松原泰道老師 布教の逸話

戦後間もない頃、山本玄峰老師の講演会があった時、まだ若かった泰道老師も随伴していて、法話をさせられたという
その日は台風が来ていて、観客はほとんどいなかった
泰道老師の話が終わると、玄峰老師は褒めて言われた
「ワシは目がよく見えないから分からなかったが、今聞くと今日の聴衆はたったの五人だったらしいな。ワシもすみで話を聞いていたが、あなたの話は千人の時も五人の時も少しも変わりはしない。えらいもんだ。できんことだな」
「はい、私はたとえ聴衆が一人でも話を致します」
「では、その一人がいない時はどうする」
期せずして、禅問答が始まった。
「誰もいなければ話は致しません」
玄峰老師は叱責して言う、
「禅宗の坊さんなら誰がいなくても坐禅する、お念仏の者は誰がいなくてもお念仏をする。あなたも誰がいなくても話をしろ」
そしてこうも語った。
「しかしな、誰も聞いていないと思うなよ、壁も柱も聞いておるでな」
この一言で、泰道老師は、布教の眼を開いたという。

以上は、円覚寺の横田南嶺老師が若かった頃、泰道老師から直接お聞きした話だそうだ。
かくして、このALOLのnoteも、誰も読まなくても、書かねばならぬ(笑)


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