初心者PTにおすすめ!肩関節の解剖から評価・治療までを徹底解説。
どうも!理学療法士1年目のいとうちゃんです。
今回は肩関節の評価から治療までを解説していきたいと思います。
とはいえ、まだまだ未熟な私ですので、知識不足な部分や、間違っていることを書いてしまうこともあるかもしれません。
そんな時はコメント欄にコメントしていただけたら幸いです。
これを書く目的は2つあります。
1つ目は、職場だけでなくSNSでも学んだことをアウトプットしていくことで、自分の知識を定着させてリハビリの質を向上させるため。
2つ目は、自分と同じ悩みを持った初心者PTがきっといるはずだと思い、切磋琢磨して能力向上していきたいと思ったからです。
この記事は完全無料公開ですので、最後まで読んでいただけたら幸いです。では早速本題に入っていきましょう。
1、肩関節複合体について
肩関節は主に以下の4つの関節から成り立っています。
・胸鎖関節
・肩鎖関節
・肩甲上腕関節
・肩甲胸郭関節
これらの関節が肩関節運動の際に共同して働くことで、正常な肩関節の動きを出してくれるんです。
そのため、肩関節の動きに対して肩甲骨や鎖骨がどのように動くのかをしっかりと押さえておく必要がありますよね。
2、肩甲骨の運動
肩甲骨の運動には主に以下の3つに分けられます。
・挙上と下制
・前方牽引(外転)と後方後退(内転)
・下方回旋と上方回旋
これらの運動が、肩関節の運動時にしっかりと働くことで痛みなく正常に動かすことができます。
逆に肩甲骨の動きが、筋肉やアライメントの影響で動かなくなると、肩関節の運動時に痛みが出現し、可動域制限の原因となってしまうということです。
3、肩甲骨と胸郭との間で生ずる運動は胸鎖関節と肩鎖関節の共同の結果
では、肩甲胸郭関節運動時に、胸鎖関節と肩鎖関節はどのように共同運動をしているのでしょうか。
3−1,肩甲胸郭関節挙上
肩甲胸郭関節挙上時には、胸鎖関節上での挙上と、肩鎖関節での下方回旋が起こります。
3−2,肩甲胸郭関節屈曲
肩甲胸郭関節屈曲では、胸鎖関節での前方牽引と、肩鎖関節での水平面調整が起こります。
3−3,肩甲胸郭関節上方回旋
肩甲胸郭関節上方回旋では、胸鎖関節での挙上と、肩鎖関節での上方回旋が起こります。
4、肩甲骨周囲筋群について
ここでは主に、肩甲骨周囲筋群の働きについて解説していきます。
働きを押さえることは、可動域制限や疼痛の原因を評価する際に必須になってくるのでしっかりと押さえていきましょう。
4−1,小胸筋
小胸筋は大胸筋の深部に位置しており、非常に触れるのが難しい筋肉です。
小胸筋の伸長性が低下すると肩甲骨の前傾、下方回旋(外転)運動が増大します。小胸筋を定量的に評価することは困難なため、圧痛や大胸筋と分離した小胸筋だけのストレッチやリラクゼーションを施行し、前後での可動性の変化から評価していきます。
ストレッチ方法などは、7−3で解説していきます。
・起始:第2−5肋骨
・停止:烏口突起
・支配神経:内側、外側胸筋神経
・作用:肩甲骨前傾、下方回旋(菱形筋、肩甲挙筋も下方回旋する)
4−2,広背筋
広背筋は非常に大きい筋肉で、肩関節、肩甲骨、体幹の運動に関与します。高齢者でも多く見られる胸椎の後弯では体幹の屈曲筋として働きます。
広背筋の伸長性が低下すると肩甲骨の下方回旋、内転運動が増大します。
広背筋は6−2で解説する評価で伸長性を確かめて、7−1で解説する呼吸を用いたリラクゼーションで効果的にリラクゼーションを行うことができます。
・起始:T 7−12椎骨、L1−5椎骨及び仙骨の棘突起、胸腰筋膜、肩骨下部、腸骨稜の後部1/3及び第9−12肋骨
・停止:上腕骨結節間溝
・支配神経:肩甲下神経
・作用:肩関節伸展・内転・内旋、肩甲骨下方回旋・下制・内転、体幹側屈(胸椎港湾が強い方は体幹屈曲筋として働く)
4−3,前鋸筋
前鋸筋は、上部、中部、下部の3筋束から成り立っており、下部線維は大菱形筋と共に肩甲骨の内側縁に付着しており、胸郭に肩甲骨下角を引きつける機能を有しています。
そのため、肩関節運動時や普段から下角が浮き上がっている症例では、この2つの筋に筋力低下か出力の低下が起こっていると考えられます。
前鋸筋の評価は6−3で解説していきます。
・起始:第1−9肋骨
・停止:肩甲骨内側面
・支配神経:長胸神経
・作用:肩甲骨前傾(上部:肩甲骨前傾、下部:肩甲骨後傾)
4−4,大菱形筋
大菱形筋は前述した通り、前鋸筋と共に肩甲骨内側縁に付着しており、胸郭に下角を引きつける作用があります。
大菱形筋の評価は6−4で解説していきます。
・起始:第2−5棘突起
・停止:棘三角から下角にかけての肩甲骨内側縁
・支配神経:肩甲背神経
・作用:肩甲骨内転・下方回旋(小胸筋、肩甲挙筋も下方回旋に働く)
4−5,僧帽筋
僧帽筋中部・下部線維は肩甲骨の内転、上方回旋に作用するため、肩甲骨が外転している症例では、僧帽筋中部・下部線維の筋力低下・僧帽筋上部、肩甲挙筋の過緊張が疑われる。
また、肩甲骨が下方回旋することで肩甲上神経が伸長され、棘上筋が短縮位となるため、棘上筋の筋出力が低下し、肩関節運動に大きく関与する。
・起始:上部筋束:外後頭外隆起、項靭帯
中部筋束:第1−6胸椎棘突起
下部筋束:第7−12胸椎棘突起
・停止:上部筋束:鎖骨外側1/3上縁
中部筋束:肩甲棘
下部筋束:肩甲棘基部の内側縁
・支配神経:頸神経、副神経
・作用:全体としては肩甲骨内転、上方回旋(前鋸筋も上方回旋に働く)
上部筋束:肩甲骨挙上
下部筋束:肩甲骨下制
5、肩甲骨動筋と固定筋の関係について
肩甲骨は、上腕骨と肩甲上腕関節で連結しているため、肩甲骨は常に下方回旋方向へ強制力が働いていることになります。
そのため、肩甲骨を安定させるためにはカウンターとして上方回旋筋群(僧帽筋、前鋸筋)が機能しバランスの取れた筋力が発揮されなくてはなりません。
肩関節運動時に上方回旋筋群が働かないと肩甲骨が肩甲胸郭関節に引き付けられないため、最大限に筋力を発揮することができないんです。
では実際に肩関節の動きで働く、肩甲骨の「固定筋」と「動筋」について解説していきます。
5-1,肩関節屈曲・外転時
動筋:三角筋、棘上筋
固定筋:僧帽筋下部線維、前鋸筋
棘上筋は肩関節の屈曲・外転時に一番最初に働く筋であり、骨頭を関節窩に引きつける作用があります。
また、棘上筋が働かずに三角筋だけで肩関節の運動をしてしまう症例は、インピンジメントの原因にもなるので、しっかりと運動学習させる必要があります。
固定筋としては肩甲骨上方回旋筋群が働き、肩甲骨の動きを抑制しながら運動を促してくれます。
ココが機能不全を起こしてしまうと、肩甲上腕リズムが乱れ、方関節可動域制限の原因となります。
5-2,肩関節伸展時
動筋:大円筋、小円筋、広背筋
固定筋:大・小菱形筋、肩甲挙筋、小胸筋
肩関節伸展時には、下方回旋筋群が固定筋として働き、上腕骨の動きをサポートしてくれます。
5-3,肩関節1st外旋時
動筋:棘下筋、小円筋
固定筋:僧帽筋中部線維、大・小菱形筋
肩関節1st外旋時には、肩甲骨内転筋が固定筋として働き、上腕骨の動きをサポートしてくれます。
ココが機能不全を起こしてしまう症例では、上腕骨頭と関節窩の間でインピンジメントを起こし、疼痛の原因となる場合があります。
6、肩関節評価方法
ココからは、肩関節の評価方法について解説していきます。
リハビリではこの評価が一番重要であるため、しっかりと肩関節の可動域制限や疼痛の原因をつかんでいきましょう。
また、治療後には必ず再評価を行い、本当に評価できていたのかを確かめていくことが重要です。
それでは解説していきます。
6−1,胸椎・胸郭の拘縮テスト
胸椎・胸郭の可動域制限は、肩甲骨周囲筋の短縮、機能不全が考えられます。
その結果として肩関節のアライメント異常が起こっていると考えられるため、肩関節の可動域制限となる部位はどこなのかを把握していくことができます。
〜方法〜
①被験者は側臥位となる
②セラピストは被験者の骨盤を押さえ、上側の肩関節を回旋させるように押す。
〜結果〜
・高齢者ではベッドから20センチ、若年者ではベッドから10センチ以内が陰性となります。
〜原因〜
・前胸部の可動域制限(大胸筋、小胸筋の滑走生低下)
・鎖骨の可動域制限(僧帽筋、三角筋、大胸筋などの短縮)
・肩甲骨の可動性低下(上方回旋筋群の過緊張)
などが挙げられます。コレらは症例によって異なるので、触診をして評価していきましょう。
6−2,広背筋伸長テスト
広背筋は肩甲骨の下方回旋に関与しているため、短縮している場合だと肩甲骨の上方回線の動きを阻害してしまう場合があります。
そのため肩関節屈曲・外転時の可動域制限を引き起こしてしまう場合があります。
そのため伸長性を確かめることで、可動域制限の原因を掴むことができるかもしれません。
〜方法〜
①座位または立位で肩関節・肘関節屈曲90度とし、手指から前腕までをくっつけます。(肩関節屈曲・外旋位)
②この肢位でセラピストは他動で肩関節屈曲運動をしていきます。
③他動運動での可動域を確かめたら、次は自動運動で肩関節屈曲運動をしてもらます。
〜結果〜
他動運動のところまで、自動運動でいかなかったら陽性。
6−3,Scapular assistant test
この評価では、筋の働く方向をセラピストが徒手的に誘導し、その肢位から可動域の変化をみるモノです。
ですから、どの筋にも使用できる評価方法なんです。今回は例として肩関節の屈曲を解説していきたいと思います。
〜方法〜
①被験者を座位または、立位とする
②肩関節屈曲運動を自動運動で行ってもらう
③次に肩甲骨の上方回旋を徒手的にアシストしていき、肩関節の可動域の変化を評価する。
〜結果〜
・可動域が変化した症例では、肩甲骨の上方回旋運動がうまく行えていなかったことが予測されるため、下方回旋筋群の短縮か上方回旋筋群の筋力低下または出力の低下が考えられます。
6−4,固定筋を固定した筋力評価
この評価は、運動時に働く固定筋をセラピストが徒手的に固定し筋力をみる評価方です。
コレも固定筋の作用だけ把握していれば、どこでも評価することが可能です。
今回は肩関節1st外旋について解説していきます。
〜方法〜
①肩関節外旋運動に対して抵抗運動を行ってもらいます。
②次に肩甲骨の内転運動をセラピストが徒手的に押さえて、抵抗運動を行ってもらいます。
〜結果〜
・この時に筋力が向上したなら、肩甲骨の内転筋群の筋力低下または出力の低下が考えられます。
6−5,座位・立位での可動域変化
コレは実にシンプルな評価で、座位で肩関節屈曲をしてもらうのと、立位で肩関節屈曲をしてもらい、変化があるかを評価します。
〜方法〜
①座位で肩関節屈曲自動運動を行う
②立位で肩関節屈曲自動運動を行う
〜結果〜
・立位で肩関節屈曲可動域の向上が見られた場合は、体幹の影響が示唆されます。
要するに、座位では体幹の伸展運動が乏しく前傾位となりやすいため、肩関節の屈曲可動域は低下しますが、立位では体幹の伸展運動が出やすいため、可動域の向上が見られたと考えられます。
7、肩関節の治療方法
ココからは、いよいよ肩の治療について解説していきたいと思います。
臨床で使えるテクニックから自宅でも簡単にできるトレーニングをご紹介していくので、初心者の方は治療方法だけでも試していただけたら、肩こりの改善に役立つかもしれませんよ?
7−1,呼吸を利用した広背筋のストレッチ
・広背筋は仙骨部から上腕骨に付着しているため、体幹を前屈させ肩関節を屈曲させることで伸長位となります。
コレを利用して、呼吸に合わせて広背筋のストレッチを行っていきます。
〜方法〜
①体幹を前屈させ側臥位となります。
②肩関節を屈曲させベット端を把持してもらいます。
③セラピストは広背筋の走行に合わせて、把持していきます。
④呼気に合わせて広背筋を伸長するように誘導していきます。
⑤コレを何回か繰り返す。
7−2,Special parking function
・この治療法は、初心者の方でも自宅で簡単にできるトレーニングですので、肩こりがある方などは是非1度試してみてください。
この治療では、重力により下に落ちた臓器を、上に戻すことで横隔膜の収縮を促し、呼吸補助筋の筋緊張をコントロールしていきます。
①仰向けで寝ます。
②膝の下にテーブルかバランスボールを置いて、下肢を挙上させます。
③仙骨の下にタオルかストレッチポールなどを敷き、お尻を持ち上げます。
④この肢位で深呼吸を5分程度行う
コレを行うだけで臓器が上に持ち上がり、呼吸を補助することで、頸部や肩骨周りの筋が弛緩し、肩こりがラクになります。ただし継続が必要です。
7−3,小胸筋・大胸筋のストレッチ方法
・ココでは小胸筋と大胸筋の滑走性を向上させる方法と、小胸筋の筋緊張をコントロールする方法を解説していきます。
〜方法(小胸筋の筋緊張コントロール)〜
①烏口突起に手を置きます。
②6−1で説明した胸椎・胸郭の拘縮テストを用いて、烏口突起においた手で小胸筋の伸長を確かめます。※この時、骨盤の回旋や胸椎の回旋は起こさないように、肩甲骨だけを誘導し小胸筋での可動域制限を確かめます。
③可動域が止まる部位でⅠb抑制を用いてストレッチしていきます。
④相反神経抑制を用いてストレッチしていく。コレを何回か繰り返す。
〜方法(大胸筋と小胸筋の滑走性向上)〜
①
②
③
④
⑤
7−4,ポールを使用した、前鋸筋と僧帽筋下部線維へのアプローチ
・この治療法も自宅で簡単にできるトレーニングなので、初心者の方でも簡単に行うことができます。
〜方法〜
①テーブルと椅子を用意する。
②ポールをテーブルの上に用意し、その上に肘を曲げ乗っける。
③ポールに身をまかせ前に腕を伸ばしていく。コレを何回か繰り返す。
・コレを繰り返すことで僧帽筋上部繊維の過活動を抑制し、僧帽筋下部繊維と前鋸筋の活動(肩甲骨を胸郭に引きつけるように)を促していく。
8、まとめ
今回は、肩関節の解剖から治療方法まで幅広く解説してきました。
知識不足な部分も多々あると思いますが、これからもっと勉強して知識を身につけていきたいと思います。
少しでも参考になったり、臨床で使ってみてよかったなどの意見をいただけたら幸いです。
まだまだ未熟者ですが、これを言い訳にせず、日々成長して一人でも多くの方に質の高いリハビリが提供できるように頑張っていきたいと思います。
一緒に頑張っていきましょう。
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