スマホ使っただけなのに

暗闇の野山に行き、真っ暗な中でしばらくじっとしていると色んな音が聞こえてくる。

風で草木が揺れる音、虫の音、よくわからん遠くの音、小さい音も全部聞き分けられて、聴力の調整をしているような感覚になる。

次に匂い。野山は青臭い、草木の匂いだ。
その草木の匂いに混じって花の香りを見つけた。

あたりは真っ暗だったのが、少しづつ夜目に慣れてきて色んなもが見える。初めは、おぼろげに草木の輪郭が見えてきて、やがて形状も把握できるようになり歩けるくらい見えるようになった。

研ぎ澄ませば音も匂いの方向も暗闇でも見える、凄いぞ人間。

夜目と花の匂いを頼りに少しづつ近づき、野生化したユリの花を見つけた。
もの凄い匂いを発している。

とりあえず、撮影しようとスマホを使った瞬間だった。

暗闇に適していた私の目は画面の眩しさで目が眩み、その一瞬であんなに見えていた夜目が利かなくなった。ムスカ大佐みたいにだった。

再びあの真っ暗な闇の中に引き戻され、こんなにも文字通りに目が眩んだ状態ってあるのかと驚いた。研ぎ澄まされていた感覚はリセットされて、音も匂いの感覚も鈍くなった。

たったの1回スマホを使っただけで、研ぎ澄ましモード終了。
パチンコだってもうちょっとフィーバー長いのに一瞬でリセット。

帰りはスマホのライトを頼りに足元を照らしながら戻った。
ほんの数分前まで必要なかったものが突然必須になった不思議な現象で、これほど退化を実感したことはない。


これは実感してることで書くけど

今回ような感覚は普段はOFFにしているわけではなく、むしろ普段からONになっているんだけど、普段の暮らしが匂いや音など情報が多すぎて無意識にフィルダリングして気づかなくさせているんだと思います。

だから野山で感覚を研ぎ澄ますのは、どちらかと言えばフィルタリングをOFFにしている行為だと思います。

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