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【「地域をつなげる力研究会」Vol.2イベントレポート】つなげる価値と流儀を言語化する。

「地域をつなげる力 研究会」とは?

一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)

この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。

今回は、2023年12月6日(水)に開催された第2回目の内容をレポートします。


登壇者プロフィール

主催側

◆加生健太朗(一般社団法人つなげる30人代表理事)

大学卒業後、通信会社にて法人営業を行った後、フリーランスとして独立。震災後、東北での行政と住民との対話の場作りを行った事を契機に、2016年から渋谷区の企業・NPO・市民・行政によるクロスセクターまちづくりプログラム「渋谷をつなげる30人」を運営し、ディレクターを務める。2022年につなげる30人を一般社団法人化し、現在代表理事を務める。

◇日比谷尚武(一般社団法人つなげる30人理事)

「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす」をテーマに、セクターを横断するコネクタ。広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティ作り、官民連携促進を中心に活動。kipples代表・一般社団法人Public Meets Innovation理事・公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長・Shibuya Startup Support PR担当特別アドバイザー・ロックバー主催、他。共著「現場のプロが教える! BtoBマーケティングの基礎知識」

ゲストプロフィール(五十音順/敬称略)

⚫︎伊藤秀俊(渋谷/企業)不動産デベロッパー所属

所属企業では渋谷再開発を担当しつつ、同時に渋谷を舞台としたスタートアップ共創PJと地域創生PJを実行しています。名古屋大学を卒業後、不動産デベロッパーに入社。不動産鑑定、ビル運営、IT投資、財務/経理業務を経て、2017年からスタートアップとの共創事業に5年間従事。エコシステムビルダーと共創するインキュベーション施設を9か所開業、事業連携100件程度に関与し当該PJから生まれたコミュニティ約30件に関与。現在は渋谷駅前再開発と渋谷のまちづくりを担当しつつ、コミュニティとコミュニティを繋ぐ仕掛け「Shibuya BALCON」を共催しながら志ある方々の希望実現の舞台を用意。ビジョンは「志を持つだれしも」が「それぞれが想う明日への希望」を語り「希望を実現できるまち」を共に創る。何も考えずにまず実行しちゃうタイプです。

⚪︎小野寺亮太(京都/行政)京都市役所 /(一社)ベンチャー型事業承継 エヴァンジェリスト

家業がありつつ公務員をしているアトツギ公務員。区役所、観光・中央卸売市場で産業振興の部署を経て、現在は子ども若者はぐくみ局で、こども・若者の居場所づくりや成人式を担当。「京都市未来まちづくり100人委員会」「京都をつなげる30人」や金融機関との協創PJなど、クロスセクターで社会課題を解決するプロジェクトに多数参画。2023年7月から一般社団法人ベンチャー型事業承継のエヴァンジェリストとして、京都を中心にアトツギ支援やアトツギカルチャーの醸成にも取り組む。

◼️上条厚子(名古屋/非営利)NPO法人ママライフバランス 代表理事

1981年生まれ、愛知県出身。産後うつになった原体験から、育児の悩みが深くなる前に"予防"する「産前教育」が当たり前にある社会を目指し事業推進中。2019年にクラウドファンディングで資金170万を集め、子育て支援事業を行うNPO法人設立。2020年に名古屋市から地域子育て支援拠点事業を受託。同年、ボーダレスグループに参画し、1万人のパパママのお悩み解決から生まれた、出産準備プログラム【親のがっこう】を設立。現在は、政策提言を行うため政策起業家としても活動中。

◻️中川隆義(渋谷・名古屋・横浜/企業)元銀行員/市民活動家のたまご

横浜市在住45年。銀行員一筋30年、猛烈サラリーマン卒業後、自分探し/志探し、現在ベンチャー企業勤務。つなげる30人は渋谷→名古屋→横浜とエリアを跨いで7年間のご縁。五十にして天命を知る!「地域社会のために」と地元の里山公園(舞岡公園)の自然保全に関わる市民活動“チームままmaioka”を始動。横浜をつなげる30人でチーム発足。「都市自然を次世代につなぐ」をスローガンに“緑の事業承継”に取組む。週末は田んぼと雑木林に居ます。お酒大好き、かまきり大好き、4人家族、「仕事主義、家族主義、全力主義」

インスピレーショントーク:「つながりが価値を生む」を体系化してみると

◇日比谷:
人と人がつながることの1番のメリットは「知ること」だと思います。知らなかった人や情報に新しく出会えることが大きな価値だと思います。

そして、人と人をつなげる「コネクタ」の活動は、組織が新たに目指すゴールに向けて種まきと先回りをしているのだと考えています。人脈や情報が必要になった時にすぐ持ってこれるように、事業の半歩先を見据えてアンテナを張る。そして、情報発信しながら種まきをし、情報収集して先回りをしておくのです。

そのためは、組織が掲げるゴールと現状の課題をしっかり分析し、そのギャップをどう埋めるか探っておくことが大切です。

この分析はコンサルの領域でもありますが、それに加えて、解決策を考え情報収集や斡旋も行います。そのため、コンサルの仕事プラスアルファの役割をコネクタが持っていると思います。

自分で出会いの場を作ったり、時には人の作る場に飛び込んだりして、偶然の出会いが成果に繋がれば、それは必然の出会いになります。

その裏には、成果にならない繋がりも無数にありますが、これもいつかの時のための仕込みだと思って動いています。

◆加生:
きっとこれを言語化できないままコネクタの動きをしていた方々もいると思います。言語化してくれたことと、認知を共有できたことでスッキリしました。

ここで僕から1つ質問ですが、日比谷さんから見て「つなげる30人」はどう見えていますか。

◇日比谷:
「つなげる30人」では、つなげるための方法は教えていますが、つなげる流儀や考え方、意義や展望などは教えていません。

僕は、そこに余白があって面白いと感じています。

規定しすぎないからこそ、参加者それぞれにいろんなスタイルや考え方が生まれると思います。

この研究会では、それを各々持ち寄って見える化させることができるので、面白い機会だと思います。

ゲストクロストーク

◆加生:
簡単な自己紹介と、日比谷さんのお話を聞いた感想をお願いします。

◻️中川:
中川です。「つなげる30人」と7年ぐらいの付き合いです。

渋谷で加生さんに出会い、自分の人生の歩みと共に、渋谷、名古屋、横浜と、関わってきました。

今は「横浜をつなげる30人」で立ち上げた“チームままmaioka”で里山自然の事業承継に取り組んでいます。

日比谷さんの話は、自分の考え方と繋がってスッキリしました。

私なりの言葉でも用意していましたが、本質は同じです。

みんなそれぞれ表現があると思いますが、おそらく本質は一緒ではないでしょうか。

こういうことを科学して言語化することが研究会の目的であり、それに共感した人が「自分の地域でもやりたい」とつながっていく。

これが今みなさんが目指してるところだと思いました。

⚫︎伊藤:
伊藤です。スタートアップ共創事業をしています。
約300件の共創をしてきましたが「渋谷つなげる30人」の2期と3期に参加してからガラリと件数が変わったのを体感し、「共創」を学びました。

僕のビジョンは、志を持つ人が渋谷という舞台で希望を実現できる街を創ることです。それを具体化するにあたり、スタートアップの方と舞台を作る活動をしています。

日比谷さんの話、すごくしっくり来ました。でも、会社組織の中での立ち回りと、社会での立ち回りとの違いに困惑をすることもあります。

先回りや種まきは、社外の人とイーブンな関係性を保てる実直な人が好まれるような気がしますが、その実直さのまま社内調整をすると潰されてしまいます。

社内調整がうまい人は、利害関係をうまくストーリーにして1つにまとめるタイプの人だと思い、これを別の人にお願いしたら上手くいったので、分担しています。

◼️上条:
上条です。NPO法人ママライフバランスという子育て支援事業の代表をしています。

創業のきっかけは、私自身が産後うつの診断を受けたことです。

愛情だけで育児をせず、知識という武器を持って育児する親を増やせたら日本中の子育てがハッピーでイージーになると思い、個人事業主から創業し法人化して4期目です。

「ナゴヤでつなげる30人」は2期と3期に参加しました。とても楽しくて、途絶えてしまうのが嫌なので主催側になりたいのですが、まだ事業の黒字化と安定化が辛い時期で時間がさけず、加生さんに相談しながら引っ張ってもらっています。

ゼロから事業を作っていく中で、自ら人脈や情報を掴みに行かないと事業をゴールに推進させることができなかったので、先ほどの日比谷さんのお話を聞いて腹落ちし感動しました。

⚪︎小野寺:
小野寺です。家業がありつつ市役所職員をしている「アトツギ公務員」です。

年間360日ほど働いてる親を見て「これは難しい」と思い、色々と変遷はありつつも公務員の道に進みました。

親に公務員になると伝えた時に「公務員になってもいいけど、“公務員”にはなるな」と言われたことが心に残り、胸に抱きながら公務員になりました。

僕にとって「公務員っぽくない」と言われることが最高なので、そのためにどうしたらいいか常に考えてきました。

公務員はいろんな縛りがあり、僕は外に居場所を求めるようになりました。

その時「つなげる30人」理事の野村さんに出会い、「京都をつなげる30人」の3期に参加しました。

楽しすぎて「ここが僕の居場所だ」と思いました。

後継という立場がありつつ公務員をしている人はあまりいないと思うので、僕だからこそできることを模索して実践中です。

日比谷さんのお話を聞いた時に、種まきはできていても先回りがあまりできてなかったと思いました。ここを深掘りして皆さんにも聞きたいです。

◆加生:
次に、事前に考えていただいた「私を一言で言うと」と「つなげる流儀」を深掘りしたいと思います。

伊藤を一言で言うと「他力本願」

⚫︎伊藤:
僕は、インキュベーション施設を9箇所作り、全てパートナーと一緒にやっています。

あるセミナーで有名な大学の教授にそれを話すと「君のプロジェクトは面白いけど他力本願だ」と言われ、僕は喜びを感じました。

なぜなら、「共創」が「他力本願」という言葉で言語化されただけだからです。

僕が目指していることは、他の人の強みと自分の強みを掛け算し、それを求めている方にプロデュースすること。まさに「他力本願」です。

つなげる流儀は「ミスマッチ絶対回避」

⚫︎伊藤:
持続的に活動するためには、当然、継続的に声をかけないと続きません。

それを「どれか当たればいい」という考えでやると相手に失礼な上に時間を奪うので、ミスマッチをしないことが大切だと思います。

必ずお互いに親和性が高いことや、得られるものがあると把握した上でつなぐ。あるいは、自らつながる。これを絶対としています。

◇日比谷:
すごい。これはやろうと思っても、なかなかできることじゃないです。それぞれが何に困ってるか、相手の得意技や強みが何かを深く理解しないといけないから、フィーリングでは済まないですよね。

⚫︎伊藤:
でも結果的にフィーリングも大事で、両輪だという印象です。

このバランスをとるためには、共通項を見つけることです。

誰しもが自分がやりたいことをしている人ばかりですが、「みんなのためになるからやりたい」という人と、「自分にリターンがあるからやりたい」という人がいます。

前者同士をつなげると大体うまくいくので、後者を排除することが大事です。大枠でその共通項を捉えてから、それぞれのプロフェッショナルが何かをしっかり理解し、掛け算あるいは求めているものであることを理解した上で、おつなぎするようにしています。

小野寺を一言で言うと「本能のまま人間」

⚪︎小野寺:
僕はフィーリングやノリで生きています。フラフラといろんな場に顔を出しますが、僕の中で感じるものがあって引き寄せられる人がいます。まだ言語化ができていない基準があり、それに従って出会いに行ったり、コミュニティに入ったり。本能のまま動いています。

つなげる流儀は「動いて動いて動きまくる」

⚪︎小野寺:
待っていても人と出会う機会はないので、自分から動いて動いて動きまくることが大事だと思っています。

外に出て人の話を聞いた数だけ、得るものや返ってくるものがあります。

自分から仕掛けてどんどん現場に出ていくような、行動派な人間でありたいと思っています。

昨年子どもが生まれてから変化しましたが、それまでは誘いがあればすぐに行っていました。今は家庭とのバランスを模索中です。

◇日比谷:
どうしても時間との戦いですよね。時間は有限なので「なぜ繋がるのか」とか「その次どうするか」を考えるのが、より大事になってくるかと思います。

◆加生:
まさに上条さんの「親のがっこう」が、そのヒントを担っているんじゃないかと思います。上条さん、小野寺さんへのアドバイスも含めてお願いします。

上条を一言で言うと「子ども」

◼️上条:
小野寺さんの「本能のまま人間」にすごく共感します。

私は子どもで、基本的に理性がないことが悩みです。肉食っぽいのかもしれません。メンタルも強めですね。

つなげる流儀は「自分が楽しむ」、「繋げようとしない」

◼️上条:
私はひとり親で、ずっとワンオペで2人の子育てをしています。

手持ち時間が圧倒的に少ない中、仕事も子育てもプライベートも捻出しなければならないので、自分が楽しいことしか引き受けないと決めています。

そして無理に繋げようとしません。

楽しい場を作っていたら繋がりたい人は勝手に繋がると思っています。まずは自分が楽しんで、集まってくださった人にも「楽しかった」と言って帰ってもらう。それだけしていれば、次につながっていきます。

私は子どもっぽさ全開で、楽しみながら台風の目のような存在になれたらと思います。

これは小野寺さんへの回答にもつながります。「親のがっこう」は、まさに家庭と仕事の両立を夫婦ワンチームで乗り越えるということをテーマにしており、3つのポイントをお伝えしています。

その中の1つとして、「“お父さんスイッチ”、“お母さんスイッチ”を意識的にオフにし、1人の大人として楽しむ時間を持ちましょう」と伝えています。

夫婦それぞれ楽しめる時間と居場所に出かけていくために、子供を見る時間を協力し合う。そうすると「あなただけずるい」という喧嘩がなくなるのです。

中川を一言で言うと「晴れのちエゴ」

◻️中川:
つなげるって、良い人でいなきゃいけないと思うんです。晴れやかで気持ちいい人だと思ってもらったのちに「実はやりたいことがあるんですよ」とエゴを出します。

つなげる流儀は「風呂敷を拡げる」

◻️中川:
つなげる時は、双方のことをよく理解して風呂敷を拡げてあげることが大事だと思います。

そうでなければ僕が間に入る必要がなく、双方のアポイントを取るだけになってしまうからです。両者の風呂敷を拡げた上でつなげ、その先に僕のエゴがある。風呂敷×エゴというイメージです。

事例としては、渋谷から転勤して名古屋に行った時「つなげる30人」を名古屋で立ち上げることになり、名古屋市長と副市長に渋谷のプレゼンをしました。

そこで僕が風呂敷を拡げて話した結果、渋谷区長とおつなぎできる事になりました。

両者の風呂敷を拡げなければ実現しなかったと思います。その先には、銀行員としてライバル銀行に認識させたいという僕のエゴがあったということです。

ゲスト・参加者同士の対話

ここで参加者にも感想を伺い、良かったことや気づきを共有しました。

◼️上条:
皆さんとじっくり話せて心が温まりました。今まであまり深く考えていなかったのですが、日比谷さんのお話でその価値を言語化・視覚化してもらえたことで、今後名古屋で広めていく武器の1つになりました。

⚪︎小野寺:
子どもに関することを深掘りしたいので、また別途やりたいと思いました。最近、つながる・つなげるとは何かずっと考えており、これからも考えていきたいので、3回目も楽しみにしています。

◻️中川:
「つなげる30人」のメンバーはすごいなと改めて思いました。

つなげること自体は、もう自分のものになってると思って改めて考えてなかったのですが、今日は新鮮な気分になりました。

新鮮な気分になるということは、もう1回見つめなおして使いなおすことにより、今までと違う何かができると思うので、非常に良かったです。

僕は今、緑の事業承継をしてるので、「横浜の緑をつなげる30人」みたいなものを考えてみようかと思います。

⚫︎伊藤:
社内で「これからはコミュニティですよ」と言い続けてきましたが、イマイチ伝わっていない反応でした。それを変えていく勇気をいただきました。諦めずに頑張っていきます。

最後に

◆加生:
今回は、日比谷さんの実例とロジックを共有した上で話ができたので、具体と抽象がいいバランスで議論できたと思います。

次回は1月10日です。ゲストは、前渋谷区議会議員の森田さん、横浜からコクヨアンドパートナーズの加藤さん、京都市役所から山崎さん、佐世保から市役所の山邊さんにお越しいただきます。

2月は趣を変えて、プロデューサースペシャルを目論んでいます。仕掛け人の立場から話してもらう回にしたいと思います。是非楽しみにしていてください。

地域をつなげる力研究会 Vol.3
https://project30-vol3.peatix.com/


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