英語学習・指導で大事にしたいことについて振り返る

年度が替わって、これまでとは別の高校でお世話になることになりました。
科目も学年も変わって不安ばかりでなかなか授業準備も進まないけれど、そうは言っても進めるしかないので、ヒントを得るために「学びのための英語学習理論」と「学びのための英語指導理論」を図書館で借りてきた。
中学以降、英語に対して苦手意識とか嫌悪感を持ったことがない上に、それなりにできるようになったせいで、子どもたちがどこでつまずくのかわからなかったり、どんな説明が納得できてわかりやすいのかとか、自分のこれまでの学習でどの方法が効果的だったのかとか、教室環境ではなんのためにどんなことができるのかとか、とにかく経験不足・勉強不足だったりしていて、このままではダメなのである。

とりあえず、読んでいて自分に突き刺さるものをメモしたり、思いついたことをメモしたりする。しかし新年度でさすがにいろいろ追われてて、結構雑に読んでる。

学習編

なんのために英語を学ぶのかという目的は、特に最近AIが活用できる時代では、ただ「英語ができる」=「テストが解ける」みたいな部分にあるとやっぱり厳しいところがあるように思う。
私は英語じゃなくても他の言語でも、これまで母語として無意識に獲得してきたことば以外で、「ことばを学ぶ」ことを楽しんでほしいなぁという思いがある。
学ぶのは、読む・聞く・書く・話すのに「使う」ためだけではなくて、やはり言語と密接な関係にある文化の部分に、多かれ少なかれ触れられるというところにあるというか。
でもこういう信念は、頑張りすぎちゃうと押しつけになっちゃうから、オーラのように身に纏うだけで良いような気がする。笑

あと、英語の学習法って本当に人によっていろいろ合う合わないがあったりするようだし、なんか固執しないスタイルを持てるようになりたい。
その意味でも、人によってビビビとくる側面ってそれぞれだから、こちら側がどれだけ提供できるかという「引き出し」の部分をもっともっと増築したい。

音声識別が不得意であっても、口の構えと舌の位置を学習して、正しく発音することができるようになると、聴覚に影響して、聞き取りができなかった音声が聞き取れるようになることが報告されている。「知覚できなければ正しく発音することができない」と一般的には考えられているが、調音様式と調音位置に基づいて、正しく発音することができるように調音方法を指導すると、知覚が可能になることが確認されており、言語病理学では療法に広く用いられている。

中森 2009, p.27

学習の時に、言語処理における個人差があって、視覚処理優勢型・聴覚処理優勢型・身体処理優勢型と3つのタイプがあるんだとか(中森 2009)。
私、絶対的に聴覚>身体>視覚な気がするのだけど。←本読むのがめちゃめちゃ遅い人。
しかも、リーディング学習なら、私みたいな聴覚優勢型は「一人で、あるいは誰かに向かって音読する」「黙読する際も発音に注意を向ける」のが良いみたいなんだけど、私これずっとやってた!!!音読よくするし、めっちゃ自分の声聞いてるの!
そうか〜、そうすると、人によって合う合わないって、こういうところにもあるのか!
いろいろやり方変えながらやらないとだね。ちょっとだけメモしておく。

スピーキング(教科書を用いた主題の討論)
・視覚:活動を始める前に、教科書を見渡して何を話すかを考える
・聴覚:何を話すかを考えてから状況を想像し、教科書の内容を聞く
・身体:何について話すかを考えて、独り言を言う

ライティング
・視覚:書く内容について想像を膨らませる
・聴覚:書きたい内容を話し合う。声に出しながら読み返す
・考えを整理するためにメモをとったり走り書きをしたりする

あ、これ時々忘れちゃうやつ!

conduct, object, present, recordのように、名詞は前半、動詞は後半と強勢の位置の違いによって品詞の違いを表すものもある。

中森 2009, p.45

あと、スクリプト(音声文字化資料;おそらく本文)の活用方法は、中級段階以降の聴解活動で音声何度か聞いても理解できなかった時に利用、音声の変化や弱化が確認できるとのこと。
よく聞き取れなかった部分を振り返らせるみたいなこと、今までしたことなかったなぁ。
音声と文字、それぞれ聴解力と読解力なので、やっぱり文字に頼らせすぎるのもウーンというかんじみたい。気にしたことなかったぜ。

英語にふれる量が増し、視覚的に単語がひとまとまりで認識できるようになると、次第にカタカナルビは不要になる。

中森 2009, p.49

カタカナルビって、難しいよねぇ。eatとか、イートって書いて欲しくないんだよなぁ。嫌な順だと、「ト」にしてしまうこと、伸ばし棒、という感じかもしれない。
しかし、自分も中学生の時ちょっとやったことあるので、初級段階とかでは良いのかもしれない。
自分でふり続けてれば、いつかもしかしたらどの音とどの音が一緒みたいなことに気づいて、IPAもどきを自分で作ってしまう可能性だって、ないわけではない…だろうからね。

…文字の多くは、音声を表記するための手段であり、文字の解読や使用には音声能力が欠かせない。文字を使用するためには、音声言語をどのように区分して文字に置き換えていくのか、逆に、文字をどのように音声化していくのかを習得する。

中森 2009, p.67

文字と音声はこんなに密接なのか。

文字と文字のまとまりを、適確に瞬時に識別する文字識別能力の獲得には、視覚系統と形の記憶を確立 (pattern recognition)することが必要となる。その上で、単語の意味と関連付けを行い,音声一文字一意味の円滑な連結を作り上げる。

中森 2009, p.67

でも確かに私も、読めなきゃ理解できない、という感覚がある。音読していて単語につっかえたらそれは多分知らない単語だ。と思ったら、見てくださいこの下の引用部分!

最近の研究では、「未知語を正しく発音できる能力」の高さが、語彙獲得と読解力向上に関係しているといわれている(Stone et al. 2004: chapter 4)。未知語を正しく発音できる能力が備わっていると、音声規則に従って新出語彙を円滑に学習でき、その結果、語彙力も向上していくと論じている。こうした能力が、外国語能力を獲得する速度と結果に関係してくるとも報告されている。未知語を正しく発音するためには、初級段階の外国語学習者が、外国語に対する鋭敏な音韻認識力を兼ね備えることが重要であり、初級段階では音声学習が効果的であると指摘している。

中森 2009, p.77

でも、途中以降はあまり関係ないらしい。ないんかーい。

一方、上級段階では、十分な語彙を獲得しているため,音韻認識力と読解力には深い関連は見受けられないといわれている。語彙力と読解力は定着しており、読解方策がすでに獲得されているためである。音韻認識力は、初級学習段階の読み取り・読み上げの文字解読や語彙学習過程に関わるもので,中級段階以降の内容理解や解釈といった読解には影響はないものとも考えられる。外国語学習での音韻認識力の関連性については全く未知数である。

中森 2009, p.77

あと、気になってた音読指導について

教科書の音読を効果的に行うには、文字やつづりが瞬時に解読できることが前提となる。音読は,音素の発音、弱形。音声変化,強勢、リズム、イントネーションなどの英語の音声体系を体得するための方法である。日本語的な発音、リズムやイントネーションには十分な注意が必要である(第2章「音声」3.1参照)。初級段階や文字認識が苦手な学習者に音読を強要すると、文字を追いかけることだけに集中して、区切りや、まとまりが認識できないため効果は望めない。

また、拾い読み防止として暗唱を取り入れる授業もある。教師は、暗記させる暗唱文が、文法事項の典型例として覚えておく必要性があるのか、また、定型表現として会話や作文に役立つ文なのか、などを考慮する。

暗唱は、暗記した文の再生であり、思考しながら表出を行う創造的な言語使用ではない。また、暗記した文が実際のコミュニケーションで使用されるかは予測することはできない。

指導に音読や暗唱を取り入れる場合には、教育的意義と目的を考慮に入れてから行う。

中森 2009, p.82

ひえん、おっしゃる通りです。。。私は高校の時結構音読の活動が多かったタイプで、スラッシュリーディングに始まり、いかに早く3回読み終えられるかとか、シャドーイングに挑戦してみるとか、いくつかゴールのパターンがあって、ひたすら読み上げていた。私は聴覚タイプだから、これの相性が良かったようだ。
でも、シャドーイングして覚えたものは、暗唱の範囲にとどまってしまうというのも確かに言えている。
といっても、チャンクというか、まとまりみたいなのはやっぱり自動化されていくような気もするのだけど。

語彙と構造、運用の章、多分大事だけどちょとお飛ばしちゃった。段々気づいてきたけど、こうやって知識を入手するごとに、ヒントが増えて、授業計画で考慮しなければいけない項目が増えている。
質的に向上することが目的だから良いのかもしれないが、時間はあまりないのである。
一個だけ構造の章の後ろのトピックコーナーで目に入ったものだけメモしておく。これちょっと楽しそう。

★語彙中心の指導法による受動態指導
受動態は「形容詞化された動詞」による表現形式ととらえ、形容詞との比較を用いながら導入する。形容詞と比較対照することによって、過去分詞は形容詞化された動詞形として理解させる。

I was happy to hear your story.
I was moved to hear your story.

The road is dirty.
The road is cleaned.

中森 20009, p.174

サクッと、指導編にも目を通す。聴解指導について。

聴解活動を開始する前には「何について聞くのか」を準備する活動を行い、背景知識を活性化させながら内容の予測をさせる。素材に使用される表現や構文などの言語知識の活性化を行い、これらを音声的に確認しておく。聴解の内容理解が促進されるため、より効果的に語彙と文法が定着していく。
はじめに学習者個人で聴解素材に関する背景知識と、表現などの言語知識の活性化を行う。素材に関連した写真や絵、記事などの具体物がある場合は、状況・場面、出来事や動作を推測させる。次に、教師はクラス全体から表現を集め、それらを黒板で品詞や意味概念ごとにグループ分けしながら整理をしていく。

【注意点】
準備のための段階(warm-up)であることに留意する。
(1)時間を取りすぎない。
(2)素材の内容を与えすぎない。
(3)素材のないように深入りしすぎない。
(4)聴解を混在させた準備活動を行わない。

中森 2010, pp.89-90

確かに、今となっては突然にCBCニュースを見たりするけど、前日に扱われたニュースの方が内容も入ってきやすいもんね。事前に背景知識を与えるって確かに大事な足場だてだ。
ここのセクション、有用すぎる!
ちょっとだけ簡略化してメモしておく✍️。
①聴解中に関しては、主題や概略が把握、特定の情報の抽出、内容理解は学習者間の共同の学習、という具合に行う。到達可能な課題を設定して生徒が達成感を感じられるように。
②聴解後には、聞き取りにくい音声(弱形や音声変化)、表現、文法の確認解説。中級以降なら因果関係や論理関係、問題と解決策などの整理を通して内容把握を確認。要約させたりコメント書かせたり言わせたりするもよし。上級なら討論も。

ディクテーションの時の空所数目安を孫引き(Numan and Miller 1995:27を引用、中森 2010)。
・初級:教材が50-65wordsなら8-12個
・中級:教材が75-90wordsなら14-16個
・上級:教材が100-120wordsなら18-20個

作る時に参考にしよう。というか、こっちの指導理論の方は文字通り指導ベースで詳しく解説・提案してくれていて、多分こっちに書き出している場合じゃなさそう。
とりあえず学習編でどんなことを大切にしたいかとか、どんな活動をやって行けたら良いなとか、なんとなく新たに掴んだものとか、学部の時に学んであって思い出したものとかを得たので、ここまでにしたい。
授業計画進めながら、指導編を参照してやっていこうかな!

あとは、実際に授業してみるまで、どんなもんなのか、本当にわからない!
あまりガチガチに決めずに、生徒に合わせて柔軟にやっていけるように準備を進めようと思いました。


中森誉之(2009)『学びのための英語学習理論 : つまずきの克服と指導への提案』東京 : ひつじ書房
中森誉之(2010)『学びのための英語指導理論 : 4技能の指導方法とカリキュラム設計の提案』東京 : ひつじ書房



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