言葉を失ったあとで 信田さよ子・上間陽子
対談形式の本で、感想を書くのは難しい。
でも、とてもいい本だった。
だから、がんばって書き残す。
数年前と比べて、「唯一絶対の正しさ」みたいなものとずいぶん距離を取れるようになった。
言葉を探しながら迷いながら、綺麗な言葉じゃなく等身大の言葉で、自分の思いを話す力が身についてきたのだと思う。
自分の思いを話すことについて、3年以上前に書いたメモを引用したい。言葉がとても堅苦しくて、論文ばっかり読んでたんだなあと懐かしい気持ちになった。
メモのタイトルは「正しい言葉」
引用おしまい。
客観的な言葉の正しさに囚われつつも、自分自身の身体感覚に基づいた言葉選びの大切さも同時に感じていて、昔の自分はえらい!と褒めてあげたい。
そろそろ読んだ本の話をしよう。
著者の信田さよ子・上間陽子ともに人の話を聞いて、物を書くことを仕事の一つにしている。言葉の力を信じて、様々な人の声を聞いている。
信田さよ子は臨床家(カウンセラー)として依存症の患者の言葉を、上間陽子は社会学者として沖縄の若い女性の言葉を聞き取り、治療や支援を続けてきた。
対談での会話をほぼそのまま本にしているので、話題もコロコロと変わり、論点は数えきれない。
僕なりに要点を煮詰めると「自分自身の身体感覚に基づいた言葉選び」が生まれる瞬間が、カウンセリングにおける回復だったり、社会調査で出会う人たちの実態の表現だったりすると思った。
それは、どこかで見た・他人から押し付けられた「それっぽい言葉」ではなくて、安心できる場で自分の心・身体と向き合ったときに出てくる言葉と丁寧に向き合うこと、とも言えるかもしれない。
苦難の中を生きる人たちと、失われた言葉を一緒に探している2人の対談だったと僕は受け止めた。
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