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USB古本(ショートショート)

後ろが袋とじになっている文庫本を見つけてから、私は変わった古本を探すのが趣味になった。

ある時、棚から斜めにはみ出している本があった。

タイトルは「上書き物語」

本の上に、USBメモリーがくっついている。

600ページほどの分厚い本にもかかわらず、1ページ目に1行しか書かれていない。

「どかーん、ばこーん、ぼくは死んだ」

きっと、誰かが莫大なデータの上に、これだけを上書きしてしまったのだろう。


私は、本を手に取り、この続きをどんな物語にしようか考えながら、古本屋のレジに並んだ。

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