わいの平成詩史22
poeniqueのフォーマルハウツで
たみさんという人の詩を見た。「月夜のウルフ」という詩で、
「わおーん!」という遠吠えが書いてあった記憶がある。
そこに松岡宮さんが「イメージ喚起力のあるいい詩ですね」みたいな感想を寄せていて、「イメージ喚起力! なんていい言葉なんだ」と思った記憶がある。
読むことで、ひとのなかからイメージを呼び起こすチカラ。ほしい。ほしすぎる。
でも、そのためには、自分自身から距離をとって、デッサンのときえんぴつを握って腕を伸ばし片目をつむるようなことが必要だ。
「人からみてもそうなるように」しなければならない。
でももしそれが、最初から意識も作為もない状態で、自分から出てきたようになっていればフゥ〜⤴︎(フォ〜↑)である。最高である。
いや、そういうとき、人に最低も最高もないのかもしれない。
たみさんの詩をそうやって(どうやって?)読むと、イメージ喚起力にとても優れてはいるが、むしろ想像力の端っこというか、裏というか、そうくるか!?と感心する飛び方をするのだった。この人はたぶんAB型の左利きというか、なんか象徴界が見れるというか、なんか言葉の裏コードが読めて逆アセンブリができて機械語が理解できる、みたいな感じの印象だった。
このイメージ喚起力の端っこみたいなことをうまく言い表してる例として、わたしが好きなアニメーターうつのみやさとるさん(今は"うつのみや理"のほうが正しいのかもしれない)のインタビューを引用する。
こういう、自分ではそうくると思ってなかったけど確かにそうですね、と思わせるパワー、そういうんも、詩にはある気がする。
たみさんが「おぼこ板」に書いてた実験詩みたいなものである。イマイチと書いてるので評価はイマイチなんだろうけれども、先に引用した「植毛→CG→緯度と経度」の飛び方である。
これに毎回痺れるというのか、できないなーと思っちゃうのだった。
また、WEB同人詩誌である(テキスト版も発送してるらしい?)「雲雀料理」にある作品にも以下のような行がある。
またラスト三行、
もう仕事行かなきゃなので手短にはしょって書いていくと、ここにはさっき言ったイメージ喚起の力とギリギリ繋がる連想(そうきますか、でもそうですよね、のぎりぎり)の飛躍、そしてさらに「対象物」ここではカメラ、視点といってもいいかもしれない)の切り替わり、つまりこの場合は、「私」か「幸運」の留まっている場所がめまぐるしく置き換わるのを体験する。
そしてその視点とともに、何かが少しずつあるいは一気に遠のいていってしまうことも体験する。
「私」という人称が、各行の指示するものによってめまぐるしく視点を変えさせられる。あるときは対象と対象の留まる場所、寄り、引き、のようなものに次々と成り変わっていくのだ。
*
poeniqueの過疎コーナー(とわたしは勝手に思ってた)に詩人専用シナプスというコラムコーナーがあった。そこで精神科医なのかよくわからないけど宮前のんさんという人が書いていて、そこでたみさんの詩「マジック・ユーザー」を分析している。
ちなみにこの「マジック・ユーザー」、Arkの現代詩大賞で佳作、poeniqueの詩会で2位という、ある意味ちょっと不遇な感じだったようである。
ここで宮前さんの見立てでは、この作品の話者は「躁病」(今でいうところの双極性障害)であるという。
そして、個人的には宮前さんが詩の話者の症状としてピックアップしてる「観念奔逸」の飛び方のぎりぎりのところで現実から切り離されないけど死角からやってくるステップにとても痺れるのだと思う。
で、このコラムには詩を分析されたあとに作者がコメントする箇所があって、そこにたみさん本人の言が書かれている。本人によれば、
この「すっとばし」た書き方が、アニメの原画のようであり、また、その動きは前の動きを引き継ぐけれども、そこに意外性を持たせつつ説得力も持たせることができる、みたいなことをわたしは言いたかったっぽい。
で、戒めとしては、逆にすべて腹の中にあるのに、それを小出しにして、虫食いのように隠喩や仄めかしを入れるタイプの詩というのはこのようなホップステップにはなり得ないという話である。
たぶんそれはスタートからして違っていて、アニメの作画でいえば、単純に原画を増やせば動きがなめらかになるとかいうわけではないし、逆に動画からあいだを間引いたからといってそれが素晴らしいアニメになるのかといったらそういうわけでもなく、やはり元の動きや流れに対する(自然に対する)関心のようなものがなければ、詩というのはなんか説得力を持たないし、逆にいえばそのような心づもりで書いてきた人間にとってそのような詩の目論みはバレやすい。だから、そのような心づもりでいる人への寄り添いはできるかもしれないが、作品としてちゃんとみて評価されることは残念ながらないのではないか。
とりあえずここまで。しごとー
(つづく)
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