牡蠣の殻が美しかった

昔から食べ物としての牡蠣が苦手で、その殻にも特段注意を払ってこなかった。ところが先日、スーパーで殻つきの牡蠣が山盛りになっているところに遭遇し、改めてしげしげと眺めてみた。様々な大きさのセルが細かな音を立てて隆起を繰り返しているようで、とても美しい。厚く塗った油彩を思わせる質感でもある。こんなに美しいものだったか、と目を開かれるような心持だった。

牡蠣の殻で最初に思い出したのは、それを用いて虐殺されたという伝説を持つ、古代ローマの女性だった。名をヒュパティアという。以前、どこかの展覧会で関連する作品を観たのに、その伝説とおおまかな時代以外は失念してしまっていたので、この機会にもう一度調べた。牡蠣と人の生活の関わりも、長い歴史を持つことがわかる。そういえば貝塚というものもあり、貝は昔から重要な食料だったのだろう。それだけ中毒も多かったかもしれないが。

牡蠣の殻で覆われた屋根がずらりと並んでいるところを思い浮かべる。ほのかに磯の香りも漂ってくるようである。

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