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「おとうは出てこないで」 小学二年生の娘は、その体に不釣り合いな大きな掃除機を抱えて、せっせと掃除に励んでいる。自分がこれから使うところだけ。 秋晴れの清澄な空気がカーテンレースをほどよく揺らす。ずっとそこに居座るように見えた入道雲はいつの間にか姿を隠していた。 娘が友達を家に招待した。 学区内の保育所に入れず、彼女は誰も友達のいない小学校に入学した。周りは既に友達のコミュニティが出来上がっているなかで、他人なのは彼女だけだった。 学区が違ってもすぐに友達はできるか
「私は君に優しさを全くあげていない」 何の脈絡もなく妻が僕にいった。 付き合って十年、結婚して八年を経た妻からの言葉だからなかなか痺れた。 「あげていないと思う」 妻はくりかえした。 「確かに少ないな」 僕は笑った。 「私は人のために生きられない。あなたに寄り添ってあげられない」 妻は寂しそうにいった。 夫としてはなかなか衝撃的なカミングアウトを受けたわけだが、僕が感じたことは違うところにあった。 「僕もそれ思ったことあるな」 妻は不思議そうに僕をみた。 「人
優しさは減る 昨日もらったのにあさってには忘れたりする 愛も減る あったはずなのに馴れると置いてけぼりになったりする 苛立ちだけは足し算で膨れる 望んでなかったはずなのに応じてしまう 阿呆らしい共同作業 期待すると疲れる だから嫌になる。そんな時もある 文句は笑い話の時にさりげなく 笑えば許せるときもある 苛立ちにリミットがないように 優しさや愛情にも上限はない 忘れんぼだからたくさんあげといた方がいい 無理じゃない 笑