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火の始末

怒涛の一年があと一ヶ月で終わろうとしている。世間一般からみても、予期せぬいろいろな状況が次から次へと現れて大変でしたね。みなさん、お疲れ様でした。

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沸々と怒りの感情が漂っている。だんだんと日が長くなる時期に、いくつかの人々の情に絆され自身を消費した。自分を粗末に扱った代償は必ず払うようになっているのだとはっきり分かる出来事があった。

背筋がゾッと凍えるような恐ろしさと緊迫した空気に気づいたが遅かった。乱暴に放り投げられたライターが鋭い軌道を描きながら落ちるのを見つめ、近づくのも躊躇するほど不快なオイルの匂いが立ち込めているのをぐっと堪え、なんともない顔を保った。まぎれもなくこの体験を選んでいるのは私だった。数日放心状態になった後、さっさと忘れてしまおうと何度も自分を励ました。起こった事態を振り返る余裕ができた頃には、体は焼かれて真っ黒になった。

燃え上がるのは一瞬だが、燃え上がった炎を打ち消すには忍耐と知恵が必要なのだ。そのことを全く知らなかった。狭まった視野と短絡的な考えでは到底太刀打できなかった。意識の方向を自分に向け回復するのに時間が必要だった。

この経験から、大きな困難に立ち向かうための屈強な精神と強さを誇示する筋肉や思考ではなく、さあっと優雅に逃げ回れる軽やかな肉体と柔軟な言葉を欲するようになった。
自分の機嫌をとれる豊かな賢さが何より尊い。
どんな状況にも自分に都合の良いように捉えて前を向ければそれでいい。
全ての人間が等しくこの世で幸せになる義務を持って生まれてきた。複雑でややこしい暗い思考の毒には侵されない、しなやかな賢さが光り始めたら、穴に落ちることを過敏に恐れる必要はなくなるだろう。

立派ではなくていいから、優しく前向きで透き通った言霊を集めて並べてみたい。
ふっと心が軽くなり、堰き止めていた想いが内側から溢れ、流れ出す。
ゆっくりと時間をかけ、温まった手を使い渦を作る。波紋は中心から広がり、静かで細やかな波が、まだ知らない誰かの心に届くだろう。

忙しなく暇を潰すために動いていた間は、神様は気分屋だと思っていた。とろけるような陽だまりをみつけてはかけていき、翳がさしはじめると機嫌を損ねた。いつまで経っても満たされない我が儘なこころを自力で抱きしめ、気まぐれに移り変わる感情の奴隷ではなく、意志による言葉の力と光が人には必要なのだ。そう強く思うようになった。神様はいつも未熟な私の内側で寝そべり呑気に欠伸をしながら待っていてくれている。

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