鈍い痛み

例えば道を歩いていて、ふと目の前の梢に視線が引き寄せられる。あるいは、無数の建物の織りなす直線と曲線が何かを語り始めたように思える。そんなとき、心のどこかにズキンと鈍い痛みが走る。その痛みを確かめながら、僕はおそるおそるカメラやスマートフォンを取り出す。

ずいぶん前から、自分はもうこの世にいないのではないかと思うことがあった。本当はずっと昔に幽霊になっていて、かつて自分が失った光を探しながら、同時にいくつもの場所をさまよっているのではないか、と。そうして、二度と取り戻せない光景を、あるいはそこから伸びる影を目にしたとき、心に鈍い痛みを感じるのではないか。

そのようなわけで、ここに上げる写真のアーカイブのひとつには Ghosts というタイトルをつけている。いつかおぼろげになってしまうかもしれないけれど、きっと目印にはなるだろうと思う。

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