日記メモ

現状では、公的機関に所蔵されている少数の事例を除けば、市井の人々が綴った日記の多くは管理責任を個人が担っており、将来の利用を見据えた安定的な保存環境にない。

田中祐介=編『日記文化から近代日本を問う』笠間書院 p14

日記は歴史を語る貴重な史料であるが、書かれた内容を鵜呑みにすることはできない。活字化された日記は、編集の過程で取捨選択と改変が伴うことも少なくない。

田中祐介=編『日記文化から近代日本を問う』笠間書院 p14

他者による編集が介在しない場合でも、日記には必然的に虚構が伴う。日記とは往々にして、他者=読者の眼差しを意識した自己演出の空間である。書き手は後世の読者を意識的・無意識的に念頭に置きながら記述する内容を取捨選択する。

田中祐介=編『日記文化から近代日本を問う』笠間書院 p16

どのように秘匿された日記でも、日記を読み返す将来の自分自身を思い浮かべる限り、それは紛れもない読者であり、現在の自己とは異なる他者である。時には他者の眼差しを忘れるほど感情的に綴っても、翌日には冷静にその文面に向き合い、時に抹消することもある。より公的な性格の強い書記媒体と同様に、日記に綴られる内容は取捨選択され、虚実が錯綜する。この意味において、読者を想定しない日記はない。

田中祐介=編『日記文化から近代日本を問う』笠間書院 p16

まあ、最初の方しか読めてないのだが…
これらの文章の「日記」を「詩」に置き換え、媒体にインターネットを想定した場合にも、ほぼ通用するのではないかと思って引用した。

ぼんやりとだが、日記やインターネット上の詩、 人生雑誌や個人誌やZINE、同人誌といったものの繋がりや境界というか、個人が表現する、あるいは個人が表現するともなく行っている表現ともいえないようなもののなかにあるもの、その始原、つまり自分自身の来歴をもう少し総体的に位置付けて、あるいは意味づけてみたいという欲。

そこにあかるみとかくらがりがあり、なんだかんだ言って出版、発行を目的とするものはあかるみを目的としている。それは自分を壊さない。うすくらがりのようなもの。あかるみに晒されると壊れてしまうもののために、名前を差し出す。

日記の反復性、co-jin

フォルム、型としての日記、訓練やモノに近い日記、内面へと離陸しない代わり、行為そのものの反復することへの重要性は本人に残る?

名前と日記が紐付けされる空間で書かれる日記、あるいは名前と日記の内容が紐づいても構わない日記。SNSと日記の違い。

宛名。しかし宛名のない書簡を出したがる者は、基本的にはその疎外状況をあらわにしてしまうだろう。自分のしるすものの届くべき場所が、漠然とした希望領域にあることをそれは意味するだろうが、かえってこのことは、みずからが希望領域にいない点の逆証ともなるためだ。

阿部嘉昭『平成ボーダー文化論』水声社 p359

私は「インターネットには人前で言えることしか書いてはいけない」という言葉があまり好きではない。そんなこと誰が決めたの?と思ってしまう。ただし、自分の身と内容の緊張関係が名前だけで担保されている状況がいいことだとも思わない。できれば最終的にはすべて繋げてしまいたい(砂場のトンネルを開通させるように)という欲。それが定年後になるか、社会生活からの離脱・破綻によってなのか。
アウトロー、アウトサイダー、あるいはアート、アカデミックなところに行かなきゃなかなか名前と内容を結びつけることが叶わない。

鈴木志郎康さんは、書くということは基本的に社会とバトることだと書いてたような気がする。『極私的現代詩入門』を読んでると、なんか働きながら書くことについての理路を、辿るように読むことができる。

「バトる」をまろやかに言えば「折り合い」というやつで、働きながら書く場合はやっぱり時間と空間の確保が重要ですし(とはいえ現代ではスマホに書けるし、同期させれるし、昔よりはすごい楽になったと思うのだけど、逆にそのせいで、とっ散らかるかもしれない)、ある程度はひとりで棚卸しする時間が要る。
時間と空間を何に振り向けるか。自分自身の行為、外界の出来事、内面の吐露の記録と編集にそれらを費やすということ。

書くことの管理を個人が行い、取捨選択や公開あるいは抹消の選別を行っているが、炎上あるいは出版した場合、個人と発言が紐づけられ抹消できなくなる。

ポンペイ展。抜けたあとのグッズ売り場。炭化したパンのもふもふしたグッズ。しりあがり寿やポムポムプリンとのコラボ。ポンペイの人からしたら「なんなん?」っていうか、まったく想定してなかった展開だろう。
なぜポムポムプリンとかいうのとコラボさせられてるのか。
モザイク画。賃貸物件の広告。
私の日記はのこらないだろうなぁと思う。でも書くのはやめないんだよなぁ。

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