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Prismaton - オーディオと周辺分野の技術関連

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記事のうちオーディオと周辺分野の技術関連のものをまとめました
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#ゲームオーディオ

インタラクティブミュージックだけじゃない!ゲームの音楽演出!

最近ではゲームの音楽演出として、「インタラクティブミュージック」が知られるようになってきました。楽曲だけではなく音楽演出に注目が集まるのは興味深いことで、個人的にはありがたく感じています。 一方で、「インタラクティブミュージック」は用語として一人歩きしている面があると思っています。「インタラクティブミュージックを導入するかどうか?」のような議論が音楽演出の前提抜きに語られてしまう場面にも遭遇することがあり、少しのやるせなさを感じています。 そこで本稿ではゲーム制作における

オーディオコーデック音質評価のやり方

オーディオコーデックは、オーディオの最終品質を無慈悲に左右する要素です。せっかく細かいニュアンスを作り込んでも、エンコードによって台無しになってしまうこともあります。 一方で、オーディオコーデックに関しての質の良い言及は非常に少なく、特に音質評価に関しては「どうせ区別がつかない」「結局は好み」などといった雑な極論が蔓延してしまっているのが原状です。 そこで、その「音質評価のやり方」をテーマとして本稿を書くことにしました。 主にインタラクティブオーディオ制作におけるオーデ

リスナー位置はカメラにはない、プレイヤーにもない、創るものだから

ゲームオーディオにおける「リスナー」とは「聴き手」を表し、効果音の減衰やパンニングを行う際に、基準となる位置と向きを表します。 FPV(First-Person View) のゲームではカメラとプレイヤーキャラクター(以下プレイヤー)が位置も向きも一致しており、リスナーは多くの場合カメラの位置と向きがそのまま採用されます。 しかし、TPV(Third-Person View) のゲームでのリスナーはそうはいきません。どういう位置に置いてもメリットとデメリットが生じ、また人

「オーディオ版レイトレーシング」と「物理シミュレーションによる音響空間表現」

「レイトレーシング」は 3D グラフィックスの重要な技術となっていて、レイトレーシングを使ったリアリティの高いグラフィックス表現を見る機会が増えてきました。 また同時に、「レイトレーシングをオーディオに応用する」といった言及もちょいちょい見かけるようになりました。 しかし、グラフィックスのシミュレーションにレイトレーシングが有効なのは光の特性をレイトレーシングで近似できているからであり、音の特性に関してはレイトレーシングだけで近似するのは困難です。これはもう少し広く知られ

ゲームの遅延についてまとめる

最近では昔のゲーム機やアーケード筐体の移植版などがいろいろと発売され、レトロゲームブームが続いていると思います!ですが同時に「遅延が気になる」などの声があがることが増えてきている実感があります。 また、e-sports や RTA などに注目が集まり、ゲームにシビアさが要求される場面も増えてきました。その中でも「遅延を減らすにはどうするか?」といった議論が出てくるようになりました。 さらに、VR 機器では酔いの防止などの理由から、ゲームの設計段階で「低遅延」が求められてい

ただ HRTF をかけるだけでは立体音響にならない 7 の理由

昨今では HRTF を使用した立体音響化というのは割と一般的なものになってきているように感じますが、その表現に満足できているでしょうか? また、何か足りない!と感じるなら、その理由を考えてみたことがあるでしょうか? 本稿ではちょっと物議を醸すのを覚悟で、現状の HRTF の使用に関してよくある落とし穴を 7 項目に分けて掘り下げます。なるべく専門知識を必要としないように気をつけてはいますので、肩の力を抜いて読んでみてください。 もちろん否定をするのが目的なのではなく、落