免許更新と西野カナ

こないだ免許の更新に行って来たんすよ。

警察の罠みたいな取り締まりにまんまとハマってしまい今回もゴールドはお預け。

定点に隠れて虎視眈々と弱者のミスを待ち、意気揚々と小銭を巻き上げるその様は、小型の肉食獣のようで。
取り締まり時のその態度たるや大型の草食獣のようで。

あなた方はこの仕事を子孫に誇れるのか？なんてことを思いながら、その権限を与えられた者はそれを行使するよなぁなんて思いながら、キッチリ数千円と違反点数を持ってかれた。


まぁいいよ。

俺も悪かった。その道を知らなかったし。

進入禁止の標識に木々が覆い被さりひとつも見えなかったけど

妖怪が出てもおかしくないくらい誰も通らなくて事故も起こらないであろう道ではあったけど

まぁ、、いいよ。

んで近くの警察署にブルー免許の更新に行く訳です。
警察に行くとなると朝から腹の具合が悪い。

元々お腹ゆるゆる系男子なんですよ。
その日の気分が腸内環境に直結するタイプ。

サクサク手続きしてさっさと帰ろうと思い手続きを済ませ、上納金を納めて。

腸内コンディションの悪さがモロに出た写真を取られる。
うん、相変わらず全国指名手配写真なの。
なんらかの常習犯。

武器を使うタイプの悪人面。
多分毒物の知識もあるタイプ。
メインウェポンはベンズナイフです。

これでいいですか？
と高橋克己似の職員に確認される。
何度撮っても手配度は下がらないと判断。

ええ。とだけ答えて講習室に入る。

20名ほどの人々はもう着座していた。
皆、一様になにかを諦めたかの様な表情。
麻雀で親の時、手牌がクソな時みたいな顔。

ああ、あなた方もハイエナに噛まれたんですね。

受講者達と不思議な連帯感を感じる。

高橋克己似の職員もまた、何かを諦めた様に講習を開始した。


うん、お腹いたい。
家出る前にちゃんとしてきたのに。
してきたよね？なのに
ここに来てちゃんとお腹いたい。

身の丈、6尺二寸の大男が、開始早々高橋克己に挙手。


はい、用便願います。


刑務所内で使われるトイレに行きたい時こういう言葉を使うとどこかで読んだ。それがつい口をついた。

いかん、これでは元受刑者の様ではないか。

受講者達との連帯にヒビが入るではないか。
僕らは被害者一同。そうだろう？

克己に手のひらだけで方向を促される。

部屋を出てまた個室に入る。

出ない。
なんも出ない。まじで。

さっきまであんなに我慢できないと唸っていたのに。
あんなに便器に会いたくて震えてたくせに。
会いに行ったらこれだもん。

俺のお腹は西野カナなのカナ？
だったらトリセツが欲しい。

諦めて講習室に戻る。

交通事故被害者家族が涙ながらに無事故を訴えていた。
こういうビデオって絶対遺族のシーンでテンション下げにくるから苦手だ。

皆、他人の通夜に来たような空気。

事故は起こしては行けない。

遺族はその一言を長く、永く訴え続けていたころ
僕の西野カナが再び震え始めた。

あれー、なんで？wだってカナちゃんさっきうんともすんともうんこも言わなかったじゃんw
カナちゃんメンヘラなの?w怖いwあ、イテェwwwwちょwwwうんこwww

高橋克己は何故かずっと僕を見ている。

もうカナちゃんの唸り声はもう止まらない。
いつの世も女の人に正論は通用しない。

再び挙手。

克己は何かを察したように掌をトイレに向けた。


個室のカナはやっぱり静寂に包まれていた。


もうなにこの体質、、、、
大人数に反応してるのか警察署に反応してるのか、、、
警察アレルギーなら、、あるかなぁ、、

個室に入るとカナはオナラすら出さない。

え？なんですか？
みたいな空気出しやがる
気にかけた相手に迷惑がられた気分。

めんどくせwwwメンヘラwwww

出るって言ったならちゃんと出せよ！
結果出せ！
もう結果もいいからうんこ出せよ！
馬鹿かよ。

慣れた手つきでズボンをあげる。
講習室に帰る前にフェイントとかかけてみた。
深呼吸。
今度のカナは大丈夫そうだった。

講習はすでに終盤に差し掛かり終了。
遂に免許更新は成功した。
ほぼほぼトイレにいたから体感15分ほどで講習室を後にする。
仲間達も新しい免許証を手に誇らしげだ。

お疲れ様でした。
高橋克己は優しい笑顔だった。

手渡された人相の悪い免許証。
カナには苦しめられたけどちょっとした非日常をなんとなく味わえた。

警察署もたまには悪くないな。
彼らも職務を全うしてるだけじゃないか。
今までの警察に対する不快感がすっと和らぐのを感じる。

署から出ると青々とした木々が夏を知らせる。
いい風が吹く。

カナ、帰ろうか。
甘いものでも買ってさ。
もう怒ってないよ。
本当さ。


愛車に乗ろうとすると

あ、ちょっと君。
と声をかけられた。

振り返ると高橋克己。
忘れ物かな？と思ったら



君、ちょっと講習中から気になってたんだ。
体調悪いのかな？
危ないものとか持ってないよね？
確認だけ、いいかな。



僕は警察署内に違法な物を持ち込んでいないか、という疑いをかけられたようだ。

うん、そうだね。
忘れそうになってたよ。




やっっっっぱり警察ってクソだわ。