割り箸がたまっていく

割り箸がどんどんたまっていく。正確には、使い捨てのフォークやスプーンなども、数が増えていく。コンビニなどで食べ物を買うとついてくるあれである。

割り箸はいらないです、と会計時に断ればよい。まさにその通りだ。そうして割り箸やフォーク、スプーンなしで買い物を終えることもある。だが、ぼんやり考え事などをしていて(実際、コンビニで買い物をしているときは何か考え事をしていることが多いのだ。なぜだろう?)、そのまま会計に進むと、往々にして断りを入れるタイミングを逸してしまい、気づいたときには店員が割り箸を手にしている、ということになる。さて、ここで満を持して「割り箸いらないです」と声をかけてもいい。しかし、店員はすでに準備を進めているのである。そんなタイミングでいらないなどと言われたら、どんな風に感じるだろうか。いらないならもっと早く言ってくれればいいのに、と思うかもしれない。会計待ちの列を早くさばきたいのに。そもそも待ち時間に財布の準備くらいしておいたらどうだ、時間のかかる客だなー。待て待て、家にはもう十分な数の割り箸がある、これ以上は無駄だ。まだ断るには遅くない、いやしかし、と逡巡しているうちに、割り箸はビニール袋のなかにしっかりと収まっている。こうなってはもう手遅れである。こうしてめでたく、我が家の割り箸コレクションに新たな収蔵品が加わることになる。

また断るタイミングを逃してしまった、と思いながら店を出るときの足取りはほんの少し重い。こんなことではいけない、自分の要求をきちんと通していかないと、肝心なところで大事なものを守れなくなるぞ、そもそも一事が万事こんな調子で、これまでだっていろんなことが手遅れになってきた、と話がだんだん大きくなってくる。

それでも歩いているうちに気を取り直して、まぁ次は早めに断りを入れよう、それに余りすぎた割り箸だって災害時には重宝するかもしれない、良い面だってあるじゃないか、と考え出す。そうして忘れたころに、同じような状況がやってくるのである。

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