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新規事業の立案に参考にすべし! 戦いの9原則

人間同士の戦いには必ず勝てる法則や原則なんかありませんが、「これを抑えておかないと絶対勝てない」といった守るべき原則ならあります。

それは、元イギリス陸軍のフラー少将がたてた戦いの9原則です。

この原則は、今ではアメリカなどの軍事超大国でも教えられている原則になっていますが、ビジネスでも新規事業のビジネスモデルや事業戦略を考える上でとっても参考になるものです。

それでは、さっそく見ていきましょう!

フラーの戦いの原則

目標の原則

新規事業のビジネスモデルを考えるときに、まず事業の狙いをはっきりとさせておく必要があります。

短期決戦で成功したら事業売却するのか?長期で収益の柱にしていくのか?などです。それによってとるべきリスクが大きく違います。

たとえば、上で述べたような事業売却を前提とした短期決戦であれば、急激な需要拡大が期待できる成長性の高い市場を探し、先行投資をおこなったうえで企業価値を高めて売却する「出口戦略」が中心的な話題になりますが、長期的な収益の柱にする場合はライバル企業などに勝ち続ける必要があるので、「競争戦略」が中心的な話題になるはずです。

この時点で目標がはっきりせず、総花的に狙いがいくつもでてくるような欲ばりな計画をつくってしまうと、売却すべきタイミングで売ることができなかったり、簡単に競合に真似されてレッドオーシャンに突入することになったりして、いつの日か事業は破綻することになります。よくある話ですが・・・。

統一の原則

つねに環境が変化するような戦場では、リーダーの決断力が命綱です。

このとき意思決定は、かならず誰か「一人」の責任者でなされるべきです。みんなと相談して決めるということはありえません。

もし責任者が自分で決めず、場の空気を読んでいちばんよさそうな意見を採用したり、多数決で決めようとしたりしてしまうと衆愚政治になってしまい、誰が決めたことなのかわからない最悪の状態になってしまいます。

当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ビジネスの世界でもよくある話ですよね。

環境の変化によってこれまでのビジネス・モデルでは立ち行かなくなってしまい変革が求められる場合などです。

たとえば、これまでは急激な店舗拡大路線でビジネスを成長させてきた家電量販店が、ネットの普及によっておこされた環境変化のため顧客を奪われ始めているなかでどういった判断を下すかは、すべて社長などのひとりの責任者が決断をくださなければなりません。

もし、現場の意見も聞いて、管理職の意見も聞いて、役員の意見も聞いて、みんなの意見のなかでだれも損しない解決策を模索しているようでは、スピード感が損なわれて多大な損失を招いてしまいます。

これまでの戦略と今とるべき戦略との矛盾をマネジメントするには、「一人」のリーダーによる決断力でしか解決できないのです。

集中の原則

戦いの中で勝敗を左右する要素は何でしょうか?

それは、ライバル企業とのパワー・バランスです。

ライバル企業同士が、似たような商品を、同じくらい投資をして、同じような販売チャネルを使って販売したら、きっと売上も利益もシェアも大きな違いはありません。

このような状態で彼我のバランスを崩すためには、相手の弱いところを見つけて、切り崩していくしかありません。

そのとき、時間をかけてゆっくり相手の弱点を攻めていては、すぐに対応されてパワー・バランスを崩すことができないでしょう。

一気にパワー・バランスを自社に有利にするためには、できるだけ大規模な攻撃を継続的に一点に集中することが重要なのです。

これによって、ライバル企業は弱点をカバーするために不得意分野に投資せざるを得なくなります。そうすると、ライバルの得意技を封じることができ、次第に自社に有利になってきます。

戦略の基本として、よく「集中と選択」という言葉が使われると思います。原理的には、ライバルとのパワー・バランスを切り崩すことが主な目的なのです。

主導の原則

勝負の世界では、主導権を握ることがとても重要です。

なぜならば、攻撃する側はいつでも好きな場所を選んで攻撃を集中させることができるのに対して、守る側はどこから攻めてくるかわからない状態なので、うすく広く守っておかなければならないからです。

うすく広く守るには維持管理コストがかかります。

また、攻撃を受けたときには、攻撃された地点の守りを厚くするために守備兵を集める時間や手間などもかかります。

守り続けているだけでは勝負には勝てないので、どこかのタイミングで反撃に出ないといけないのですが、守っている時間がながくなるとその分コストがかさみ、結果的に攻撃するだけの余力を奪うことになるのです。

このように主導権を握ることは、ライバルの体力を奪い、彼我のパワーバランスをこちらに有利にするために必要な行為です。

つねに先手先手で攻撃するために、必ず守るべき原則といえるでしょう。

とくにネットビジネスでは、このような傾向が強いといわれています。GoogleやAmazonなどのネット事業では最初に始めた事業者が事実上の標準化(デファクト・スタンダード)になるため、競合企業は一度後れを取ってしまうと、まったく太刀打ちできなくなってしまいます。

新規事業のビジネスモデルを考えるときには、いかにして業界の主導権を握ることができるかを、常に頭に入れておく必要があるのです。

奇襲の原則

新商品の技術開発でも販売方法でもいいのですが、ライバルのスキをついて想定外のやり方をとった場合、ライバル企業が即座に対応できないで出遅れることがしばしばあります。

とくに、ライバルが反撃できないしくみ(得意な戦術が効かない方法や、今まで築いてきた強みやノウハウがまったく無駄になってしまう方法など)を作ることができれば、先行者利得とかファースト・ムーバーアドバンテージが最大になることでしょう。

そうなってくれば、もう競争の主導権を握ることができるはずです。

ビジネスの世界でも、シェア逆転の現象を数多く研究されていますが、このような相手が真似できない(あるいは真似しにくい)しくみを作り出したことによって大逆転を起こした事例がたくさんあります。

新規事業を成功させるためには、奇襲の原則はぜったいにはずしてはいけない要素なのです。

機動の原則

戦いは勝負ごとなので、当然負けることだって失敗することだってあります。「負け」そのものは、勝負事につきものなので、それ自体を批判したり、必要以上に怖がってはいけませんが、「遅すぎた」ことが原因で負けてしまうことだけは避けなければなりません。

ビジネスは、人間同士が相手の出方を見ながら競争する行為です。

人間同士で戦っている場合、相手よりも先にできるだけ有利な状況に身をおくことが重要です。

そのためには、誰よりも早く環境を見極めて、持てるリソースや戦力を集中的に投資する必要があるのです。

したがって誰よりも早く決断し、誰よりも早く実行し、そして誰よりも早く学習し(数多く失敗し)、その結果誰よりも早く勝ちパターンを抑えてしまうことが重要なのです。

競争している環境において、当初たてた仮説やそのときの決断が正しいかどうかは、その時点ではわかりません。

おそらく後から振り返ってみると、仮説が間違っていたということのほうが多いと思います。

だから、自社を有利なポジションに導くには、仮説を検証するスピードを上げてライバルよりも早く正解にたどり着くように沢山失敗したほうが、結局近道なのです。

スピード勝負に勝てる企業が、戦いを制するのです。

経済の原則

言うまでもなく、すべての戦いにはリソースが必要です。

そのリソースはただで手に入るわけではなく、かならずコストがかかります。ここでいうコストとは、金だけではなく手間や時間もふくまれます。

集中の原則で述べたように、ライバルの弱点に対してリソースを集中的に投下することが、戦いのバランスを崩して、自社を有利にすすめるポイントでした。

そのためには、日ごろからできるだけコストを節約しておいて、必要なときに必要なだけリソースを集中投資できるように準備しておく必要がありますし、必要に応じて効率的にリソースを集めることができる方法を計画しておくことが大切になってきます。

簡明の原則

日々のやるべきことを、組織内に早く、広く理解してもらうためには、記憶にのこりやすい言葉で繰り返し伝えることが重要です。

そのためには、できるだけシンプルな言葉で目標・計画・行動を伝えることです。そうでないと、聞き手も混乱してしまうし、話し手も疲れてしまいます。

よく事業計画に文字だらけの資料をつくって、「これが戦略だ」という人がいます。

おそらく、当人にとっては、しっかり考え抜かれた戦略なのでしょうが、これでは日々の行動に移せるレベルで、組織のすみずみまで理解してもらうことは難しいでしょう。

戦略の詳細や理屈を述べたり、詳細な情報や論理展開を説明するには、細かく説明された資料が必要です。

その資料をつかって、特定のステークホルダーに説明する必要がある場合ももちろんあります。

しかし、多くの人々を対象にして日々の行動を促すためには、メッセージはできるだけシンプルであるべきです。

この使い分けができるようにならなければ、どんなに優れたビジネスモデルでも実行することができません。

警戒の原則

ビジネスの世界でも、過去の成功体験が失敗の原因になってしまった事例がたくさんあります。

企業が成長していると「今うまく行っているやり方」に何の疑いも持たないものですが、いつのまにかそれが組織が業界の常識になってしまい、過去の成功体験へと変貌してしまいます。

それが、いったん企業文化などになってしまうと、そこから抜け出すことは至難の業です。

あたらしい試みや常識を覆すようなイノベーションを生み出す土壌を奪ってしまい、かつて自分たちが奪ってきた市場を、こんどは新たなライバルたちから奪われることになってしまうのです。

油断大敵という言葉がありますが、だれも油断をしたくてしているわけではありません。

いつの間にか、油断している自分に気づかないだけなのです。油断しないためには、ライバルの行動の先を読むだけでなく、ありとあらゆる環境の変化を常にウォッチしておく必要があります。


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