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人魚の声

色々なことをおもうのに、
気持ちの整理とか言葉の整理に
時間がかかってしまった。
今ある気持ちを言葉にしたいのに、
そう思うと、割と力を使うから疲れる。

だから、ごちゃごちゃ。
でも、それでもいいから在ったことの証拠として、残したい。


社会人2年目になる、2ヶ月前。
後輩ができるのかぁ〜
新社会人じゃなくなるなぁ〜なんて、
思ってた矢先の冬の終わり。

仲の良かった女の子の同期が亡くなった。
死因は、彼女の持ってた障害の悪化で、
決め手となった原因はお医者さんでも
わからないらしかった。
体調が悪く1ヵ月近くお休みしてたから、
亡くなる前に会ったのはその日が最後だった。

亡くなった知らせを聞いたその瞬間も。
葬儀までの一週間も。
その間の色んな人の投げかけてくれた言葉を聞いた時も。
葬儀場に向かう車の中も。
初めて彼女の両親を見た時も。
冷たくなった彼女の顔を触った時も。
棺の蓋が閉まる瞬間も。
彼女が火の中に入っていく時も。

普通に生きていくことだけで精一杯だった。
立って、息をして、言葉を出すだけで、精一杯だった。
泣かないように、何事も無い様な顔で、ただ生きていた。
と思う。今では。

正直、その時の記憶が本当に無い。
というより、何を思っていたのか分からない。
泣いてはいるのに、何に泣いてるのかもわからなかった。

葬儀も、告別式も、その後の勤務も、
そのあとの日も、何日も何日も。
普通に過ごして、

気づいた時には、お腹が凄く痛くて、縮こまっていた。

病院に行って、何かありましたか?って聞かれた。
沢山聞かれたけど、何も分からなかった。
何も言えなかった。なんて言っていいかもわからなかった。

有難いことに、色んな人に気を使ってもらって、2日間仕事を休んで、復帰して。
忙しい繁忙期を超えて、
GWで頭空っぽになって、
そして、亡くなってから数ヶ月が経った。

ふと泣きそうになる日が増えた。
前よりもずっと増えた。
今まで聞いてて何も思わなかった彼女の好きなサカナクションの曲が、随分と辛いものに変わった。
大好きだったディズニーの新しいグッズが増える度に、苦しくなった。
仕事で彼女の席の近くに行ったら、詰められてなくなっている彼女の席を見るのが嫌で、なるべく目線を送らないようになった。

私は、悲しいんだ、
とやっとわかった。

皆もう、そんな気持ちなんて、薄れてるはずなのに、私だけかなり遅れてやってきたみたいだった。

新しいものを見る度、教えてあげたいと思う。
好きそうなものを見る度、見て欲しいと思う。
嫌なことがある度、聞いて欲しいと思う。
でもできない。伝えようがない。
あの、精一杯に生き抜いてた時の情景と、その時の感情がやっと繋がったように思う。

何をやってる時でも、一気に思い出すようになった。

彼女の5月の誕生日に、ディズニーランドホテルに泊まろうねって約束した。
カラオケのモニターとか映画館で、見たことない映画たくさん見ようとも話した。
まだ入社して1年も経っていなかったいのに、会社帰りの近くのご飯屋さんはほとんど彼女と行ったことがあった。
帰り道に、お笑い芸人の動画の見せ合いっこもした。
愚痴も、他の人には言えないことも全部話した。
とにかく、まだまだ、沢山したいことがあった。
彼女としたいことが沢山あった。

今を生きる度に、思ってしまう。
出来ない悲しみが辛い。今を一緒に生きれないのは辛い。
こんなに喜びそうなものがあるのに、喜んで行きたーいっていう声聞いて、行こう!って言いたいだけなのに。
見て!って言って、一緒にどこが面白いとか言い合いたいだけなのに。

でも、1番辛いのは彼女なんだと、私がそう思う度に思う。
もっともっと、思う。

いない彼女の気持ちは、憶測でしか話せないけど。
多分、悔しいと思う。苦しいと思う。
色んな人が自分のことで悲しんでる分、悲しいと思う。
色んなことに気づいて、気遣える人だったから。
でも、自分のやりたいこともやりたい!ってハッキリ言える人だったから。
私がこれだけ喜びそうなものが思い浮かぶんだから、多分私の知らない好きな物とか、今見たら欲しいんじゃないかな。
憶測だけど、もしそんなことを思う彼女を見たら、きっと、もっと悔しかった。


こんなに毎日、いなくなったことを思い浮べる。
それは、若いのに、こんな筈じゃなかっただろうに、っていう何処か他人事の目線と、もっと一緒に居たかったという自分の我儘と、折り重なっていく。
涙腺はどんどん弱くなっていくのに、人の前では普通に戻る。
皆の前では、怖いくらいに平然と話す。
亡くなった、しんどいって言葉も言えるのに、その時に感情はない。

このまま、ずっと誰にも感情なんて出せないような、喉の1番先だけが詰まったような、そんな気持ちを抱えて生きていくのかもしれない。

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