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「1人のミライストとして挑戦し続ける」イノベーション推進を手がけるチーム・ミライストが目指す越境文化とは

「横浜をつなげる30人」1期生発のイノベーション創出プロジェクト、「ミライスト」のメンバーによる対談が行われました。ミライストが目指す越境文化の本質や、1期活動終了後も継続できている秘訣をレポートします。

「人が自由に所属組織を越えて地域課題解決のために協働(=越境)できる文化を横浜に根付かせたい」

「横浜をつなげる30人」1期生としての活動終了後も、考案したプロジェクトを深化させ続けているチームがあります。異なるスキルを持った人材が組織間を滑らかに行き来できる仕組みを手がけ、横浜発のイノベーション創出を志すチーム「ミライスト」です。

3月8日(火)夜には、課題を持ち込んだアジェンダオーナーに対して、色々な背景を持つ参加者がアイデアを出し尽くして課題解決に貢献するオンラインイベント「ミライストラボ」を開催。イベント終了後の熱も冷めやらぬタイミングでミライストのメンバーにインタビューを行い、1期生としてのプログラムが2021年6月に一区切りしてからもなお、1年近く精力的にエネルギーを保って活動し続ける原動力や、今後の展望について話を伺いました。

~話を聞いた3人のプロフィール紹介を掲載~

〇磯田絵理香(横浜市役所市民局)
〇高野俊行(日揮ホールディングス株式会社)
〇田中多恵(NPO法人ETIC.)

ミライストとは

ミライストは、「横浜をつなげる30人」の1期生によって結成された、イノベーションの推進を手がけるチームです。イノベーションは「新結合」と訳される様に、既存のアイデアとアイデアが重なり合う事で生まれます。その視点で見ると上の図のように、横浜は、研究機関や大学の集積、文化の成熟、地域課題の多様性、等イノベーションを起こすうえで、大切な素地が整っています。あとは「人が自由に組織を越境して働く文化」が根付けば、横浜発のイノベーション誕生はもっと加速するのではないか。ミライストのメンバーはそんな仮説を持っているのです。

ミライストの取り組みの中でもミライストラボは、ある組織やチームが抱える悩み事をブレスト(参加者が自由にアイデアを出し、解決策を見出すディスカッション手法)を通して課題解決の糸口や協働のきっかけを生み出すイベントです。

3月8日に開催されたラボでは、横浜市18区で健康の指標が低かったことで危機感をもった某区福祉保健課のお題で「働き子育て世代(30〜40代)の身につく運動習慣」、同じく横浜市の知財担当部署による「著作権の切れた史料の利活用方法」、横浜で新プロジェクトを準備している個人提案の「子ども達の発想で大人の月曜日を楽しくする!」、みなとみらいの大企業発で事業課題を持ち込んだ「持続可能な航空燃料を日本で安定的供給する為に何が必要か」の4つをお題として、参加者が「とにかく」アイデアを出し、横浜の地域課題解決やプロジェクトの応援を目指し、白熱したブレストが繰り広げられました。

【対談】プロジェクトが続く原動力はなんですか?

写真は、昨年試験的に実施した「ミライストキャンプ」のプロトタイプ実施の様子

Q.初めに、ミライストメンバーが現在構想している取り組みや今後の展開について紹介してもらえますか?

高野さん:人と人がつながり、横浜からイノベーションが生まれるための素地を創ることがミライストのビジョンです。このビジョンを達成するために考案した3つの取組が、ある組織と組織外のスキルを持った人材が協働して半年~1年程度の期間、協働プロジェクトを行う「ミライストギルド」、3ヶ月間の課題発見プログラム「ミライストキャンプ」、そして今回開催したイベント「ミライストラボ」になります。ミライストラボはこれまでに3回、開催していて、ミライストキャンプは昨年7月から10月にかけて、試験的に実施をしていました。

Q.これまでの活動を振り返ってどんな感想や手応えがありますか?

高野さん:元々は副業等、多様な働き方が広がる中で、横浜でも組織の枠組みを超えて気軽に越境してガチで仕事でコラボする仕組みを作れたらいいな、というイメージで始めました。最初は抽象的なイメージでしかなかったのですが、このテーマに賛同して集まったメンバーと話し合いを重ねていくうちに予想だにしなかったアイデアがボンボン出てくるんですね。1人で考えていたらこれだけ良い形には絶対なっていなかったし、メンバーに恵まれたな、と。本当に感謝してます。

内容自体に関しては1年以上議論を重ねてきたこともあって、手前みそですが効果がある内容に仕上がっているのではないかと実感しています。ラボでいうとイベント終了後に、「参加してよかった」「開催してくれてありがとう」との声をいただけるようになったんですね。キャンプは、昨年コロナ禍で経営シフトが必要な市内中小企業の経営者の方を対象に、3カ月ほどミライストメンバーが伴走して、BtoCビジネスの展開可能性を考えたりアイデアを出したりするサポートを行い、とても感謝されました。自分の目の前に、楽しんでくれている人がいるのが意欲高く続けられる秘訣だと思います。

田中さん:「横浜をつなげる30人」のDay2で、30人それぞれがこのプログラムでやりたいことをピッチしていく時間があったのですが、その時にトッティさん(高野さん)と席がとなりで。私が考えていることを先に言われた!と思ったのを覚えています。そのくらいトッティさんが発表した内容は私もここ横浜で絶対やりたいと思っていたことだったんですね。ですがミライストメンバーは共通のビジョンは持ちつつも、大切にしていることや視点は少しずつ違っていて、大企業の人材が越境できる機会をつくりたい人や、社会・地域課題を多面的な人材による協働で解決したい人など、様々な想いを持った人がミライストチームにはいて、毎週のように議論を重ねるうちにベクトルが合っていった印象です。

楽しい。だから続けられる

Q.1期生のプログラム終了後も活動が続いている原動力はなんでしょう?

磯田さん:私は横浜市の職員なのですが、行政の立場からもイノベーションの必要性を日々目の当たりにしています。課題が複雑化する中で、いろんな人と繋がって新しいものを生み出さないと、抱えている地域課題も絶対解決できないんです。イノベーションを起こす時に欠かせないのが、心理的安全性があり、ラフに考えられる雰囲気。ミライストラボではそんなラフな雰囲気でアイデアを出せる仕組みがあるので、継続できるという可能性を感じます。そして何より自分自身が楽しいから続けられているんですよね。

高野さん:楽しいですよね。仕事でもタスクでもなく、このメンバーでいろんなことをやってみたいというのがモチベーションになってる。ミライストメンバーがふらっと集って雑談が始まるカフェをやりたいなんて案もありますし。

田中さん:ミライストにとってターニングポイントだったな、と思うのが、1期の最後に一人ひとりに対してリスペクトできる部分や、頑張ってほしい部分を共有する「照れワーク」でした。あれをやってまた、チームの関係性が深まりましたね。

1期終了後はそれぞれの事情で卒業されるメンバーもいました。今も活動している5人はこのチームで継続的にビジョン実現のために活動していきたいと思っている人たちで、だからこそPDCAをスムーズに回している感覚があり、それが心地良いリズムになっています。

磯田さん:照れワークの他にも、目標がフワッとしていた時期に、お互いの大切にしている視点や目指すものを本気で話し合う機会を設けたことがあって。そこでも本音ベースで話せる皆さんだと再確認できたし、そうした心理的安全性がすでにチームの中にあったのは大きかったです。私も仕事が繁忙期で忙しくなった時は一度、完全に離脱していたのですが、いったん落ち着いて復帰しようと思った時にすごく声をかけやすかった。そういったラフさや正直でいられるところがミライストの特長かな。

高野さん:新しいものをつくる時に、その想いがある人だけでは回り切らないんですよね。想いはあくまで最初のトリガーであって、そこから大きな渦を巻き起こしていくプロセスが必要になる。ミライストのメンバーには横のつながりが広い人がたくさんいたので、周りの人を巻き込み、渦を大きくしていけたから続いているんじゃないかなと。

街の同級生として出会えた「横浜をつなげる30人」

Q.「横浜をつなげる30人」というプログラムだからできたこと、このプログラムで出会えて良かったな、と思うことはありますか?

高野さん:プログラムを運営するSlow Innovationの加生さんが築いた「何を話してもいい雰囲気づくり」という仕組みが良かったですね。そのレールに乗せてくれたおかげで、スタートがきりやすかったです。

田中さん:普段、NPOの人間として大企業の人と会うと、肩書を見てかしこまってしまう時があるのですが、「横浜をつなげる30人」では役職や肩書きに関係なく街の同級生として会えるところに絶妙な良さがありますよね。

高野さん:街の同級生、良い言葉だね。確かにプログラム中は1人の人間として接するから、お互いにメンバーの年齢を知らなかったりする。

磯田さん:「つなげる30人」って誰のことも否定しないプログラムだと参加しながら感じています。イノベーションを起こそう!というメッセージと、それに共感して集まってきた人たちがかけ合わさって、それぞれの気持ちを大事するプログラム作りがされていると思います。

田中さん:誰も我慢していないのがすごいですよね。最初は全然違うことを考えていても、みんながやりたいことだと思えるようになる雰囲気が流れています。

ミライスト第1号として、バトンをつなぐ

Q.最後に、ミライストでこれから挑戦したいことがあればお聞きしたいです。

高野さん:やっぱり越境する文化をつくっていきたい。ラボやキャンプをコツコツとやって、いつかはギルドを仕組みとして確立することで、越境が自然に行われる未来になったら嬉しいかな。

田中さん:ミライストのメンバーはそれぞれ本業をこなしながらプロボノ的に活動しているので、どうしてもできることには限界があります。でも、越境文化を横浜に根付かせていく上では、現役で本業持ちながらビジョン実現に向けて動いているミライストの存在は貴重なんじゃないかな。

トッティーさんも言っていたように、まずはキャンプを成功させ、実績を積み重ねることでギルドへの弾みにしたいですね。長い目で見て、人材がオフィシャルに組織間を行き来できる社会にするために、キャンプを形にすることは重要だと思っています。

磯田さん:ミライストは仕事で得られない経験やつながりをもらえる活動で、自分にとっても、文化をつくる意味でも、この貴重で楽しい活動をゆるくでも続けていくことが重要だと思っています。

あと私個人としては、行政からの参加をもっと得られると良いかなと思ってます。仲間を増やしてより良い文化を形成するために、模索しながらですが、フランクに人を巻き込める仕組みを作っていきたいです。

田中さん:ミライストのようなソフトパワーを活用していくのがこれからの行政には求められるし、その新しい社会実験のフロンティアに立っている自負が私たちにはありますね。仕事だから、お金がもらえるから、ではないシビックプライドを体現する存在が、これからの街には必要になってくると思います。

高野さん:越境する、に限定すれば、ビザスクとかすでに仕組みはあるんだけど、彼らは文化をつくるというファンクションは担っていなくて、その点でミライストは文化をつくることを目標にすれば違った動き方ができるよね。

磯田さん:私たち自身がミライストなんです。第一号として私たちが挑戦することで、次のミライストが誕生するために何をすれば良いかが見えてくる。これからも人と人、組織の媒介役として価値を生み出していきたいです。

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