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地域をつなげるイノベーター列伝 Vol.4「ひろしまをつなげる30人」プロデューサーが語る「未来の当事者の作り方」とは?〜後編:「つなげる30人」は教えてもらう場ではない。ジャーニーだ! 〜

地域で活躍するキーパーソンと対談し、行政・企業・NPO・市民といった様々なセクターをつなげていくことについて考えていく連載企画「地域をつなげるイノベーター」vol.4

今回は2021年から始まった「広島をつなげる30人」を主催する一般社団法人広島県観光連盟(以下、HIT)事業本部長 兼 チーフプロデューサーの山邊昌太郎さんをゲストとしてお招きしました。

インタビュアーはSlow Innovation株式会社「つなげる30人」プロデューサーの加生健太朗と、同社コミュニティマネージャーの内英理香です。

今回は後編です。(前編はコチラ)

<話を聞いた人>
山邊 昌太郎 さん

【経歴】
1970年、広島県生まれ。京都大学工学部卒業後、1992年、株式会社リクルート入社。新規事業開発、リクナビ責任者、求人各誌編集長を歴任。2011年、株式会社ベルシステム24にて事業部長に就任。新規事業開発や新規顧客開拓の責任者を務める。2016年、カルビー株式会社にてクリエイティブディレクターに就任。広島に新設された新規事業開発拠点「Calbee Future Labo(カルビーフューチャーラボ)」の責任者として立ち上げにコミット。2020年4月より現職。

ステークホルダーとともに一体感を持ち、共通のゴールを目指すこと


内:
とある1人の女性メンバーが今回開花しましたよね。山邊さんがされているように、「君の意見も大事なんだ」と対等に、かつ心から尊重する姿勢で、「これ、得意だよね?」みたいに相手の良さを引き出す声掛けなどをされたら、人は自然と変容していくんだなと感じました。

山邊さんは人が開花するポイントをしっかり押さえていらっしゃるんです。

山邊さん:彼女自身も「つなげる30人」は特別な場だと言っています。

やはりそれは、私達単体ではなく参加者全員が一体感を持ち、「プロジェクトを通じて何を実現したいか」という共通のゴールを共有し、目指しているからだと思います。

多くのプロジェクトは、仕事としてやっていますが、それを超越して、より高いところにある「目指す思想」のところで一体となっているように動いている感じが凄くあります。

内:通常、プロジェクトが複数立ち上がると、自分のチームにばかり目が行き、他のチームは覗くだけになりがちだと思いますが、広島では、他のチームのことも心から気にかけ、心から応援し、心からそのチームメンバーと同じ熱量・行動量で動いているように見えます。単にプロジェクトを起こすことがゴールではなく、30人ワンチームで広島の未来をつくっていく、という本気度が行動としても現れていると感じます。

山邊さん:この前もとあるプロジェクトチームリーダーから「今後、プロジェクトをどう進めて行ったら良いか?」という相談がありました。

私がはっきりと厳しく「本当の意味で進んでいくには、自立していかないといけない。とりあえず何かやりましたという発表会みたいなことは無意味。マネタイズを含めちゃんと回していこう」と、伝えたところ、「エンジン巻き直します。」と返ってきました。

私もそうですが、人間って緩んでしまうこともあるし、発表に合わせて帳尻を合わせる時もありますよね。でも、そうやって帳尻を合わせる事を目的にしてしまうと、ブレイクスルーできないこともあります。

本当だったらもっと上に飛べたのに、最初から30回と言ったら30回しか飛べない。だから、皆がどれだけクリエイティブテンション(創造的緊張)を張れるかが大事だと思います。

セッションの様子

「つなげる30人」の魅力とこれから

加生:山邊さんは、カルビーのフューチャーラボのご経験もあり、またシステム思考のご見識もお持ちだと思いますが、今、プログラムを一周されてみて、この「つなげる30人」のプログラムの面白さをどのように感じていますか?

山邊さん:リクルート時代から、様々な研修を山ほど受けてきましたが、その中で「システムシンキング」が飛び抜けて素晴らしかったのです。20年近く前の経験ですが、今でも自身のその後の人生に大きな影響を与えてくれています。

今回の「つなげる30人」も、その時に感じたのと同じような感覚なんです。
「つなげる30人」のプログラムは、あらかじめ用意されたものをただこなすというのではなく、全ては参加者の当事者意識と場の熱量で如何様にもなります。

Slow Innovation さんのファシリテーション能力や、場を盛り上げる力や、メンバーの広島への愛情、そういったのが相まって、ちゃんとその場が形成されている。

決してやらされている、こなしていくではなく、「自らこれをやりたい」という状況を生み出すファシリテーションをしていただいているなと思います。

私がこれをやれと言われても正直ここまで持って行ける自信がないです。素晴らしいと思います。

加生:ありがとうございます。

私たちがファシリテーションさせていただく際、一番意識しているのが、まさに「誰1人残らず、自分がやりたいことをやる状態にする」という事なので、そう評価していただき大変嬉しいです。

山邊さん:実は私、最初に各社の社長にプレゼンした「これはどういう研修なんだ?」と言われてる事がありました。
それに対し「これは教えてもらう研修ではなく、参加メンバー自らが広島の未来の課題を捉えて、自ら解決する術を探っていくジャーニーで、御社の社員が自立していくプロセスです。これは、大きな教育投資であり、もっと言うと広島の未来の人材を創る投資なんです。」という話をしたんです。

加生:今後「つなげる30人」を立ち上げたいと考えるエリアプロデューサーに伝えたいメッセージはありますか?

山邊さん:「これをやれば勝手に何かが生まれる」という淡い期待をしてはいけないと言いたいです。

全ては「何かをやってくれるではなく、自分たちで生み出すもの。丸投げはダメ」ということです。

また、これは未来につなげていく話なので、未来志向じゃないとやっていけません。

「そんなことやってどうなる?」と言う人はいますが、ネガティブ思考の先に明るい未来はないと私は思っています。

何をやるにしても、課題や問題は山ほどあります。

私は今回、「当事者をつくる」ことにコミットしたいと思い「広島をつなげる30人」を始めましたが、このような目的はすごく大事だと思います。

多くの場合、半年経ったら成果を求めたくなるのかもしれないけど、これって1年とかで成果を出すたぐいのものではなく、多少中長期的に見なければいけないと思っています。

年度内に花開くものもあれば、2年、5年かかるものもありますが、何倍にもなって跳ね返ってくるものもある。中長期的な視点での人的な「投資」はとても重要です。

加生:今回「未来の当事者をつくる」というビジョンを抽象度をそのままにしたことが成功要因の1つだったとお聞きして感じました。もう少しブレイクダウンすると、当事者意識が持ちにくくなるかもしれず、そのバランスが重要ですね。
最後に山邊さんの今後の夢を聞かせていただけますか?

山邊さん:今、「広島をつなげる30人」の第1期がもうすぐ終わることに猛烈な寂しさともったいないという思いを感じています。

仕組みとしては、第2期にバトンタッチという方法がありますが、人とのつながりや、生まれようとしている新しいプロジェクトそのものの行き先が宙ぶらりんになるのが不安です。

それぞれの出身母体に引き継ぐことも考えられますが、上司によっては私みたいにやっちゃえやっちゃえとはなりません。

さらにこれをつなげていける、救う手段や、このきっかけをちゃんとビジネスとして繋げられるようなものを作りたいです。

OS(オペレーション・システム)が一緒の集団は前提条件がそろっているので、初めて話しても意気投合してビジネスとしてやっていきたいという話になることがあります。

「つなげる30人」という同じOSを持つメンバーたちが、今やっているプロジェクト含め、何かしらを起こそうとしたとき、拠り所を持ってポンと投げて新しいビジネスやムーブメントが生まれると素晴らしいじゃないですか。
将来は、私がその受け皿となれるといいなと思っています。

加生:ありがとうございました!

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