「GoToトラベル」を利用しまくっている人は、税務署に狙われているかもしれない...!

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旅行代金は半額になり、わずかな負担で高級和牛や毛ガニといった高価な品がもらえた。そんなあなたのもとに、ある日突然、税務署はやってくる。誰でもハマり得る、落とし穴が存在しているのだ。

GoToが「所得」だって!?

神奈川県在住の柴田隆文さん(仮名・58歳)は、今年7月から「GoToキャンペーン」を存分に活用してきた。柴田さんが話す。

「これまで『GoToトラベル』を使って、計20泊以上はしたと思います。妻と一緒に、普段は一泊二名で8万円といった箱根や熱海などの高級旅館を中心に利用しました。

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10月に『GoToイート』がスタートしてからは、そちらも使っています。トラベルでは約60万円、イートでも約10万円、総額で約70万円はトクをしたと思います」

だが、この柴田さん、ここでトクした分に税金がかかることを知らないようだ。大変なことになるかもしれないのに。

少しでもお得になるならと考え、「GoToトラベル」や「GoToイート」を利用している人は少なくないだろう。前者は、一泊一名2万円を上限に旅行代金の半額が補助される。

後者は購入額の25%が加算されたプレミアム食事券、あるいは予約サイトを通じて、一食一名あたり500~1000ポイントが付与される仕組みだ。しかし、実はここに落とし穴があり、いま多くの専門家が警告している。

「GoToトラベルの旅行代金の補助金、GoToイートのポイント給付などは、税制上、『一時所得』と見なされ、課税の対象になるのです」(税理士・落合孝裕氏)

嬉々として受け取っていた補助やポイントが、実は「所得」とされてしまうのだという。聞き慣れない言葉だが、「一時所得」とは、所得税の課税所得の区分のひとつ。

仕事の対価などではない、臨時的な所得のことを指す。元東京国税局調査官で、税理士の松嶋洋氏が話す。

「一時所得には、50万円の控除枠があり、それを超えると確定申告を行う必要があります。50万円をオーバーした分に、50%をかけた額が課税の対象になるのです」

柴田さんのケースで言えば、柴田さんが受け取った70万円から控除枠の50万円を引くと、20万円。それに50%をかけた、「10万円」が課税対象になる。金額は大したことがないように思えるが、これを確定申告しなければ「脱税」と見なされてしまうのだ。

GoToトラベルは一泊の上限は一名あたり2万円だが、利用回数の制限はない。もし家族や友人の分まであなたが予約していたならば、その分だけあなたの所得と見なされてしまう。

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「GoToトラベルは、使っている人とそうでない人の差が激しい。20泊以上利用したという人はザラにいます。GoToトラベルだけで50万円以上の補助を受けている人もすでに出ています」(航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏)

そこにGoToイートも加わる。GoToイートは、ランチであれば一名500ポイント、ディナーであれば一名1000ポイントが付与される。一回あたりの上限は1万ポイントだが、こちらも利用回数の制限はない。

GoToトラベル同様、家族や知人との会食をまとめて予約していたら、馬鹿にならない額があなたの所得になってしまう。

気をつける必要があるのは、GoToキャンペーンだけではない。前出・落合氏が語る。

「GoToだけではなく、ふるさと納税の返礼品も一時所得と見なされるので要注意です」

ふるさと納税といえば、任意の自治体に寄付をすることで、翌年の住民税や所得税が控除される制度のこと。寄付の返礼品として、自治体からA5ランクの和牛や北海道産の毛ガニが受け取れるとあって、人気を呼んでいる。

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利用している方も多いのではないだろうか。落合氏が続ける。

「ふるさと納税は、寄付金額の30%を目安に返礼品を受け取ることができますが、この30%相当額が一時所得と見なされます。

現在は少なくなりましたが、返礼品に商品券などの金券があったときは、金券を5万円分受け取っていたら、それは5万円の一時所得とみなされていました。食品等は見積もりがしにくいため、寄付金額の30%で計算している方が多いです」

今年の税務署は本気だ

ふるさと納税は、年収や家族構成によって、寄付できる限度額が変わる。たとえば、年収800万円の独身男性の場合、寄付の限度額は12万9000円になる。この30%の3万8700円が一時所得と見なされるのだ。

一時所得の恐ろしいところは、「これは一時所得に当たります」という明確な基準がないこと。GoTo、ふるさと納税以外にも、一時所得と見なされるものは多くある。

「競馬や競輪の払戻金、福引や懸賞、保険の満期返戻金も一時所得と見なされます。商品を買って付与されるポイントは原則として確定申告が不要とされていますが、一時所得とされる場合もあります」(前出・松嶋氏)

このうち特に金額が大きいのが、保険の満期返戻金だ。たとえば、加入していた掛け金500万円の生命保険が満期を迎え、利息込みで530万円が戻ってきたとする。その場合、この30万円が一時所得とみなされる。

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今年で言えば、要注意なのが「持続化給付金」だ。新型コロナによって経営状態が悪化した中小企業や個人事業者に給付金を支給する制度であり、企業には最大200万円、個人事業者には100万円まで支給される。

この持続化給付金を個人事業者の「給与所得者」という立場で受け取った人は、これも一時所得とみなされるのである。

GoTo、ふるさと納税、そしてその他を加算していくと、気づけば膨大な金額になっている可能性があるのだ。

しかし、あなたはまだこう考えているのではないか。「まさか税務署が個人の細かいおカネの出入りまでチェックしていないだろう」と。それはあまりに甘い考えだ。

「今年はコロナの影響で収入が減った人が多いため、所得税の税収が減ることが予想されます。その減少分を補うためにも、税務署が一時所得のチェックを細かく行う可能性はあります」(税法学が専門の立正大学法学部客員教授・浦野広明氏)

全国の国税局や税務署は、新型コロナの感染拡大防止のため、4月から訪問税務調査を中止していた。ところが、実は10月からひっそりと新規の訪問税務調査を再開させている。すでに税務署は動き出しているのだ。

すべてバレている

「国税、税務署は資料収集に長けています。国税は『KSK(国税総合管理)システム』という個人ごとに分かれたデータベースを持っています。

ふるさと納税の高額寄付などについては、すでに資料収集し、KSKに情報をドッキングしている可能性が高い。

GoToトラベルについても、ひとつの旅行代理店を通して大量の宿泊を申し込んでいる場合は、その代理店から資料を収集すればわかります。

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複数の代理店やネットなどで分散していれば、つかむのに労力はかかりますが、あちこちから資料を提出させ、KSKに情報を集約させることは可能です」(国税OBで税理士の武田秀和氏)

KSKには、私たちがこれまでどんな収入を得てきたか、どんな財産を相続したかという情報が集められている。ひとつひとつは高額ではなくても、丹念に調べられ、情報を集約されれば、すべてが丸裸になってしまう。

「バレなければいいだろう」と高を括っていると、待っているのは、追徴課税だ。前出・浦野氏が語る。

「税務署から税務調査を受けた後で修正申告などをした場合は『過少申告加算税』が課されます。これは、原則的には新たに納めることになった税金の10%相当額が課されます。

確定申告の期限をすぎてから申告すると、『無申告加算税』が課されます。これは納めるべき税金の額が50万円までは15%、50万円を超える額に対しては20%が加算されます」

追徴課税が課されれば、同時に利息を意味する「延滞税」もかかる。こちらは最大で年率14・6%。追徴課税は一括納付が原則だ。手元に現金がないからと納付が遅れると、支払わなくてはならない金額は雪だるま式に膨れ上がっていく。

少しでも得をしようとコツコツやってきたことが、ぜんぶパーになってしまうのだ。

「追徴金などはもちろん痛いですが、それよりも国税に目を付けられることのほうが深刻です。少額でも、一時所得を申告せず、追徴金を払ったことがあるという履歴はKSKに残ります。

今後、常に国税から『要注意』のターゲットとして扱われることになるのです」(国税OBの税理士)

ある日突然、税務署はやってくる。しかし、そうなったときには、もう遅いのだ。3月の確定申告では、くれぐれもご用心を。

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