マガジンのカバー画像

過ぎてく日に走り書き

24
運営しているクリエイター

#出会い

娘の築いた時間と父

「おとうは出てこないで」 小学二年生の娘は、その体に不釣り合いな大きな掃除機を抱えて、せっせと掃除に励んでいる。自分がこれから使うところだけ。 秋晴れの清澄な空気がカーテンレースをほどよく揺らす。ずっとそこに居座るように見えた入道雲はいつの間にか姿を隠していた。 娘が友達を家に招待した。 学区内の保育所に入れず、彼女は誰も友達のいない小学校に入学した。周りは既に友達のコミュニティが出来上がっているなかで、他人なのは彼女だけだった。 学区が違ってもすぐに友達はできるか

ライトとレフトと時々ストレイト

信号が青から赤に変わった。 薄い青色の空が冬が近づいていることを教えてくれる。 イヤホン越しに響く五、六年前に流行った歌を懐かしみながら、買ったばかりのグレープフルーツジュースを片手にぼんやりと信号が変わるのを待つ。 無精ヒゲを生やしたおじさんがなにやら話しかけてきたのでイヤホンを外した。 「●●っていうラーメン屋がこの辺にあるって聞いたんだけど」 イヤホンをつけてない人が周りにいっぱいいて、それでも僕に聞きたかったことはラーメン屋の場所で。その感じが少し面白くて笑い

出会えば混ざり合う色彩

味噌汁。好きではなかった。どちらかといえば嫌いだった。でも今は、体に染みこんでほっとさせてくれる飲み物になってる。そんな味噌汁から始まる空想と現実と思いたった言葉から繋がるお話。 もしも雨に打たれて、前髪から水が滴るほど、服がびっちゃりと肌につくほど、ずぶ濡れになった時、そっと温かい味噌汁を出してくれる人がいたら・・・。いや、まずはバスタオルをお願いしますと思ってしまう。 味噌汁を飲む前に、バスタオルが欲しいんだと言えるときもあるし。 味噌汁を飲み終えて、相手に気づかれな