見出し画像

過去と未来を繋ぐポイントに

「お寺というものは、100年、200年では語れない歴史を持っている。その一部に加われるというのはすごいことや。」

HIMEMIYAのお仕事を始めた頃、棟梁が呟いた一言に我が身が引き締まる思いがし、天から「覚悟」を試されているなと感じたことがありました。

射手座の満月の前日に訪れたのは創建1678年の古刹。数年後に営まれる大法要に備えて修復と美観再生を行いたいので、必要な調査を進めてほしいとのご依頼でした。

そして射手座の満月の日には、この1ヶ月間修理と美観再生のためにお預かりしていた、築200年以上経過した山門扉を納品(設置)してまいりました。
(この辺りのことはInstagram(himemiya_works)をご覧くださいませ。)

300年前、200年前にこのお寺を建立された時、お寺の方々、職人さんたち、またお寺に集う人たちはどんな思いでこのお寺を見ていたのだろう。
風雨にさらされ、時を刻んでいく中で今なお堅牢で荘厳な姿を見せてくれるこの建物・建造物は何を見てきたのだろう。
そして今どんな気持ちなんだろう。
どういう風にしてもらいたいと思っているのだろう。

私自身は修復、美観再生の職人ではありませんので、声が聞こえたとしても手を動かすことはできないのがもどかしいところでもありますが、技術部隊のみならず棟梁までもが必ず「この工程で進めるのはどうだろう?」「この色で塗装しようと思うんだけど、どう思う?」「この仕上がりでいいでしょうか。」と一つ一つ意見を求めてくれることは、そんな「過去からの声」を大切に思いたい、共有してくれていると誇らしく思っております。

修復と美観再生が完了し、仕上がった扉を見ている時に思わずある言葉が私の中から湧きががりました。

「いいね。あなたたちの技術が数十年、数百年後まで残っていくんだね。」

腕に技を持つ職人さんが少し羨ましく思えました。

その時にあるスタッフがこう言いました。

「200年後、また見にこないといけませんね。」

おそらく半分ジョークのような気持ちで言ったのかもしれません。
どう考えてもこれから200年は生きていないでしょうから(笑)
「次の魂で、生まれ変わって見にきましょう。」ということでしょうか。

もしかすると、私たちはどこかの現場で数百年前に一緒に仕事をしていた仲間かもしれない。その時には私が大工で(笑)例えば棟梁がお施主(御住職)だったのかもしれません。

時を経て、今度生まれ変わった時には、また役割が変わっているかもしれません。

今は技術者ではないのに、果てしなく長い歴史を刻みつづける建造物に「今」というポイントで関わり、未来に繋ぐお手伝いをしている、非常に言葉に表すのは難しい役なのですが、このお役目が与えられていることをこの上なく幸せに思います。

なんと言っても「美」を取り戻し、「美」を未来に繋ぐ、それを指示することもできるなんて、おこがましいにもほどがありますが、こんな役目は何回生まれ変わっても、どの時代であっても、そうあることではないでしょう。

過去から未来を繋ぐ悠久の流れの中、「今」というポイントで「美」に携わる。
HIMEMIYAのお仕事は、蘇らせる「美」ですが、フォンテーヌ ・ブローの方では新たに作り出す「美」にもチャレンジしていきます。

ご存知の方はお心に留めていただいているかもしれませんが・・・
「マダム」が、芸術と実務を統合し、豊かさを共有、循環できる一つの大きなお城を築き、運営していたように。

これからもチャレンジと研鑽を重ねてまいりたいと思います。
そしてそれを許されていることを、何より幸せに思い、感謝しております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?