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ノクチルカ

カーテンと窓を閉めずに、夕方から寝てた。
起きたら、夜の街灯や建物の光だけが白くぼやけて真っ暗で、風で白いカーテンがふわふわなびいてる。
ベットの上で、ぼーっと天井を見上げると、なんだか落ち着いた。
雨の夜に寝ようとする時に似てる。
お酒を飲んで、頭は痛いけど、気分は何だか落ち着く。

最近、毎日が長い。
1日1日、しっかり噛み締めて生きていると言えば聞こえはいいのかもしれないけど、本当に充実してる時は、何も覚えてないくらい毎日が早くすぎることがある。
ということは、今は充実していない、ということになる。
それは勿論、4月から生活がガラリ、と変わったという事があるのかもしれない。
毎日毎日、分からないことに必死で食らいついて、ないものを貰って、それをこなして、時間を過ごす。
それを5日間やって、その疲れを取るための2日間の休み。
そうやってこの1ヶ月を過ごしてきた。
そして、それが段々慣れて、こうやって毎日、毎月、毎年が、何も覚えてないくらい早く過ぎていくのだろうと思う。

この漠然とした人生の生活リズムは、中学と高校の頃によく似ている。毎日毎日学校に来て帰る日々。2日休みがあってまた学校に行き、こうして年度が上がって気づけば卒業をしていた。
もう定期テストだ、もう冬休みだ、もうクラス分けだと、時間が早く来ることに、友達と時間が経つのが早くない?と話していた。

きっとまたそういう日々が続く。
ただ中高と違うのは、その生活が40年間、終わりも変わりがなく、終わらせるのも変わらせるのも、自分の意志であるということだけ。

そんな生活に、私は人生の終わりを、感じてしまうつまらなさがある。

だから変えようと、人は転職をしたり、仕事にのめり込んだり、昇進したり、結婚をしたりするのかもしれないと思う。
そのつまらなさを何かに変えている。

こんな事をどうしようかな、何を変えていこうと、思ううちにどんどん歳をとるんだ。私も。

でも新しい世界が苦手で、自分の中に閉じこもって、出て行き方も忘れて、差し伸べられた手を上手く握れない私は、一体、何が変わるというのだろう。

私の世界はつまらない、と暗にいわれたことがある。
わかってる。わかってはいる。
ひとりになって、自分だけしか残らないことは、わかってる。
その自分だけの世界が、如何に空虚なのかもわかってる。
それでも、変われないの。
このぼぅっとした時間は、落ち着くの。
暗い部屋で、道路から静かに車の通る音が聞こえて、街灯が白いだけの世界が、ほっとするの。
おかしいでしょ。
でもみんなだっておかしい。

私だけは、いつまでも変わっていけない。
変わったと思ったら疲れて、こうしてひとりで閉じこもって自分を癒すことしか出来ることはない。
いつまで経っても変わらない私以外、みんなつまらないをどんどん変えて、どこが遠くに行ってしまう気がする。
結婚して、出世して、色々な発見を見つけ、毎日を早く過ごして、色鮮やかに遠くに行ってしまうんだ。

私はまだ、変わり方さえわからずにいるのに。

頭がズキズキする。

部屋は真っ暗なまま、風はどんどん止んできている。




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