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【「地域をつなげる力研究会」Vol.3 イベントレポート】つなげる背景にある理屈を共通言語化する

「地域をつなげる力 研究会」とは?

一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)

この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。

今回は、2024年1月10日(水)に開催された第3回目の内容をレポートします。


登壇者プロフィール

主催側

◆加生健太朗(一般社団法人つなげる30人代表理事)

大学卒業後、通信会社にて法人営業を行った後、フリーランスとして独立。震災後、東北での行政と住民との対話の場作りを行った事を契機に、2016年から渋谷区の企業・NPO・市民・行政によるクロスセクターまちづくりプログラム「渋谷をつなげる30人」を運営し、ディレクターを務める。2022年につなげる30人を一般社団法人化し、現在代表理事を務める。

◇日比谷尚武(一般社団法人つなげる30人理事)

「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす」をテーマに、セクターを横断するコネクタ。広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティ作り、官民連携促進を中心に活動。kipples代表・一般社団法人Public Meets Innovation理事・公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長・Shibuya Startup Support PR担当特別アドバイザー・ロックバー主催、他。共著「現場のプロが教える! BtoBマーケティングの基礎知識」

ゲストプロフィール(五十音順/敬称略)

加藤優子(横浜/企業)
会社員/ベリーダンサー

横浜で生まれ育ったからには地元に貢献したいと思い、仕事以外でも様々な活動をしてきました。
・横浜のコワーキングスペースの立ち上げ
・イベントの開催
・横浜西区100人カイギキュレーター
・横浜を繋げる30人1期参加
・横浜を繋げる30人2期ファシリテーター
また、ベリーダンサーとしての活動やお立ち台ダンサー、モデルとしての活動もしています。これらの活動は全く別物に見えますが、私の中では繋がっています。そのあたりもお話できたらと思っています。

森田由紀(渋谷/非営利)
公益財団法人ジョイセフ

旅行業、イベント会社にて勤務後、結婚を機に盲導犬育成支援団体に勤務。障がい者の社会進出と自立促進をサポートする。
第1子を出産後、内閣府の社会起業家育成のビジネスプランコンペにて採択され、女性の働き方改革をテーマに「NPO法人代官山ひまわり」を創設。「子育て世代が街の担い手に」をスローガンに7年間代表を務める。
2015年、渋谷区議会議員(無所属)に挑戦するものの、落選。2019年、渋谷区議会議員(無所属)に2度目の挑戦し、初当選。
以後、1期4年間。シブヤを笑顔にする会に所属し、与党議員として活動を行う。
【代表的な政策実現】
・落書き消去活動を3年事業化へ
・防犯パトロールの強化
・地域で仕事と経済を循環させるローカルキャリア制度
・不妊治療支援
・子宮頸がんワクチン接種対策の強化
・女性の健康課題他
2023年、渋谷区議会議員選挙、2期目の挑戦にて落選(34議席中37位)
現在、PA(パブリックアフェアーズ)を中心に、合同会社HU-connectを設立し、公共政策コンサルタントとして活動中

山﨑哲史(京都/行政)
京都市教育委員会 京都まなびの街生き方探究館/京都市市民協働ファシリテーター

海の京都こと、京都府舞鶴市の出身。京都市在住で2児の父。
京都市役所入庁後は、一貫して教育畑を歩む。近年は、社会課題の解決に挑戦する若者を支援するU-35 KYOTOと連携した探究教育、産学公が垣根を越えて人づくりをキーワードに様々な視点から論議を深める京都教育懇話会、モノづくりを基軸としたキャリア教育など、クロスセクターによる教育の推進に傾倒。好きな言葉は「我がまま(自分らしさを大切に、生き生きと行動)」で「ええやつ(誰かの幸せを考え、共通価値を見つけ行動)」。

山邊幸弥(佐世保/行政)
佐世保市役所

1988年生まれ。長崎県佐世保市出身。2011年佐世保市役所へ建築職として入庁。2019年一級建築士資格取得。老朽危険空き家に関する業務や被災地支援の経験を通じて、持続的なコミュニティの形成に関心を抱き、つなげる30人プロジェクトの九州初開催をリード。

インスピレーショントーク

「弱いつながり」と「ストラクチャーホール」

◇日比谷:
「弱いつながり」は、アメリカの研究結果がきっかけで広がりました。

とあるエリアで転職した人の経緯を調査すると、人づてで転職した人の半分以上が満足しており、その中でも身近な人からの紹介よりも普段あまり関わりのない「弱いつながり」からの紹介の方が満足度が高いというものです。

強いつながりは価値観が近いためコミュニケーションコストがかかりませんが、得るアイデアや刺激は低いです。

対して、弱いつながりのコミュニケーションコストは高いですが、新しいアイデアや情報が得られる可能性も高いです。

つまり、新しい発見が弱いつながりの良さです。

弱いつながりを思い返す機会は昔より少なくなっているので、改めて自分のつながりを棚卸しして、強いつながりと弱いつながりのバランスを考えると良いと思います。そして、つなげる時に「ここに異物はあるか」「大変でも超えた先に刺激があるか」という視点を持つと良いです。

次に「ストラクチャーホール」は、つなげる人のことです。つなげる人は橋渡し役になるので、情報が集まりやすく重宝されます。

でも一度コミュニティ同士が繋がると、つなげた人を抜いて直でやりとりし始めます。

それにより省かれた気持ちや、有り難がられず寂しい気持ちになることもあると思いますが、それは宿命として捉えて深追いせず次のつなぎ先を探さなくてはいけません。

そして、第2第3のつなぎ手をどんどん育てて、俯瞰で見れば 1つの塊がたくさん繋がっていくようプロデュースするのが皆さんの仕事だと思います。

このように、つなげる背景にある理屈を皆の共通言語にすることは、つながりを生む上で大切だと思っています。

ゲストクロストーク

自己紹介とインスピレーショントークの感想共有

◆加生:
簡単な自己紹介と日比谷さんのお話の感想をお願いします。

⚪︎森田:
森田です。渋谷区議会議員をしていました。現在は「国際協力NGOジョイセフ」で女性支援活動をしています。また「HU-connect」という会社を作り、人と人をつなげる活動もしています。議員を経験したことで、民間と行政等のつなぎ役になりたいと思い始めました。

日比谷さんの話を受け、今まさに自分の仕事になっていると思いました。ジョイセフで働くきっかけも弱いつながりです。NPOの代表をしたり起業したりという今までのつながりがあって今があります。

⚫︎加藤:
加藤です。会社員とベリーダンサーをしています。「横浜をつなげる30人」の第1期生に参加し、2期は運営、3期はサポートをしました。

日比谷さんの話、その通りだと思いました。でも共感するポイントがない人同士でつながるのは難しいので、「横浜をつなげる30人」では「パフェ部」を作りました。食を囲むと仲良くなれて、相手に対する愛が生まれます。今まであまり話したことない方が参加してくれたり、新たな一面を知れたりという副次的効果もありました。閉鎖的なコミュニティにせず誰でもいつでも入ってこれるよう意識し、横浜市役所内や近辺など皆がすぐ来れる場所で行っていました。

◇日比谷:
みんなが個人的な話題で集まって非武装地帯に行くと、肩書きやバックグラウンドを捨てて仲良くなれて、難しいテーマを話す時も柔らかく話せるという技があります。まさにそれをパフェでやっていたんですね。

◼️山﨑:
山﨑です。「京都をつなげる30人」の第3期生です。京都市役所の教育委員会で「京都まなびの街 生き方探究館」というキャリア教育施設に勤めています。学校教育のステークホルダーをもっと拡げたいという思いがあり、特徴的な取り組みを手掛けたこともあります。ある中学校で、京都で活躍する「U35」という若手企業家コミュニティの50人以上と子供たちが学び合う企画をし、文部科学大臣の表彰を受けることが決定しました。

また、京都市市民協働ファシリテーターでもあります。これは「つなげる30人」理事の野村さんがプロデュースしている「市民協働ファシリテーター研修」を受講した職員が認定され、セクションの壁を超えて動けるようになるという制度です。

日比谷さんのお話とても勉強になりました。つながるとはどういうことか哲学したかったので、ちょうどいいお話でした。

◻️山邊:
山邊です。「佐世保をつなげる30人」の事務局です。佐世保市役所で建築の職員をしています。

日比谷さんのお話を受け、自分に何が当てはまるか考えました。以前いた部署の建築職はまさに強い繋がりで居心地が良かったのですが、他部署の人や事務職の人とのコミュニケーションは違いました。役所全体にアットホームなコミュニケーションが取れる人たちがもっと増えればいいなと思います。

コミュニケーションコストをコストと思わず、楽しみと捉えて活動していきたいです。

◆加生:
京都市市民協働ファシリテーターの話がありましたが、佐世保にも特殊な制度がありますよね。

◻️山邊:
はい。業務時間の20%を自分が関心あることに使える制度を試行錯誤中です。本来は職務専念義務により、配属された職場以外の業務はできません。私は以前は空き家の部署にいましたが、異動後その業務ができなくなってしまいました。せっかく空き家対策を学んだり関連不動産とつながりができたりしていたのに、手放さないといけないのが勿体無いと思い提案しました。

全国的に業務改善や効率化が言われる中、担当業務しか見ていないのは勿体ないと思いました。どうしたらクリエイティブな時間が作れるか考え、Googleの「20%ルール」を参考にしました。ちょうど業務改善の提案をできる機会があったので、新たに踏み込んで提案をしました。

参加者A:
行政は堅牢性やフェアネスを守るために新しいことをしにくいですよね。法の解釈や制度の解釈次第で何でもできるのに、解釈を固くしている故にできていない事がたくさんあると思います。そして、それをどこまで良しとするかは、首長や中にいる方々のスタンスで大きく変わると思います。これが良い前例になるといいですね。

「つなげる流儀」

Open & Share 〜縁側(テラス)・ワクワク感・かさなり〜

◼️山﨑:
私の流儀を3つの視点でお話します。

1つ目は「縁側(テラス)」です。縁側は内と外をつなぐ曖昧な場所です。心に縁側を持つには、自分が知らないことを寛容に受け止める心の余裕が必要です。だから、それと対局的な「忙しい」は言わないようにしています。

2つ目は、「ワクワク感」です。まずは自分にワクワク感がないと自分事にならないし、内発的動機も生まれにくいです。内発的動機だけではスケール化しなかったり、組織的な行動にならなかったりするので、内発的動機と外発的動機を一緒に考えることも大事です。

3つ目は、「かさなり」です。つながりから様々なものが生まれるためには、点と点が結ばれることだけでなく、線と線が重なり合って太い線になるというイメージで考えます。心の縁側の戸が空いていてシームレスな状態にあることが最低条件で、暗黙のルールや規範の違いを理解して共通言語化する事が大事だと思います。

◇日比谷:
今でも迷ってることやモヤモヤすることはありますか。

◼️山﨑:
自分が何者なのか言語化できていません。普段仕事していると、周りから「よく分からないことをやっている」「本業と違うところに力入れている」と見られていることもあります。

◇日比谷:
私も以前は同じことを言われていましたが、開き直って最もらしい説明をする場を経て自分の考えに行きつきました。山﨑さんも色々な思いと考えが熟した上で活動されているので、開き直って表で説明する機会をたくさん持つうちに言語化できるのではないでしょうか。

ロジカルに考えない

⚫︎加藤:
私はそこまで考えません。偶発性にワクワクを感じます。つながって何が起こるか分からないからこその楽しみを皆に味わって欲しいです。あと、そこまで責任持ちません。つながった後どうなるかはその人達次第です。私の知らないところでまた出会って深くつながっていけば良いと思います。最初のきっかけを作ったら後は当人同士にお任せして、首を突っ込まないのが私なりの流儀です。

◆加生:
山﨑さんとのコントラストが面白いです。お互いに良い刺激かもしれませんね。

みんなでハッピー

⚪︎森田:
人は財産だと思うので、つなぐ時も無責任にはできません。皆でハッピーになるために、どんな人とつながりたいかを皆でシェアして、おつなぎします。つないだ後に自分から離れた時には深追いしたくないので、今日の日比谷さんの話で再確認しました。つながった後みんなでハッピーになれると確信できる時に、つなげる活動がしたいです。

人類みな兄弟

◻️山邊:
言葉の意味そのままです。佐世保は都会と比べて弱い繋がりが出来やすい規模で、出会った時に絶対なにかしらの共通点があります。既に弱いつながりがあるので、そこから生まれる機会があればいいなと思っています。


ゲスト・参加者同士の対話

 参加者B:
繋がる意義を考えた時、時間に余裕がない人の場合は特に「三方よし」がいいなと思っていますが、コミュニティとビジネスの境目はどこだろうと思いました。忙しい人の時間を搾取することは凄く申し訳ないことだと思います。皆さんのコミュニティとビジネスの基準をお聞かせください。

⚫︎加藤:
いくつかあると思いますが、まずは好きかどうかだと思います。ビジネスは好きとか嫌いとか言ってられませんが、コミュニティは好きかどうかで選択できます。

また、何が起こるか分からないのがコミュニティだと思います。ビジネスのように、結果にコミットするために出口から考えることはしないと思います。

◼️山﨑:
コミュニティは偶発的な出会いの側面が強いと思います。でも、コミュニティとビジネスの境界線が溶けてきているような気がするので、これから考えていきたいと思います。

⚪︎森田:
すごく良いテーマであり、難しいテーマでもあると思いました。議員の時、地域のコミュニティは無償で一生懸命やって当たり前という半強制状態がありました。そうやって投げ込まれた無償ボランティアは決してビジネスにならないしお金も生み出しません。だから、コミュニティとビジネスが1つになると理想的だと思いました。

◻️山邊:
コミュニティの数が多いほどビジネスの可能性がある気がします。求めている側と課題解決のニーズの両方がつながっていた方がビジネスが起こるのかなと思いました。

参加者C:
山邊さんに聞きたいのですが、仲間を見つけるためにどんなことをされていますか。

◻️山邊:
色んな場に顔を出して、自分の好奇心があるところに飛び込んでいます。その時に出会った発想で、つながると面白そうな人同士をつなげたり、困り事を聞いた時につなげたりしています。

クロージング

⚫︎加藤:
初めてのメンバーでドキドキしていましたが、すごく面白かったです。皆さんの意見を聞くことで自分の意見も研ぎ澄まされました。時間が足りません。今後も交流したいです。ありがとうございました。

⚪︎森田:
このような機会をいただき、ありがとうございます。また参加したいです。それぞれの地域によって色んな特性があると思いますが、その中に流儀やテクニックが潜んでいると思いました。ありがとうございました。

◼️山﨑:
加生さんからコントラストという言葉がありましたが、今回それを狙ってあえて理屈っぽく話しました。初めてお会いした方々とお話し出来て良かったです。この縁を大切にしたいです。今後もよろしくお願いします。ありがとうございました。

◻️山邊:
慣れない新しい機会で、学びも気づきも多くありました。自分の地域でも活かしたいです。引き続きこのメンバーと絡みたいです。よろしくお願いします。ありがとうございました。

最後に

◆加生:議論し尽くせていない部分がありますが、今後も対話を通じて研究と交流を続けたいと思います。

次回は2月7日、プロデューサースペシャルです。「つなげる30人」を現役で回している主催者や事務局の方々をお招きします。渋谷から、Shibuya City FC事務局長の畑間さん。京都から、主催企業 Slow Innovationの内さん。広島から、広島県観光連盟でエグゼクティブプロデューサーの山邊さんです。インスピレーショントークは、事務局の島本さんにしていただきます。企業目線で見た「つなげる30人」のロジックを話していただきます。楽しみにしていてください。

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