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【「地域をつなげる力研究会」Vol.8 イベントレポート】〜ローカル・ゼブラ企業創出のために必要な事は?〜

「地域をつなげる力 研究会」とは?

一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)

この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。

今回は、2024年7月3日(水)に開催された第8回目の内容をレポートします。

ゲスト

陶山 祐司氏
Zebras and Company共同創業者

(1)長期志向で、(2)ステークホルダー全体へ貢献し、(3) 社会性と経済性を統合的にマネジメントするゼブラ経営の普及に尽力。
昨今では、ビジネス領域から範囲を広げ、特に非営利(フィランソロピー)・行政・政治の経営の変革にフォーカスし取り組みながら、クロスセクターで領域横断的な協働を進めている。元々は経産省でエネルギー政策、電機産業政策を担当。その後、VC/新規事業コンサルとして、宇宙開発ベンチャーの100億円超の資金調達などを支援した。

田中 苑子

Zebras and Company

2016年慶應義塾大学美学専攻卒。株式会社アカツキでの事業企画・PMや新規事業開発、株式会社コーポレイトディレクション(CDI)での経営コンサルティング等を経て、2023年10月よりZebras and Companyに入社。人や自然の「共生」のあり方を模索中。登山とピアノがライフワーク。

全国各地から集まった地域リーダーや企業家たちが一堂に会したこの日のイベントは、「ローカルゼブラ企業の創出」をテーマに掲げ、地域ごとの特性を活かした持続可能なビジネスモデルをいかにして創り上げるかについて、深く議論する場となりました。集まった参加者たちは、それぞれの地域で抱える課題と、それに対するゼブラ企業のアプローチについて、具体的な事例や戦略を共有しました。

ゼブラ企業とは

「ゼブラ企業」とは、2017年にアメリカで提唱された概念であり、時価総額を重視するユニコーン企業と対比させて、「社会課題解決と経済成長の両立を目指す企業」を、白黒模様、群れで行動するゼブラ(シマウマ)に例えたものです。

昨今では、地域経済の新しい担い手としても注目をされてきており、地域内企業等と協業しながら、新たな価値創造や技術の活用等により、社会的インパクトを生み出しながら、収益を確保する企業を「ローカル・ゼブラ企業」と位置づけています。

中小企業庁では、「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を今年3月に策定し、ローカル・ゼブラ企業や地域課題解決事業の重要性、多様な関係者との協業を実現し、必要な資金や人材を確保するための考え方や、社会的イン
パクトの可視化の重要性をまとめました。

※上述の中小企業庁「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」より抜粋

今回は、この基本方針やローカルゼブラ推進の政策に携わっている株式会社Zebras and Company 共同創業者の陶山さんと、同社の田中さんをお招きし、特に「ローカルゼブラ企業」の概論や、そうした企業を育てていくエコシステムを創出していくために必要な事などについて対話しました。

地域固有のニーズを理解する

まず最初に「ローカルゼブラ企業を創出するためには、まず地域が抱える固有の課題を理解することが不可欠です」と強調しました。「例えば、ある地域では少子高齢化が深刻な問題となっており、その地域においては、介護サービスや高齢者向けのビジネスが重要な役割を果たすかもしれません。また、別の地域では観光業が衰退している場合、その復活を目指した取り組みが求められるでしょう」と述べ、地域ごとの課題に応じたアプローチの必要性を訴えました。

続けて「私たちはまず現地に足を運び、地域住民や地元企業と対話を深めることから始めるべきです。その対話を通じて、彼らが本当に必要としているものを見極め、それに応じたビジネスモデルを構築するのです」と具体的なアプローチを提案し、地域に根差したアプローチの重要性を改めて認識しました。

さらに、実際のプロジェクト例を挙げ、「例えば、私たちが取り組んだ山間部の小さな町では、若者の定住を促すために、地元の食材を使った新しい飲食店を立ち上げました。この飲食店は、地域の特産品をPRする場としても機能しており、観光資源の開発にも繋がっています」と述べ、地元の特性を活かしつつ、持続可能なビジネスを創出するための一例として紹介されました。

小規模な実験から始める

次に、小規模な実験を通じて成功例を積み重ねる戦略の重要性について語りました。「ローカルゼブラ企業を創出する際、最初から大きなプロジェクトを立ち上げるのはリスクが大きいです。私たちは、まず小さな実験を行い、その結果を見てから次のステップに進むべきです」と指摘しました。

さらに、塩尻市での行った地元の農産物を使った新製品の開発の具体例を紹介し、「最初は、小規模な市場でテスト販売を行い、その反応を見てから販路を拡大しました。この方法は、リスクを最小限に抑えながら、地域のニーズに応じた製品を開発するための効果的なアプローチです」と述べました。

既存企業のゼブラ企業化

さらに、既存企業をゼブラ企業化するアプローチについても触れました。「新たな企業を立ち上げるだけでなく、既存の企業をゼブラ企業化することで、地域全体に持続可能な成長をもたらすことが可能です。例えば、地域に根付いた伝統的な企業が、環境に配慮した新しいビジネスモデルに移行することが、地域のブランド力を高める一助となります」と述べました。

さらに、「既存企業がゼブラ企業化を進める際に、私たちが提供できるサポートとして、ゼブラ企業化に必要なノウハウや資金調達の支援を行うワークショップの開催が考えられます。また、地域の大学や研究機関と連携して、最新の技術や知識を企業に提供することも重要です」と話しました。

さらに「私たちの地域では、地元の製造業がゼブラ企業化を目指して、新たなエコフレンドリーな製品ラインを導入しています。このプロジェクトでは、地元の大学と協力して、環境に配慮した製造技術を開発し、それを既存の製品に応用することで、持続可能な成長を実現しています」と述べ、このアプローチの成功事例を紹介しました。

ローカルゼブラ企業の未来

最後に、ローカルゼブラ企業の未来について語りました。「ローカルゼブラ企業は、地域の未来を切り開く鍵です。これからの時代、地域ごとの特性を活かした持続可能なビジネスモデルが求められます」と述べました。続けて、「私たちは、地域のリーダーとして、地域のニーズに応じたゼブラ企業を次々と創出し、他の地域へも広げていく必要があります」と強調しました。

また、「成功例を他の地域と共有し、学び合うためのプラットフォームを構築することが重要です。これにより、ローカルゼブラ企業が全国に広がり、地域ごとの持続可能な成長が実現するでしょう」と未来への展望を示しました。

これに対し「私たちは、地域の成功例を共有するためのオンラインプラットフォームを立ち上げることを考えています。このプラットフォームでは、各地域での取り組みや成果を発信し、他の地域でも同様のモデルを実践できるようサポートしていく予定です」と具体的な計画を述べました。

さらに、「今後、ゼブラ企業を立ち上げる際には、地域の若者や新しいビジネスを始めようとする起業家を積極的に支援するプログラムを展開することも検討しています。若者たちが地域に留まり、地元の課題解決に貢献することが、地域の持続可能な成長につながると信じています」と話しました。

このようにして、参加者たちはローカルゼブラ企業の未来について、具体的なアクションプランと共に熱く議論しました。各地域で実践されている具体例やアイデアが共有され、参加者たちはそれぞれの地域に戻り、このビジョンを実現するために動き出すことを誓いました。

この日の議論を通じて、ローカルゼブラ企業の創出に向けた具体的な戦略が共有されました。

地域固有のニーズを理解し、小規模な実験を通じて成功例を積み重ねること、既存企業のゼブラ企業化を進めること、そして成功事例を広く共有するためのプラットフォームを構築することが、持続可能な地域社会を実現するための鍵となることが確認されました。参加者たちは、このビジョンを持ち帰り、それぞれの地域で実践に移していくことを誓い合いました。この会合は、地域の未来を切り開く第一歩となるでしょう。

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