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【「地域をつなげる力研究会」Vol.10 イベントレポート】「こども宅食応援団」と考える全国規模でコレクティブインパクトを起こし続ける仕組みとは?

「地域をつなげる力 研究会」とは?

一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」や、コレクティブインパクト、ソーシャルビジネスの実践者をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)

この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。

今回は、2024年9月4日(水)に開催された第10回目の内容をレポートします。

今回開催された勉強会では、「こども宅食応援団」の取り組みを通じて、全国規模でコレクティブインパクトを起こし続けるための具体的な手法と課題についてディスカッションされました。

ゲスト

一般社団法人こども宅食応援団 
事務局
靈山侑菜(よしやまゆうな)氏

1988年生まれ、大阪府出身。高校卒業後、単身で渡米しハワイ大学を卒業。帰国後、2017年に結婚を機に佐賀県唐津市へ移住。嫁ぎ先のお寺での経験を通じて、国内のフードロスや貧困問題に対する関心を深め、2020年に困りごとを抱える親子を支援する活動「こども宅食」を唐津で開始。2021年10月より、一般社団法人こども宅食応援団の事務局として、全国への普及活動に取り組む。昨年、一般社団法人えふを設立し、唐津を拠点に、人と人、人と社会をつなげる活動を展開。地域活性化と社会貢献に力を注いでいる。

このイベントから学べた全国規模でコレクティブインパクトを起こし続ける仕組み5つ

  1. 地域ごとのリーダー育成と協力の促進
    各地域で支援活動を進めるリーダー・プレーヤーを見つけ、彼らが地域課題の解決を推進するための支援を行うことが、全国的な取り組みを持続させる鍵となる。

  2. アウトリーチ型のアプローチ
    物資を届けるだけではなく、直接家庭を訪問し、信頼関係を築く「アウトリーチ型」の支援活動が、地域内でのつながりを深め、支援を持続させる重要な手法となる。

  3. 持続可能な資金調達モデルの構築
    助成金や補助金だけに依存せず、自主財源を生み出しながら、資金を循環させる仕組みを作ることで、全国規模での支援活動を安定して継続できる。

  4. メッシュ型コミュニティ(ごちゃまぜの場)作り
    異なる背景や立場を持つ人々が自然に交わり、協力が生まれる「ごちゃまぜの場」を作り、地域全体のつながりを強化し、コレクティブインパクトを生む基盤を広げる。

  5. 多様な人々とのつながりを深める仕組み作り
    多様な人々が、共感を持って関わることで、支援の輪が広がり、全国的なインパクトを持続的に生み出す仕組みが形成される。


【詳細レポート】

「こども宅食応援団」の具体的な取り組み

そもそも「こども宅食」とは、孤立している家庭に食料を届けることで、経済的な支援だけでなく、コミュニケーションを通じて孤立感を和らげる活動を行っています。ここで特筆すべきは、単なる物質的な支援ではなく、「アウトリーチ型」のアプローチです。つまり、直接家庭を訪問し、信頼関係を構築しながらサポートを行うという方法です。このアプローチにより、家庭内の問題やこどもたちが抱える課題がより深く理解され、的確な支援が可能になります。

このモデルを全国に展開するために、設立されたのが、⼀般社団法⼈こども宅⾷応援団で、全国の立ち上げの支援や、活動への寄付等の受け皿となり、現在では以下のように全国に拡がっています(都道府県で未進出は島根県・岩手県のみ)

こども宅食の実践者でもある靈山さんは、ある家庭への訪問で半年以上の時間をかけ、ようやく玄関のドアを全開にして迎え入れてもらえるようになった事例を紹介しました。このように、信頼関係を築くためには時間と忍耐が必要であり、支援が一方的なものではなく、相互に信頼し合う関係を作ることが活動の成功に直結するのです。

勉強会で靈山さんは、「地域ごとの課題やニーズは異なるため、各地での柔軟な対応が必要。都市部と地方では家庭の状況や支援に対するニーズが異なり、その地域に合ったアプローチを模索することが重要」と話しました。

「地域課題の構造的な解決は単一事業や既存のネットワークでは難しい」との発言もあり、複雑化する社会課題に対して、支援活動がどのように応答していくかが問われています。

持続可能な支援体制をどう構築するか

そのうえで、全国規模でコレクティブインパクトを起こし続ける仕組み、について意見が交わされました。

まず、こども宅食のような支援活動が持続可能であるためには、資金調達や運営の仕組みが重要な課題となります。

また、靈山さんは、唐津で実施する自団体の運営経験から、「助成金や補助金だけに頼り続けることは、活動の継続を難しくする。持続的な資金源を見つける工夫が必要」と語りました。

このような課題に対して、勉強会では「新しい事業を作り、活動に投資し回していくことが、活動の持続性につながるのでは」等の意見が共有されました。支援団体自身が経済的に自立し、資金を循環させる仕組みを作ることで、外部の支援に過度に依存せず、安定した運営が可能になります。

また、支援活動を行う人々同士がつながりを持ち、情報を共有する場を作ることが重要です。お互いの活動を語り合うことで、支援者同士の連携が強化され相乗効果となり、より良い活動の輪が広がることが期待されています。

こども宅食応援団では、こども宅食実施者ネットワークを運営しており、こうした支援者同士の交流の場を生み出す取り組みを行っています。

メッシュ型コミュニティの創出

コレクティブ・インパクトを実現するためのもう一つの鍵となるのが、メッシュ型コミュニティの形成です。これは、さまざまな背景を持つ人々が交わり合い、異なる視点や経験を共有し、互いに学び合う場を作ることを意味します。

靈山さんは「メッシュ型のコミュニティ、つまり、人々がごちゃまぜに出会う場をいかに作るかが鍵です」と述べ、地域における多様なステークホルダーが交わる場の重要性を強調しました。

地域のイベントなどで「助ける側」と「助けられる側」という構図を超え、誰もが対等に参加できる場を作ることが大切だとされました。こうした「ごちゃまぜ」の場では、異なる背景を持つ人々が自然と出会い、予期しなかったコラボレーションが生まれることが多いです。このような場作りは、地域社会において持続的な変革を促す重要な要素となります。

多様な人々とのつながりと応援団の展望

支援の持続には、社会課題の解決に取り組む人々の連携が大切です。

関係機関・個人・企業・自治体など、さまざまな人々がつながることで、「こども宅食をきっかけに親子の孤立の課題に気づく人、知る人が増える」「親子の孤立に関心のある・行動する人の連携が活発になる」などアウトリーチ支援への関心が高まっていきます。

靈山氏は「支援をするだけでなく、つながりを感じられる場作りが必要だ」と述べています。関係性を強化し、地域全体で支援の輪を広げることで、より多くの人々がこの取り組みに参加しやすくなります。

まとめ

今回の勉強会では、コレクティブ・インパクトを通じて、こども福祉活動における多様な取り組みを効果的に展開する方法が議論されました。支援活動が単発的なものに終わらず、地域全体の課題解決に向けて持続可能な仕組みを構築するためには、資金調達や支援者同士の連携、地域のメッシュ型コミュニティ作りが不可欠です。

「こども支援活動を通じて、地域全体が連携し、つながりを強化する必要がある」という言葉に象徴されるように、支援の輪を広げるための取り組みが今後ますます重要になります。

靈山さんが提案する活動の持続性に向けた具体的なアイデアは、全国のこどもたちを支える上で、今後の指針となるでしょう。今後の展望として、全国の地域が共に支援ネットワークを築き上げ、こどもたちに明るい未来を提供するための更なる連携が期待されます。

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