めも(食卓塩変遷)
今回は鈴木志郎康の詩作品「激しい恋愛」における食卓塩の変遷をみていきたい。
「激しい恋愛」の初出はバッテン10(発行日1963年12月15日)で、ここで鈴木は1ページで収まる詩を3作品書いている。
p6 深い感情
p7 ゆきずりの恋
p8 激しい恋愛
「激しい恋愛」は、その後、第二詩集である『罐製同棲又は陥穽への逃走』、現代詩文庫22『鈴木志郎康詩集』、『攻勢の姿勢1958-1971』に掲載されている。
この時期の前後、鈴木の詩は言葉を超えて記号であったり、文字を罫線で囲んだり造語が増えており、「激しい恋愛」においては食卓塩の瓶のイラストが詩行の中に挿入されている。
このような表現になった経緯については、第二詩集の「覚え書」に書かれているが、とにかく社食で食卓塩を見たら、なんかものすごく嫉妬を覚えてしまったみたいなことが書かれていた気がする。
とかなんとか書いているうちに見つかった。この箇所(第二詩集のp116〜p117)ですね。
なるほどわからん案件ですね。難しい。昔はよくこんなの読んで「なるほど!」とか思ってたな…。今の脳で考えると、子供が紙を留めたくて「ホッチキスになりたい」とか言うのと似たニュアンスをなんとなく感じる。
というよりは、自分の精神が不安定なときに、世の中に流通する商品と他者がよろしくやってると、そこだけがものすごくクローズアップされて、自分の存在価値が毀損されたように感じる、みたいなことかもしれない。
少し飛ばします。
とまあ、こういうことのようです。雁屋哲・花咲アキラの漫画作品『美味しんぼ』ラーメン大戦争において、海原雄山の美食倶楽部には化学調味料なんていう下卑たものはないので、瓶の中に「化学調味料」と書いた紙を封入したのとはまるきり逆の論理である。
というか、そういう話じゃなくて、今回はこの線描の食卓塩をすべての掲載された書籍から並べてみよう!という企画なのだ。
じゃあまず初出、バッテン10号から。まずはこのページのレイアウト自体からみてほしい。
元々はこういうレイアウトだったのか、と感動する。綺麗ですね。じゃあ食卓塩をズームしよう。
なんかガチャガチャしてますね。いまだによくわかってないんですけど、こういうのって、活字を組むときどうやってるんですかね。次に『罐製同棲又は陥穽への逃走』の食卓塩をみてみよう。ちなみにこちらは見開き2ページに詩行があり、1ページ目の最後に食卓塩が置かれている。影が強いのは、この本がペーパーブック装であまり開くと割れそうだから、私には怖くてガッといけないため。
なんかちょっとシャキッとした気がしますね。というか食卓塩ちょっとデカない?次は現代詩文庫版と攻勢の姿勢版の食卓塩を続けて。
なんか、見る限りでは文庫版に印刷の粗さはあれど、第二詩集の食卓塩が踏襲されてるっぽいですね。
あとは、気になる点として、100g入りの食卓塩って、あるのか?という点である。当時の社食にはあったのかもしれないが、ちょっと量が多すぎないかと思わなくもない。
と思ったら、普通に100gだった。
食卓塩の歴史のPDFを読むと、1963年当時(バッテン10号の頃)の食卓塩はこのようなデザインだったらしい。
おお。こうしてみると、確かに似ている。ただ、私たちのイメージだと↓こっちのシュッとしたほうがお馴染みである。
とりあえず以上です。詩の内容についてはまた後日(たぶん)。
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