第二話 出会いと別れ
みんなに認めさせたいとか生活を楽しくしたい、そして自分の世界を変えたいという思いからダンスを始めてみた。
だが特に目標はなくダンスの本やパニクルーの番組の録画などから動きを盗み、練習をする日々が続く。
僕の行っていた学校は漫画の学校の屋上みたいに開放されていて、各々バスケをしたり、くつろいだりしているみんなの溜まり場になっていた。
僕は休み時間も屋上で一人黙々と練習していると来訪者がやってきた。
僕に話かけてきたのは同じクラスの福島であった。
私立では結構住んでいる地方がバラバラな子が多いが、福島は僕と地元が近くでチョコチョコ話す奴であった。
僕は誰かにダンスをしている事を言っていなかったので福島は物珍しそうに絡んできた。
福島は運動神経が良いらしく、バク転ができた。しかも逆立ちができるので僕と逆立ちでどこまで歩けるか対決してくれたりした。
話しているうちに福島は自分の話をし始めた。
福島は運動が好きだったのだが体調を悪くして、医者に運動をするのを止められていたこと。高校生になり運動をしても良いと言われ休み時間も屋上で暴れている事。とにかく動きたいらしかった。
福島は少し話づらい事を話してくれた事に僕は親近感を覚え、仲間意識を持った。
こうしてこれをきっかけに休み時間は福島とたまにダンスの練習をするようになり、学校でダンス仲間が出来たのであった。
だが高校というのは出会いもあれば別れもある。
僕がダンスを教えてくれと頼んだが見事に教えてくれなかった平松が学校を辞めると言い出した。
平松は席が後ろだったので、たまに話す事はあったが僕とあまり波長が合わない感じがして、友達とは言える関係ではなかったかもしれない。
そんな微妙な僕らであったがある日、国語の授業で教科書を読めと当てられた平松は漢字が読めず、僕はコッソリ教えてあげた。
テストの日も彼は勉強がわからないと言ったので、僕は赤点を回避できるくらいは大丈夫だったので復習もかねて彼に勉強を教えてあげた。
平松は学校を辞めると決まっていたがテストの結果赤点をまのがれ、少し嬉しそうにしていた。
平松は勉強は出来なかったけど運動神経は良く、一早くバイトをしていて、ダンスも出来てクラスのみんなにどことなく認められている子だった。
そのくせ威張らず、どことなく謙虚だった。
僕はこの時Dragon Ashというバンドでラップを知り、韻にハマっていた。
平松もラップに興味があったみたいで韻について語り合ったりした。
あまり性格があってなかった僕らであったが少し仲良くなっていた気がした。せっかく仲良くなり始めたというのにら彼はいなくなってしまうのだ。
だが僕らはその事についてはあえて話さず、ラップや好きなアイドル、漫画の話などをしていた。
そして終業式の日が来て平松は特にいつもと変わらず学校を後にした。
僕はバスで通学していたのでバスに乗り、少し走り出した頃に平松が自転車で帰っているところに遭遇した。
自転車とバスは交差し平松が遠ざかっていくが彼はこっちに手を振っていた。僕も彼に手を振った。
彼は僕にダンスを教えてくれなかったが、ダンスをするきっかけをくれた人であった。
平松が見えなくなり席に戻る。
雲一つない青空を眺め、少し寂しい気持ちになりながら平松やダンス、これからやってくる夏休みの事を考えながら家に向かうバスに揺られながら帰った。
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