私の変な不妊治療その15「魔法のステッキ」

花子です。ここでは不妊治療をするなかで出会ったマヌケなことや、趣ぶかい出来事を主につづっています。

その15です。

ある日の私は先生から大量のお薬を処方されていました。

病状が重いというのではなく、一月分を一気に渡されるためです。不妊治療あるあるでございます。その中にちつ錠がありました。

「ハハン、例のやつね」

私は心で思いました。子宮に直接届くように下から入れる特殊な薬。それは前回の受精卵を戻した際に攻略済みだったからです。

大き目のやわらかいカプセルを中指にのせて押し込むのですが、私はそれがたいへんうまい。

余裕よゆう~と思った次の瞬間、凍りつきました。

クスリが、違う…!

なんかスティックついてる!!!

今度の薬は使い捨てのアプリケーターが付属していて、指の出番がない!

衛生的な面で見直しがあったのでしょうか。

そうか…技の出番はなくなったか…。

そしてその薬を使い始めてわかったこと。「マヌケ感はんぱない!」です。

アプリケーターは白いプラスチックの細い筒で、ボールペン位。筒の中に可動式の筒が一本はいっており、下から注射器のように引き出して使います。先がじょうごをひらたくつぶしたような形になっていて、使うときはそこに錠剤をセット。体内に深くはいったところで、引き出した部分を押し込むと、錠剤がベストな位置に入るというわけです。ようはタンポンですわ。

これが…たまらねえんだ。

なんか、ほっそりして絶妙な長さで、魔法のステッキみたいなんです。

薬をセットする前はハリーポッターがもってるやつ。

セットしたあとは魔法少女がもってるやつ。

魔法ステッキの先ってだいたい光るなんかまるいやつがついてませんか?ホルモン剤をセットすると完璧にそんな感じ。

手に持ってくるりと回すとさみしさがこみ上げる。中で押し込むときの「パチリ」という音の情けなさ。

わたしゃどんな魔法も使えないよ…マヌケさを面白がることだけだよ…。なんでだろう、なんで道具を使うようにしちゃったんだろう。毎回キレイに手を洗って問題なかったよ…。一日三回月90本の謎のプラゴミが出ることの方がつらい。薬は吸収性を高めるために水分と出会うと発泡するようになっていて、それだと手で入れるには不都合なのかもしれません。

ちなみに錠剤の方はメタリックな包装でめっちゃかっこいいです。こんな錠剤パッケージみたことない。中はでかい楕円のタブレット。ラムネそのものです。

トイレでアプリケーターを持つたびに、魔法学校のあの子たちが頭をかすめる花子でした。