらばして元の生活に戻りたい。

だが、そんな事を考えても後の祭りである。

〇〇)ここなら安全…ッッ!

飛び込みで遮蔽物に隠れた。

好花『ここもそこまでもたん』
好花『早く次の場所に移動するからな…!』

好花『…ん?』

刹那、僅かにビルの間に射線がある事に気が付く。

"ダァーーーンッッ"

次の瞬間、2発の弾丸が放たれる。

好花『屈め!』

〇〇)もう何が何だかぁぁぁ…!!
〇〇)ひぃぃぃ…!

巨大化した死神の鎌を大きく振り斬る。

命を断裂する冷たさを誇る刃先から放たれたその一振りは、荒廃したビルの一棟を両断し崩れ落ちさせる。

"ガキーンッッ"

遮蔽物となったビルが凶弾を防ぎ切る。

〇〇)ゲホッッ…ゴホ…ッッ
〇〇)砂煙が…

壮大なスケールに再び〇〇の腰が抜けた。

好花『離れるから立て』
好花『暫くは砂煙が煙幕になって見えん』

〇〇)スケールが大き過ぎます…
〇〇)ビルが…

好花『死神はあらゆる死を創り出せる』

故に、ビルの倒壊などは簡単なのである。



現場から少し離れた場所で、〇〇は隠れていた。

〇〇)今頃警察や諸々が集まってるでしょうね…
〇〇)本当に災難だ…

好花『災難はこっちの台詞じゃ』
好花『何でもっと機敏に動かない…!?』

〇〇)こ、腰が抜けて…

その時は、気が抜けていた。

完全に奴を撒ききれていたと安心していたのだ。

それが

〇〇)あ…

奴の不意の接近を許してしまった。

確実に射線の通る場所、その瞬間に初めて自身の命を脅かす者の顔を見た。

好花『しま───』

僅かに反応が遅れ、既に引き金に指が掛かっていた。

〇〇)っ──

放たれた凶弾が手を挙げる〇〇を撃ち抜く。

…と、思われた次の瞬間

パァン─

弾けたのは眼前にいる男の側頭部だった。

好花『は…?』

〇〇)え、………あれ…生きてる

1発の銃声の後、〇〇達は呆気に取られていた。

その2人の前に

「任務完了。ターゲットの死亡を確認」

ワルサーPDPを片手に、フードを被った華奢な身体付きの少女が姿を現した。

〇〇)…君は…
〇〇)…君は確か、あの時ぶつかった…

その少女は、同じ制服を着ていて…名前は確か

菜緒)君、ずっと死相が見えてたのに
菜緒)何で生きてるの?

隣の組の、小坂菜緒。

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