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逆噴射セルフライナーノーツ&没ネタ大紹介

 逆噴射小説大賞2021、無事投稿期間が終了しました。皆さま本当にお疲れ様でした&ありがとうございました!
 ところで、自作のセルフライナーノーツなるものをを、いままでやろうとして出来てなかったので、今年こそはやってみたいなと思います。プラナリアです。やりました、良かったね。

 投稿した3作品は勿論の事ですが、それ以外にも惜しくも没になったネタ、作品の紹介も惜しみなく紹介していきます。

ケンタウルス調教助手

 競走馬の調教VTRとかを見て、ふと「この隣にケンタウルスとかが平然と走っていたら面白そうだな」という考えが過り、そこから本作の構想が広がりました。

 出だしは初速のインパクトを重視しつつ、ケンタウルスの物理的特徴を提示。さらに主人公のパーソナリティも仄めかしたりと、松井優征先生のおっしゃっていた「複数要素を兼ねる」みたいな技法が実践できた気がして満足してます。というか、800字レギュだと「兼ねる」をやらなきゃやっていけませんよね。

 目標達成への課題として馬のメンタル改善を設定。その余波でケンタウルスは馬と話せるという設定と、マッコリガールの人格が無から生えました。動物にアテレコ罪で死刑に処されかねない重罪ですが、結果的にマッコリガールちゃんは可愛くなったので良かったのかな。

 調教風景は……ごめんなさい、ほぼイメージだけで書いてしまいました。なので現実と比べると色々ガバガバに見えるかもです。いやケンタウルスの存在が一番ガバでしょというのはそうですが、ケンタウルス以外はリアルでありたいという想い。

 他に反省点は、競馬の専門用語が連発してハイコンテクストになってしまったのもあるか。ウマ娘経由で中央競馬にハマった影響で、その辺の用語が全人類が知ってるような錯覚に陥ってる。しかし、いちいち用語解説してるようでは規定文字数には収まらないわけで……難しい。

 ちなみに主人公のヘロ子という名前は18世紀後半の競走馬キングヘロドが由来です。なぜ彼女はそのような名をつけられたのでしょうか?それは作品後半あたりで判明する筈です。

贄の雨傘

 これは実際に目にした歴史資料から着想を得ました。詳しいことは言えませんが、近所の公共施設に寄った際、中に資料展示コーナーが新設されていて、そこでまさしく作中と同じような時期に雨乞いがなされ、それが成功したとの記録があったのです。WW2後という近代に、そんな伝記めいた出来事があったなんて。私は興味をそそられ、妄想を展開し、最終的にそれが作品の形になりました。
 
 3作の中で圧倒的に執筆時間がかかったのも本作でした。何の要素を、どう配置すればより効果的か、より読みやすいか、全然分からなかった。当初はひ孫の水作を視点役に置いた一人称小説として書いていたのを、途中でいきなり三人称にコンバートさせたりと、様々な迷走していましたね。小説を書くのはむずい。

 水作の母について、当初は「愛人と浮気した挙句蒸発しており、水作は母が自分を捨てたと憎んでいる」という設定でした。ドロドロしていて好きなのですが、全体のバランスを考えて今の形になりました。

 説明が足りなかったのですが水作は男の子です。男の子が若かりし頃の母親に勘違いされるというコンプレックス、もっと打ち出したかったよね~。

 メイン武器は傘ですが、これは『スターウォーズ ・ビジョンズ』の第一話に出てくるシスが使っていた傘型ライトセイバーのオマージュです。あれだいすき。思えば私、今まで小道具の魅力を押し出した作品を書いてこなかった気がするので、その辺とても意義ある作品だったと思います。

 蔵に入ったら大量のゼーベス星人がいたシーンはスーパーメトロイドにインスパイアされている。どこが元ネタだよと言われますと「惑星ゼーベスに着陸後、モーフボールとか最初のミサイルを回収して引き返そうとしたら旧マザーブレイン部屋にゼーベス星人が待ち構えていたシーン」ですね。あれだいすき。スーパーメトロイドはつい最近初クリアしたのですが、心底演出がうまい。そう言われる作品を作ってみたいものです。

センパイ・スクランブル

 突然「天から垂れる蜘蛛の糸を伝って登る女子高生と、それを眺める後輩」というヴィジョンが頭を駆け巡ったので、男女の配置を逆にして作品にしてみました。思い浮かんでしまったのだから仕方がない。

 当初はホラー寄りの展開になる予定でした。先輩が空の上に帰った筈なのに私の横にも"先輩"がいる、みたいな……それはそれで面白いのですが結局コメディ方向に吹っ切れることに。

 本作では先輩とは即ち怪人であると定義しています。異修羅でいう十六修羅であり、ヴァルアリスでいう料理人、それが先輩。第一怪人が暴れる所を第二怪人が強襲しさあ大変、というのが前半のあらましです。

 場面転換後、校内での描写はなるべく地に足ついたものになるよう心がけました。ずっとシュールな場面が続くと胸焼けするので一息いれるのと、この後の"第二の先輩"の衝撃を引き立たせる意図です。果たしてそれが成功してるか失敗なのか、作者には分かりかねるのですが。

 巨大フリスビー部の存在が開示された時点で〆る予定でしたが、それだと完全にオチちゃっているので続きを用意。巨大フリスビーが擦れる描写は気に入ってます。

 なんかえらい作品に仕上がってしまいましたが、ケモ夫人が受けてるのならこれも行けるやろの気持ちでGOサインを出しました。全てはケモ夫人の夫がわるい。私はわるくない。

没ネタ集

 没ネタだからといって無暗やたらと人前に晒すのはいかがなものか、と思いましたが、結局ペラペラ話そうが書きたくなったら書くだろう、という事でやっていきます。

・『マインド、ラン。』
 ディストピアSF巨篇。全人口にMIND-RUNという脳制限装置が埋め込まれ、殺人とそれに値する行為が思考レベルで禁止された近未来。これに反発した2人の大学生は、死体損壊という手段で小さな反逆を試みる。自殺体に細工を施し、あたかも本物の殺人事件が発生したかのように工作したのだ……という内容。
 特にタイトルがお気に入り。内容を汲みつつも、意味深な雰囲気を醸し出せたと思っています。キャラクターも「破滅的な女性と年下男性」というアレに向き合えたので良かったです。
 没理由はとにかく尺不足。800文字のフォーマット内でキャラ立て、世界観説明、アクションの開始とを描写するには、私の技量では足りませんでした。必死に削り出せば詰め込める気はしましたが、それだとどうにも淡白になってしまう。そんな感じでうんうん唸っている内に副反応で撃沈。代わりにケンタウルス調教助手の執筆にとりかかる事にしました。
 とはいえこのアイデアを暗黒に葬るには惜しい気がするので、余裕がある時に執筆してみようかと思います。

・『ウォー・アフター・ドロー』
 ゾンビアポカリプス。ゾンビ大感染が小康状態になり、各地に安定した村社会が点在するアメリカが舞台。主人公はゾンビ化後もなお生前の行動の反芻として殺人行為を繰り返す伝説的ヒットマン。彼の元にゾンビ薬をぶち撒けた製薬会社の重役共を暗殺せよとの依頼が持ち込まれた……という話。
 そういえば、アメリカ舞台の作品って多分書いたことがないんですよね。今思えば、アメリカを描くことに挑戦してみたかった気もあります、まあこの世界のアメリカ滅亡しているんですけど。

・『アトミック法律相談所』
 買い物中、急にこの語彙が無から発生した。一発ネタの大喜利の範疇を出なかったので没。

・『切干バイコーン』
 買い物中、急にこの語彙が無から発生した。バイコーン肉を干して細かく切り分けた、いわゆる切り干しバイコーンが大流行した異世界が舞台。世を儚んだ不老不死の女性がバイコーン狩りという職業を通じて生き甲斐を見いだす話になった筈です。

・『やっぱり勇者が一番いい!』
 異世界改名ファンタジー。二つ名が社会的ステータスとして極めて重要視されるある帝国で、全臣民の二つ名を一年かけて改名させることになる。そんな中で改名師の一人として赴任された神官の奮闘記……みたいな話。
 提出した3作が現代舞台に偏ってしまっているので、バランスをとって異世界ファンタジーにも挑戦したかったですね。色々な話に広げられそうな題材だけど、冒頭800字ではヒロインである『呪いでTSさせられ遊び人にクラスチェンジさせられた元勇者』を活躍させられるだけの余裕がなかったのが惜しい。

・『三県境無限増殖』
「三県境が無限増殖し日本全土を覆う」という類を見ない災害を、それに直面し立ち向かった人々へのフェイクドキュメンタリーという形式で語る作品。
 三県境災害のアイデアは以前から温めていたので、いずれは形にして世に出したい所存です。そういえば三県境のプレートが戻ったそうですね。本当に良かった。新しいプレートを善意で提供して下さったメーカーの皆さまには頭が上がりません。これからも三県境の更なる発展を望むばかりです。

総評

 間違いなく、昨年以前より手ごたえのある戦いができた。そう自負しております。前回大会ではアイデアを字数内にまとめるのに手いっぱいだったのですが、今年は根幹となるアイデア以外の、もうちょい細かい部分にも頭が回るようになった気がします。まだ至らぬ部分の多い私ですが、歩幅は小さくとも確実に進歩はできてると言えるのではないでしょうか、言えるといいな。

 ただ3作とも結果的に「現代日本を舞台としたSF、ファンタジー」みたいなジャンルに偏ってしまったのは反省点か。次はもっと視野を広げていきたいものです。例えば世界編、宇宙編、先カンブリア紀編、珪素生物編。さまざまな編が襲い掛かる……!

 あとは続きの構想や執筆モチベを捻りだしつつ、選考結果を座して待つのみ。今年の栄冠は何に輝くか、楽しみにしていよう。

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