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人や組織の心を変える


ジョーナ・バーガー(桜田 直美訳)「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」、かんき出版(2021)

一人のリーダーがチームを率いる時代は終わり、これからはチームが全員参加し、モノやサービスをつくり上げていくことが必要な時代だと考えられている。口でいうのは簡単だが、現実にはそんなに簡単なことではない。そのようなチームの在り方を目指すリーダーが出てくると、リーダーに依存し、自然に一人がリーダーシップをとるチームになるというジレンマに陥る。

そこで、注目されるのはカタリストである。カタリストは「触媒」、「触発者(物)」、「促進する働きをするもの」という意味の言葉だ。そこから、ビジネスでは多様な専門分野のサービスとシームレスに統合する役割として位置付けられている。

カタリストと言われて、ぱっと思いつくのは、iPhoneを創り上げたスティーブ・ジョブズだ。質の高い商品を創るには、エンジニアリングやマーケティング、グラフィック&インダストリアルデザイン、インタフェースデザインを含む多様な専門分野のサービスがシームレスに統合されていなければならない。ジョブズについて突飛な行動だと語られる数々のエピソードは、統合をしていると考えると説明がつく。

では、カタリストとリーダーはどこが違うのか。この本は、それを人の心を動かすことに焦点を当てて、科学的な研究成果を紹介した本である。

キーワードは慣性の5騎士と呼ばれるもので、心理的リアクタンス、保有効果、心理的距離、不確実性、補強証拠の5つを変化の障害だと考え、減らすと考えることによって、人は自ら進んで、考え方や行動を変えてくれるというもの。

もう一つ、カタリストはファシリテータとは違うのかという問題だ。この違いはリーダーシップだろう。統合するには場をデザインするだけではなく、リーダーシップとマネジメントを併せて行わなくてはならない。

カタリストと呼ばれる存在になりたければ、必読の一冊だ。

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