『遺伝子組み換え農作物と在来種のより効果的なゾーニングに向けて』山田 佳怜@都立白鷗高等学校

2020年度のプロメテウス財団の選考通過者にインタビューをしました!

今回は都立白鷗高等学校の山田 佳怜さんです。

今回提案する研究内容を簡潔に教えてください

世界的に遺伝子組み換え種の栽培が増加する中で、遺伝子組み換え種と非組み換え種を近くで同時に栽培すると組み換え種の花粉が飛散することなどが原因で交雑してしまうという課題があります。これを解決するために、交雑を防ぐ有効な手法の提案を目的とした研究を行っています。これにより、組み換え種から在来種の多様性を保護するだけでなく、消費者の遺伝子組み換え種に対する不信感も取り除きたいと考えています。

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この研究が今まで世の中になかった理由は、何だと思いますか?

一般的な遺伝子組み換え種の交雑防止手法の研究は、作物を実際に実験施設で栽培し、その花粉の飛散距離や周囲の作物との交雑率を調べることで行われます。

しかし、こういった研究の場合、遺伝子組み換え種と非組み換え種の交雑を防ぐために定められている、栽培している作物間に設けるべき距離が交雑を防ぐためには十分ではない、といった既存の手法の評価をすることは可能であっても、新たな交雑手法を提案することは難しいです。また、作物を栽培する畑の環境は農家や農地の場所によって大きく異なるため、全ての作物に適用できる万能な交雑手法はおろか、一つの作物に利用できる有効な交雑防止手法の考案でさえも考慮すべき不確定要素がたくさんあります。

そこに、農業生産性の観点も織り込むことを考えると、この研究において短期間で大きな成果を出すことは難しく、それが今まで盛んに行われてこなかった理由だと思います。

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なぜ、この研究が今のタイミングで必要なのでしょうか?

世界におけるここ数年の遺伝子組み換え種の栽培面積の増加を考えると、現在は商業的な遺伝子組み換え種の栽培を「バラ」のみに規制し、遺伝子組み換え農作物の栽培は行っていない日本でも、いずれ遺伝子組み換え種の栽培が盛んに行われる可能性があります。

しかし、現在欧米で利用されている交雑防止手法を日本で使用するには改善が必要であると考えています。一般的に行われている、遺伝子組み換え種と非組み換え種の栽培時に間に距離を設け、組み換え種の花粉の飛散による交雑を防ぐ手法は、必要な距離が花粉を飛ばす風の風速などの気象条件や作物の花粉の性質によって左右される他、国土が狭い日本での農業で欧米と同様の効果を得ることが可能であるかは検討が必要です。そこで、今から研究を開始し、今後、グローバル化する中で、遺伝子組み換え種の商業的な栽培が日本で始まっても、適切に交雑を防ぎ日本の在来種の保全ができるようにしたいです。

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この研究があることによって、世の中にはどのようなインパクトがありますか?

これまで、遺伝子組み換え種と非組み換え種の交雑防止は、栽培時に組み換え種と非組み換え種の間に距離を設けて、組み換え種の花粉の飛散による交雑を防ぐという手法が主流でした。

しかし、この研究によってより有効な交雑防止手法が提案できれば、在来種の多様性が遺伝子組み換え種によって脅かされてしまうという課題の解決につながります。

これにより、遺伝子組み換え種のデメリットをなくすことができれば、栽培時の環境負荷の低さや、その高い生産性による世界規模の食糧危機の解決の可能性など、遺伝子組み換え種の良い面を活用した農業が可能になると思います。また、交雑防止、すなわち周囲の畑への影響をコントロールできるようになれば、遺伝子組み換え農作物の導入を各農家が選択することが可能となり、より自由な農業への実現へとつながると考えています。

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成果発表会に向けて、意気込みをお願いします!

自分がこの半年間取り組んできた研究の成果を発表できると思うとワクワクしています。成果発表会の時点では、研究の結果が全て出揃っているわけではありませんが、現段階での成果を皆様に発表できればと思います。

遺伝子組み換え種と非組み換え種の交雑は生活に身近なテーマではありませんが、この発表をもとに少しでも興味を持っていただければ幸いです。また、高校生の時点で自分で研究を行うことの楽しさを伝えられるよう頑張ります。

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【プロメテウス財団成果発表会を見にいこう!】

研究内容に興味を持ってくれた方は、ぜひ成果発表会を見に来てください!オンライン開催で年齢や場所等も不問で多くの方にご覧いただきたいと思っています。


『2020年度 一般財団法人プロメテウス財団 成果発表会(オンライン開催)』
 
開催日時:2021年3月30日(火) 10:30~ ※1時間半程度を予定
 
<出席者>

財団 代表理事   住谷 栄之資 
     理事   月尾 嘉男 (東京大学名誉教授)
     審査委員 坂村 健  (東洋大学 情報連携学部 部長/東京大学名誉教授)   
          村上 周三 (東京大学名誉教授) 
          廣瀬 通孝 (東京大学名誉教授)
 

<プログラム>
 
開会     10:30
主催者挨拶  10:33 ~10:40  代表理事 住谷 栄之資
成果発表   10:40~     発表時間 10分 質疑応答 5分

1. Tane Magic Project (Sustainable Farming)
プラスチックの再利用を通した環境問題改善計画

中井 健翔  吹田市立青山台中学校

2. 食品ロスの観点から環境問題を解決する
関根 奈央  栄東高等学校

3. ポリグルタミン酸を用いた水質浄化剤による流出重油回収システムの開発・研究
倉冨 星衣  追手門学院大手前高等学校

4. Sustainable Diversified Genetic₋farming
遺伝子組み換え農産物と在来種のより効果的なゾーニングに向けて

山田 佳怜  都立白鷗高等学校

5. 家から世界とつながるプログラミング
山本 舞香  追手門学院大手前高等学校


<参加申し込み>

参加料 :なし
方法 :パソコンもしくはスマートフォンよりご参加ください。
応募締切:2021年3月22日(月)
以下 Google formで視聴予約をよろしくお願いいたします。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSet2-yfe_hVOCrgEKyQECOCLulgxHWmsra4sHL04_ZBtn2l-A/viewform

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