【横浜をつなげる30人】「覚悟を持って多様性を取り入れると、新たな可能性が萌芽する」サステナブルブランド国際会議2022横浜の現場から
「横浜をつなげる30人」のメンバーが、サステナブルブランド国際会議2022横浜に登壇しました。多様性を有するコミュニティからいかにイノベーションを生み出すのか?そのヒントを探ります。
パシフィコ横浜で2月24日に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」に、「横浜をつなげる30人」メンバーで1期生の品川優さん、加藤優子さん、そして2期生の櫻井怜歩さんが登壇しました。
「多様な⼈材が集うコミュニティから イノベーションを⽣み出すには?」というテーマでパネルディスカッションが行われました。多様性あふれるコミュニティが生み出す価値や課題について、「横浜をつなげる30人」メンバーであり、様々な形でコミュニティ作りに関わる3名の視点で議論が繰り広げられました。
登壇者紹介
品川優さん:株式会社An-Nahal 代表取締役社長/「横浜をつなげる30人」1期生
加藤優子さん:コクヨアンドパートナーズ株式会社 サービス開発部ワークスタイル創出グループ サービスマネージャ/「横浜をつなげる30人」1期生
櫻井怜歩さん:G Innovation Hub YOKOHAMA ディレクター/リスト株式会社 CSR推進チーム 主任/「横浜をつなげる30人」2期生
サステナブル・ブランド国際会議2022横浜とは
サステナブル・ブランド国際会議は、世界中で活躍するサステナビリティのリーダーが一同に介するコミュニティ・イベントで、世界各国で開催されています。
今回パシフィコ横浜を会場に開催されたサステナブル・ブランド国際会議2022横浜では、「REGENERATION」をキーワードに、「ビジネスのあり方を変革し、より豊かな環境や社会、経済を生み出していくには?」をテーマとして、バラエティ豊富なトークセッションやワークショップが開かれました。
新たなムーブメントを生み出す「街の同級生」
品川さん:「横浜をつなげる30人」のコンセプトは、「街の同級生をつくろう」。実際に参加してみて、その関係性の構築に関する思い出であったり、自身の活動に与えた影響はありましたか。
加藤さん:「横浜をつなげる30人」というプログラムで絶妙だな、と思うポイントは、企業など組織の一員としてだけではなく、横浜に住む一個人としての視点でも参加できたところです。横浜で人との繋がりを作ろうと一歩踏み出して参加してみると、いろいろなバックグラウンドの人と、全く利害関係なしで出会うことができました。心理的安全性の高い環境だったのが私にとって大きかったですね。
櫻井さん:課題意識が同じものに対して各プロジェクトが取り組むので、所属を越えて1つの目標を目指す仲間と出会えました。一度一緒に取り組んだ仲なので、他のプロジェクトを今後するときにも気軽に声をかけられるようになり、ああ、ありがたい機会だったな、と。
品川さん:マイペースに取り組む人もいれば、誰かが頑張っている姿をまずはサポートしようという人もいて、本当にクラスのような雰囲気がありますね。所属や肩書等の垣根を越えて、お互いのリソースをうまく活かしていける関係性ができているかな、と思います。
多様性を軸にサステナブルな事業を生み出す
品川さん:フラットな関係性や心理的安全性の高さが土台にあっても、それらを事業に結び付けられなければ【お遊びクラブ】の枠に甘んじてしまいます。そのような状況に陥らずに「横浜をつなげる30人」ではどのように、事業創出へと繋げているのでしょうか。
加藤さん:私は仕事でシェアオフィスやコワーキングスペースの運営や立ち上げを行っています。そういった普段のお仕事や「横浜をつなげる30人」の活動の中で、自分とは異なる価値観を持つ人と出会えることが非常に刺激になっています。だからこそ、新しいものに出会った時のワクワク感や刺激をコワーキングスペースの利用者の方にも体験してほしい。コーヒーについてみんなで探求したり、横浜にある飲食店と協働でイベントを開催したり。かといってただのお遊びクラブではないので、例えばコロナ禍でどうやってビジネスを回しているのかをお話いただくことで、自身のビジネスに生かせるヒントを得られたらいいなと思っています。
櫻井さん:私も多様な視点をもつことで、事業創出につなげることを意識していますね。例えば、私は関内エリアを拠点にした『みらい創造マラソン』というプログラムにも関わっています。この取組は、関内に住む参加者が地域のことを知って、どんなサービスやアイデアが生まれたらいいかを話し合うプログラムとなっています。小さなお子さまから商店街の方まで多様な方々が協力してディスカッションを重ねているのですが、このように地域で多様な視点を持つ方が同じテーブルで話し合いを続けていくことが、持続的にビジネスを生む仕組みになるのではないかな、と考えています。
品川さん:多様な視点は本当に大切ですね。私も1期生の時に、全く違うバックグラウンドを持つ6名で『多文化協働』をテーマとしたチームを結成しました。横浜にはたくさんの外国人が住んでいるのに、なかなか接点がない、ということに問題意識をもったメンバーが集まって課題について話し合う中で1つの事業が生まれていきました。お互いが持つリソースを話し合う中で、私が代表を務める株式会社An-Nahalとしてはコンテンツ作りや当日のファシリテーションができるし、チームメンバーの加藤さんは地域との豊富な繋がりを生かして多様なゲストスピーカーを招待できる。一社だけではできないことをサポートしてくれるチームで事業を進めることができたのは大きかったです。
品川さん:みなさんいろいろなプロジェクトに関わる中で、いつの間にかなくなるものと続いていくプロジェクト、どちらも見てきたと思うのですが、このふたつを分ける「違い」はなんだと思いますか?
加藤さん:プロジェクトを進めていく中で、どうしても自分だけではできないことも出てきます。そういった時にいかに周りの人を巻き込めるか、自分だけが孤軍奮闘で頑張る状況にしないことが、続けていく上でのポイントだと考えています。
品川さん:確かにそうですね。加藤さんのお話を聞いていて、他者を巻き込む力と、最後は手綱を握るリーダーシップ、どちらも必要だと思いました。所属を越えていろいろな人が集まっているコミュニティだからこそ、最後の部分では、たとえみんながプロジェクトから離れたとしても1人でもやり遂げたいと思える存在の人がいるかいないかは大きいと思います。そんなリーダーが生まれやすいような心理的安全性と、みんなが持てるリソースを惜しみなくギブしあえるコミュニティが必要ですね。
「名ばかり」から真のオープンイノベーションへ
品川さん:産官学、それぞれのセクターの人たちが集まり、実際にオープンイノベーションを起こし続けるためには、どんな工夫が必要で、またどんな課題があるのでしょうか。
櫻井さん:異なるセクター同士の協働を考えるとき、「攻めと守りのバランス」は、難しいながら重要だなと思っています。コミュニティを見守り支えていく事務局側がどれだけ柔軟に対応できるか、何かがあっても調整できるような状態をキープしておけるかが、バランスを取る上で非常に重要になってきます。
品川さん:先を見越したリスク管理と、その上での最大効果を現実的に見て、柔軟に対応できるよういろんなオプションを出しておくことはとても大切ですよね。
櫻井さん:プランA、プランB、とリスクヘッジできる選択肢を出しておけば、何かが行き詰まった時でも、それならばこうしようと良い方向に議論を進められます。
加藤さん:オープンイノベーションを促進する上で「コミュニティの流動性」も大切なテーマになってくると思います。コミュニティは生き物です。中にいるのが人である以上、流動的で変化し続けるものであることを大前提として捉え、思いもよらない変化やハプニングに直面してもポジティブに楽しむことが大切です。
品川さん:コミュニティの流動性について、「横浜をつなげる30人」の課題に照らして考えてみると、所属意識や繋がりを担保しつついかに内輪感を打破できるかということが大事な気がします。熱量の高さを保ちつつ、どうすれば外の人から声をかけてもらったり、入りたい(入りやすい)と思ってもらえる空気感を作れるかの、バランスが難しいですよね。
加藤さん:そうですね、興味を持ってくれた人がすぐにでも扉を叩ける空気感は大切にしたいです。もっと、「横浜をつなげる30人」のようなコミュニティで活動している私たちのワクワク感や楽しさを発信していきたいですね。
品川さん:「横浜をつなげる30人」の発起人である横浜市立大学准教授の芦澤先生のエピソードで素敵だと思ったことがあります。事情があってプロジェクトに途中から参加できなくなった人がいたんですが、そういった方に対しても『いつでも戻ってきてください』と言うスタンスで接しているんです。こういったゆるい繋がりを切らずにKeep in touchしつづけるコミュニケーションが事務局に共有されていると、出入りもしやすいのかな、と思いますね。これは一つのマインドの例ですが、オープンイノベーションを目指し異なるバックグラウンドを持つメンバーが集っても、適切なチームビルディングを怠ると形骸化してしまいがちです。名ばかりの活動から一歩前進するためには、こうした意識のあり方がメンバーの一人ひとりに必要になると思いますね。
イノベーションを起こすコミュニティを築くために
品川さん:異なる価値観や主張を持つ人材が集まると、進行がスムーズにいかなかったりコミュニケーションしていく上で時間がかかる場面にも遭遇することがあると思います。多様な人材で構成されたコミュニティが本当に価値あるイノベーションを生み出すことにつながるのでしょうか、またそういった多様な個性を活かすことはできるのでしょうか。
櫻井さん:どのコミュニティにも、それぞれ目的や方向性があります。例えば、「横浜をつなげる30人」の場合は「いつでも戻ってこれる同級生のような関係性」が目指す姿なのかもしれないと思いました。そういった目的や方向性を、事務局がしっかりと考えてコミュニティの文化づくりをリードしていくことが、イノベーション創出につなげていく意味ではすごく重要だと考えています。
品川さん:なるほど。先ほどから櫻井さんから何度か「事務局」という言葉が出てきていますが、櫻井さんにとってあらためて事務局とはどういうものですか?
櫻井さん:コミュニティに参加する人と、コミュニティを運営する人は別だと考えています。コミュニティが生き物であるからこそ、状況を把握して、コミュニティをリードしていくのが事務局の役割かなと思っています。
加藤さん:そうですね、私も今、「横浜をつなげる30人」第2期の事務局に携わっているのですが、つくづくコミュニティは生き物であり、生ものだと感じています。鮮度が大事なコミュニティでは、イノベーションはあくまで結果にすぎません。事務局の役割としては、何かしら動き続け、発信やアウトプットを通して新しい風を取り込み、空気を循環させることが大事だなと思っています。
品川さん:ありがとうございます。コミュニティの文化づくりをリードする事務局側も、本気だとわかってもらうために発信し続けることに加えて、覚悟を持って多様性を取り入れる、ということは大切なポイントとなりそうです。気づけば同質性の高いコミュニティになってしまっていたというのではイノベーションは生まれなくなってしまうと思うので、常に声をかけやすい人にだけかけていないか自問し、自分達が取り入れたい新たな遺伝子を覚悟を持って取り込む行動が鮮度を保っていく上では必要だと思いました。
多様性を楽しみイノベーションの源泉へ
今回のパネルディスカッションでは、クロスセクターで進行するプロジェクト「横浜をつなげる30人」で一緒に活動している3名の視点から、多様性を取り入れたコミュニティの価値やイノベーションを創出していく上での課題が十分議論される場になりました。
「違い」と感じるものは、自分が未だその考えに触れていないから異質に感じられるだけであり、他者とのコミュニケーションの中で互いの違いを発見し影響し合えるのが、異なる文化やバックグラウンドを持つ人々が集うコミュニティに参加することの醍醐味なのではないでしょうか。そして、そうしたコミュニティを支える存在に必要なのは、活発な働きかけと覚悟を持って多様性を包摂することであり、そうした多様性に富むコミュニティからは、新たなイノベーションや事業創出の芽がきっと生まれていくはずです。不確実性が高まる現代において継続的にイノベーションを生み出していくには、「多様性を生かす」ことの重要性がますます高まっていくことが感じられるトークセッションとなりました。
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