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お疲れ様、そして安らかに・・・最愛の娘、若珈(モカ)②

2022.3.9 

この日、当然モカが帰宅できると信じ、私はのんきに待っていた。

夫にモカを迎えに行ってもらったのだが、しばらくして、「今日は家に連れて帰れそうにない」と、モカの苦しそうに横たわる画像とともにラインが届いた。

以前の入院でも、退院日が延びてしまったことはあったけれど、今回だけは、これまでにない不安と寂しさで胸がいっぱいになった。

頭の中も胸の中も空っぽのまま、涙が止まらなかった。

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午後7時半頃・・・主治医の先生からの電話を夫が受けていた。

「あ、そういうことですね。はい。はい。え〜っと、じゃ、相談してみます」と言って電話を切電する夫。

嫌な予感とともに、どこか腑に落ちない不安と疑問が押し寄せてきて、苛立ちを覚えた。

私は、早口に夫に電話の内容の説明を求めた。

「今日これから迎えに行って連れて帰るか、このまま病院に入院して様子みるかって先生が・・・。よくわからないけど、おしっこがあれからまだ出せていないんだってさ。そうすると人工透析とかになっちゃうんだって。連れてくる?どうする?」と私に説明する夫。

状況の把握が全くできていないではないか・・・今日は退院できないと言って連れ帰ってこれなかった今朝から、何がどうなっているのか?

閉院時間の今になって、急にこれから「連れて帰るか」と電話を架けてきて下さった先生の意図と、その選択肢は何を意味するのか・・?

おしっこがあれから出ていないという先生の報告に、はいそうなのですね・・で返答を返し納得できてしまう夫とは裏腹に、到底納得がいかない私。

苛立ちがピークに達し、直接話を聞かなければ・・・と病院へ折り返しの電話を架けていた。

「先ほどご主人にお伝えしたのですけど・・」という先生にお願いをし、もう一度説明を仰いだ。

①今朝からインスリンや点滴を流して様子を見ているが、自力で排尿ができていない。

②もしかすると、腎臓が機能せずにそもそも尿が作れてていない可能性がある。かなり腹水が溜まってきている状況。

③急変して今晩中に亡くなる可能性も考えられる。

②自力で排尿ができないのはかなりまずい(時間の問題)。このまま病院でというのであれば、今晩入院のまま預かることはできるけれど、看取れないことになった時を思うと、家に連れて帰られるという選択肢も今ならある・・。

先生の説明から、戸惑いや選択の難しさが伝わってきた。

諦めたくはなかった。

本当に何もできないのか?病院でならできる対応も、家では全く何もできないじゃないか・・・何もできずに死ぬのを待つなんて、それは、生きようと必死で頑張っているモカに失礼すぎるじゃないか。

本人が一番苦しいし、辛いし、それなのに一番諦めずに頑張っている・・そのモカに対して私たちが諦めてしまったら、モカにどんな顔をして会えば良いのか・・・。

「先生・・、家に連れて帰ってきたいのは今すぐにでもという気持ちです。でも、もう本当に病院でできることはないのですか?家に連れて帰ってきても、うちは病院じゃないから何もしてあげられない。家に連れて帰ってきたら、それは黙って苦しむのを見て、つまり、死ぬのをただ待て・・ということですよね?(尿がこのまま出せなければ、死ぬしか無いのは分かっている)動物は、土壇場でも最後まで諦めずになんとか生きようとするものだと思うんです。回復の可能性はどのくらいですか?回復の可能性や、次の対処法として、本当に何にもないんですか?ゼロなんですか?」

何もないわけではない。

腎機能が機能できなくなってしまった場合、①人工透析 ②腹部に針で穴を開け、腹水を意図的に作り、それを抜く。そうすることで人口的に腎臓の機能と同じような役割を作り出せるので、体内の毒素や老廃物を体外に出すことは可能。

次に打つ手としてはこの二つになるが、問題もある。その前に亡くなってしまう可能性もあり、①人工透析は当院ではできない。②は希望があればできるが感染症のリスクが高く、糖尿病の子にこの方法を試したことはこれまでに経験がない。免疫がそもそもあまりないので、感染症を起こしたら危ない。

先生の説明から、次の手はどれも難しく、困難を極めることを漠然と理解した。

でも、手があるのに諦めるのはどうなのか・・・まだ諦めきれないでいた。

「さっき、先生は今晩中に排尿がされる可能性が低いもののゼロでは無いとおっしゃいましたよね?それが奇跡のレベルでゼロ%じやないのだとしても、可能性がゼロじゃないのなら、頑張っているのだから可能性を信じてみることも必要かと思うんです。このまま尿が出ず、ただ苦しませることになると分かっていても、ここで家に連れ帰って来て、何もできずに死ぬのを待って見届けることしかできないのなら、同じじゃないですか。病院なら、先生にまだ対応してもらえますから、今夜は入院で、先生できる限りのことをしてほしいんです。明日の朝イチに迎えにいって、その時の状況にはよりますがダメなら連れて帰ります。その時に、一晩の経過と今後についても相談させてください。モカが一晩、頑張って待っていてくれることを祈ります。」

「わかりました。一晩、預かります。何かあれば、またすぐご連絡しますから」

先生のその言葉に縋りたい思いで、電話をおいた。

この晩は、一睡もできなかった。

眠れる夫が恨めしくもあった。

さっきの自分の選択は、本当に正しかったのか・・・もし、本当に今晩会えずに旅立ってしまったら・・・私はずっと後悔し続けるのだろうと。自力で排尿してくれる奇跡を祈り続けた。朝まで涙が止まることはなかった。

3/10 午前3時

トイレに起きたり布団に潜ったりを繰り返していると、ふと、階段を2回、「トン・・トン」と登る音がした。5匹の猫たちの足音を聞き分けられる私は、その音にハッとした。

空耳だったのか・・・糖尿病で食べても食べても痩せていき、3キロ程度しかないモカの、とても軽くて優しい足音。ここにいるはずのないあの子の足音。

その後、いつも私と一緒にベッドで眠るモカの、定位位置の当たりがふんわりした。

私の足の脛のあたりが、じんわりと温かくなっていく。丸く、一部がじんわりと・・・。

あ〜モカ、お家に帰ってきたいよね。早く帰ってきたいよね・・・もしかしたら・・・という不安とともに、温かく感じる脛の辺りに、「明日の朝迎えに行くまでどうか頑張って」「一緒にうちに帰ってこよう」と話りかけた。



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