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ソフトバンクでんきの値上げについての分析 ※電力市場連動額とは一体何なのか

先日東京電力をはじめとする大手7社の電気代の値上がりが決定し、電気代に悩まされる今日この頃となりました。
私の両親が住む実家では、先日までソフトバンクでんきを使っていたのですが、今年の冬の電気代が特に高かったらしく、ソフトバンクでんきの窓口に電話してみても、ウクライナ戦争などの影響で燃料調整費が高くなっているので仕方がないとしか言われなかったようです。
私の実家は5年ほど前までは東京電力だったのですが、ソフトバンクのスマホを買った際、「ソフトバンクでんきは東京電力と同じ料金体系ですし、ソフトバンク端末1つにつき月110円安くなります!お客様は端末2つですので220円安くなりますよ!おまけに契約後1か月は電気代無料です!」と熱心に勧められたようで、その際ソフトバンクでんきに変更していました。
そのため、東京電力とソフトバンクでんきの料金が異なるとは全く思っていなかったようなのですが、

燃料調整費の上限撤廃のお知らせ

2022年の11月1日から、燃料調整額の上限が撤廃されるという通知があったようで、これは簡単に言えば、例えば東電は燃料調整費を5.13円以上に引き上げることはできない(燃料が大幅に値上がりした場合、東電が赤字となる)国との決まりがあったのですが、ソフトバンクでんきにはそのような決まりはないので上限撤廃することができました。これにより昨年の11月以降は東電と比較して割高となっていったのです。今年の1月の燃料調整費が約12円、2月の燃料調整費が約13円となり、1kwhあたり東電と比較して、1月では7円、2月では8円割高になっている状態でした。私の実家ではだいたい冬場は月で600kwhほど使っていたので、1月で4200円、2月で4800円、東電と比べて高かったです。

このような状態だったので私はすぐに東電に戻すことを勧めたのですが、東電も国に値上げを申請している時期での話し合いだったので、東電が値上げしたら、ソフトバンクでんきのほうが安くなるんじゃない?と言われたので、ソフトバンクでんきを調べてみたら、ソフトバンクでんきも今年の6月から値上げをするとホームページに書かれていて、東北電力エリア、東京電力エリア、関西電力エリア、九州電力エリアの4エリアで電力市場連動額を新設すると書かれていました。


電力市場連動額とは他の新電力会社の市場連動プランと似たようなもの、要するに日本卸電力取引所(一般的にJEPXと呼ばれる)から電力を仕入れ、安く仕入れることができれば利用者は恩恵を受けることができるのですが、電力市場が高騰してしまった場合、利用者はかなりの損害となってしまいます。2021年1月に市場相場が平均価格で66円を付ける高騰となり、新電力会社の倒産、利用者の悲鳴がニュースとなったのを覚えている方もいらっしゃると思います。東電にはない電力市場連動額というものを追加したこの時点で、私の両親のように東電と料金体系が変わらないと勧められてソフトバンクでんきに変更した方は東電に戻すことをお勧めいたします。

それでは電力市場連動額の追加によって、利用者は大手電力会社と比較した際恩恵を受けることができるのか、市場価格がどういう時に恩恵を受けれるのか、どういう時に割高となってしまうのか、分析をしてみたのですが、分析すればするほど、この条件で利用者が大手電力会社と比較した場合恩恵を受けれることがありうるのか?と思ってしまう分析結果となりました。その原因は、ソフトバンクでんきが設定した〇〇〇〇〇〇と〇〇〇〇〇〇が利用者にとって不利すぎるからなのです。このことを知らないと、6月の電力市場連動額が1000円程度だし気にする必要ないと判断した結果、7月の電力市場連動額で真っ青になることもあり得ます。

まず、ソフトバンクでんきの電気料金の計算式を見てみます。

電気料金=基本料金または最低料金+電力量料金±燃料費調整額±電力市場連動額+再生可能エネルギー発電促進賦課金


まず基本料金または最低料金については、便宜上一番利用者が多いと思われる東電の従量電灯Bと、ソフトバンクのおうちでんきを比較した場合、まったく同じ料金体系となっています。他の大手電力会社も同じ傾向となっていると思います。
次に一番料金に関わってくる電力量料金を比較した場合、これも値上げした東電に追随し同じ料金体系となっているんです。
燃料費調整額も東電が値上げした基準の燃料調整額に変更しています。(ここでは割愛しますが、東電は今回の値上げに伴い基準燃料価格を44200円から86100円に変更しています。これにより今後燃料価格の値下がりにより燃料費調整額が大きくマイナスになっていきます。)ソフトバンクでんきも今後燃料費調整額はマイナスになりますが、東電と同じく電力量料金が大幅に値上がりしているため、従来と比べて値上げになっています。
再生可能エネルギー発電促進賦課金はどの電力会社でも一定であり、2023年5月分から2024年4月分は1kwhあたり1.4円となっています。この値は電力会社によって変わるものではないので今回は比較対象からは外します。


ソフトバンクのおうちでんき


東電の従量電灯B 電力量料金が第一段階料金で19.91円から30円に大幅に上昇している。その補填として基準燃料価格を86100円に変更し、今後は今まで大きなプラスであった燃料調整費がマイナスとなっていく推定だが、それでも従来に比べて大幅な値上がりとなっている。ソフトバンクでんきはその高くなった東電の電力量料金に追随して同じ料金体系をとっている。

基本料金または最低料金電力量料金燃料費調整額再生可能エネルギー発電促進賦課金も東電と同じなら、東電でもソフトバンクでんきでもいいんじゃない?電力市場連動額も±と表記があるし恩恵を受けれる場合もあるんでしょ?ソフトバンク端末2台で月間220円安くなってるし、PayPayカードで電気代を支払うとポイント還元もあるし、ポイントキャンペーンもよくやってるし、わざわざ東電に戻さなくてもいいんじゃない?これは私の両親の言葉ですが、このように考えている方もいらっしゃると思います。しかし、この電力市場連動額というのが大変厄介なものなんです。


今年の3月31日の発表では基準市場価格は6円としてシミュレーション計算されているが・・・

電力市場連動額=電力市場連動単価×30分ごとの使用電力量

電力市場連動単価=(電力市場価格-基準市場価格)×市場調達比率

電力市場連動単価?電力市場価格?基準市場価格?市場調達比率?ここにきて初めて出てくるような単語が計算式に大量に埋め込まれました。このような時は非常に注意が必要で、簡単な計算式を複雑な言葉で理解を難しくさせ、本質をぼやかされる危険性があります。計算式としては非常に簡単なものなので、じっくりと見ていきましょう。
電力市場連動単価は、電力市場価格から基準市場価格を引いたものに市場調達比率をかけることで求めることができるようです。電力市場価格は毎日JEPXの市場で価格が決定されるもので、この価格が安ければ利用者が恩恵を受けることができ、この価格が高ければ利用者が損害を出すことになる大事な数値ですが、この数値は一般的には春や秋の季節は安くなる傾向があり、電力がひっ迫する夏や冬は高くなる傾向があるとされています。

ソフトバンクでんきのホームページにも需要が高まる夏季や冬季は価格が上がると書いてます

それなら、安く仕入れる事ができそうな春や秋に大量に市場から仕入れて、価格が高騰しそうな夏や冬には市場から仕入れる量を減らせば、少なくても春や秋の季節であれば大手電力会社より安くなるのでは?と思ってる方もいらっしゃると思います。私も最初はそう思っていました。しかしここで問題となってくるのが、基準市場価格市場調達比率です。これら2つの数値はソフトバンクでんきが今年6月から来年3月までの値を既に決定しており、検討の余地がない状態です。新電力会社はこの数値の決め方が非常に大切で、この数値の決め方によっては、利用者が大手電力会社と比較した際大幅な損害を出してしまうことになります(逆に利用者に有利な条件にした結果新電力会社が大きな損害をだしてしまうこともあります)。今回ソフトバンクでんきが決定した数値は基準市場価格2.2円市場調達比率 6月、9月、10月、11月、3月が30% 7月、8月、12月、1月、2月が70%となっています。


この数値を見せた時、今まで東電への変更に乗り気でなかった両親の顔色が変わりました。ソフトバンクでんきは、夏場冬場の市場が高騰する可能性がある時期に市場から70%調達すると言っているのです。それに基準市場価格が2.2円という決定(3月31日発表のソフトバンクのシミュレーションでは6円としていました)。もう一度計算式を見直してみましょう。

電力市場連動単価=(電力市場価格-基準市場価格)×市場調達比率

この値がマイナスになれば、大手電力会社と比較した際利用者の利益となりますが、まずは6月の市場調達比率30%、基準市場価格2.2円の値を代入してみると、

電力市場連動単価=(電力市場価格-2.2)×0.3

ずいぶんと見やすい式となりました。この式がマイナスになれば利用者に恩恵があります。つまり電力市場価格が2.2円を下回ればいいのです。
ところで電力市場価格は現在どれくらいで推移しているのでしょうか。例として6月1日、2日、3日の東京のJEPXの市場価格を見てみましょう。


6月1日の東京の電力市場推移


6月2日の東京の電力市場推移


6月3日の東京の電力市場推移

この3日の中で、特に6月3日の電力市場推移が安値で5円を割る、市場連動利用者にとって、有利となりそうな条件であったので、6月3日について詳しく見ていきましょう。この日は15:00に4.65円の安値をつけており、さすがにこの時間に電気を使えば恩恵が得られると思い計算してみます。
電力市場連動単価=(電力市場価格-2.2)×0.3
電力市場連動単価=(4.65-2.2)×0.3=0.735

ちなみにこの日の高値は18:30の11.29円でこちらも計算してみます。
電力市場連動単価=(11.29-2.2)×0.3=2.727

このように、市場で4円台という比較的安値をつけていても電力市場連動単価はプラスとなってしまっています。これは基準市場価格2.2円というあまりに低い価格設定によって引き起こされている状態であり、この価格があまりにも利用者にとって不利益であると言わざるを得ません。ちなみに3月31日にソフトバンクでんきが発表した際のシミュレーションでは基準市場価格6円として計算されていただけに(ちなみに6円であっても現在の市場価格平均を鑑みるに利用者が有利になるとは考えにくいです)ますます利用者がほぼ恩恵を受ける事がない設定となってしまいました。


ソフトバンクでんきでも毎日の市場連動価格を確認できるのだが・・・

それとこれは細かいレベルなのですが、上のグラフはソフトバンクでんきのホームページにある6月3日の市場連動額のグラフです。最高値、最安値をつけている時間帯もグラフの形状も、JEPXの東京の市場価格のグラフと全く同じなのですが、ソフトバンクでんきは最高値3.07円、最安値0.87円と表示されています。先ほど私が市場価格を用いて計算した結果は、最高値2.73円、最安値0.74円と、計算結果よりもソフトバンクでんきの公式発表のほうが誤差ではありますが高めにでています。この原因は、電力市場価格に消費税10%が上乗せされた数値をソフトバンクでんきが用いていることが原因で、ただでさえ利用者が不利になる条件なのがさらに不利になってしまっています。この条件では市場価格が2円を下回った場合にのみわずかに利用者が恩恵がありますが、市場連動額がマイナスになってる時間帯は少なくてもこの3日間の中では皆無であり、仮に市場価格が0.01円のタイミングが訪れてもこの計算式では0.66円のマイナスにしかならないと考えると、電力市場連動額は利用者にとってハイリスクノーリターンといっても過言ではないでしょう。

今は6月ということもあり電力市場の推移も落ち着いているのに加えて、市場調達比率が30%なので、電力市場連動額が大幅に高くなることはありません。例えば6月の電力市場の平均が10円になったとしても、
電力市場連動単価=(10-2.2)×0.3=2.34
つまり1kwhあたり東電と比較して2.34円高くなる程度です。平均的な家庭の6月電気使用量が260kwhと言われており、608円ほど高くなるだけです。
ですが、7月になってくると話は変わってきます。なぜなら7月の市場調達比率は70%だからです。つまり今まで0.3をかけていたものが0.7に変わります。簡単に言えば0.7=0.3×2.33であるため、6月の電力市場連動額の2.33倍になるということです。仮に7月の電力市場の平均も相変わらず10円が続いた場合であれば608×2.33の1417円ほど東電と比較して高い程度で済みますが、電力がひっ迫して電力市場が高騰した場合、話が変わってきます。


ここ3年の東京における月平均電力相場。2021年1月には大寒波による影響で歴史的な高騰となり、新電力会社の倒産や利用者の悲鳴が相次いだ。去年は1年中高値が続き、今年に入り落ち着いてはきていますが・・・

上表は過去3年の東京の電力相場なのですが、2021年の1月に歴史的高値をつけていたり、去年はウクライナ戦争等の影響により1年中高値が続く状態でした。今年は今のところ落ち着いてきているようには見えるんですが、去年の7,8月のように市場価格が高騰した場合を考えてみましょう。去年の7月8月のように市場価格の平均が30円となった場合、
電力市場連動単価=(30-2.2)×0.7=19.46
1kwhあたり19.46円の電力市場連動額が追加料金として発生します。私の実家は夏はエアコン使用で月500kwhほど使っているので、去年の高騰が今年も起こるのであれば約1万円の追加料金が発生することとなります。私の実家はこのリスクと、ソフトバンクでんきによって得られるリターンがあまりに小さすぎると考え東電に戻すことを決めました。

まとめ

今回私の実家がソフトバンクでんきから東電に戻した経緯としては、両親がスマホを買った際、東電と料金体系が変わりません(実際スマホを購入した時点においては、東電と料金体系が変わらなかったことは事実であり、責めるつもりはありません)と言われ、ソフトバンクでんきに切り替えているという状態の中で、
①去年の11月から燃料調整額の上限が撤廃され、東電と比較して合計2万円ほど電気代が高かった点
②今年の6月から電力市場連動額が新設され、ソフトバンクでんきが設定した基準市場価格2.2円と夏場冬場の市場調達比率70%による利用者のリターンがほとんど見当たらず、一方的な夏場冬場の高騰リスクを負わされる点

主にこの2点のことから私の実家は東電に戻すことにしましたが、個人的にはソフトバンクでんきよりは東電のほうが安いという一点において変更を勧めたのであって、この際値上げした東電についても納得のいかない部分もあり(燃料調整費の基準燃料価格の大幅改定等)、東電よりも良心的な新電力会社があるのであればそこに切り替えるのが望ましいと思っております。ただ私の実家の場合、市場連動型のリスクがある新電力をそもそも望んでいないので、それであれば、今後いつ料金プランがソフトバンクでんきのような市場連動型になるかわからない新電力を選ぶよりは、東電に戻すのが最善であるという結論になりました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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