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DYSTOPIA ROMANCE 4.0 text:Capter1

オレにとって映画「JOKER」はSNSのメタ表現に思える。出口のない悲しみが永遠に続く、まさに現在のインターネットを見ているようだ。みな傷つきながら孤立を深め被害妄想を増幅させてゆく中で最後は道化を演じながら他者に襲いかかる(ネタバレ注意)。
Kill All Internetはインターネットの歌ではなく人の心のあり方を歌った曲だ。だけどいまの世界について考えようとするとインターネットは避けることができないディストピアだろう。世界を滅ぼすのは悪意や独裁者ではなく善意や正義なのかもしれない。
「You got the money,I got the soul」:プライマルスクリームのKill All Hippiesの歌詞。君は金を手に入れて、オレは魂を手に入れた。ここには「魂を手にいれたオレも金を手にいれた君と同じく罪深い」という鋭い客観性が含まれていて自分自身も大きな力の内側にいるんだ、ということにとても自覚的だ。

さて、Have a Nice Day!ニューアルバムDYSTOPIA ROMANCE 4.0、もう聴いてもらえただろうか。アルバムのリリースなんてしょっちゅうあるわけじゃないのでこれを機会に想いのたけをぶちまけてみようかなあと思いPCに向かっているわけなんだけど。この作品をいま作ることができて本当に良かった。ダンスミュージックであり、ロックミュージックであり、生きていることへのサウンドトラックだ。
いままでのアルバム音源は2011年にCD-Rで作ったHello,good music! hahaha…のラフなカタチを下敷きにしたミックステープ的な作品であり続けたと思う。オレはローファイなアートフォームとして作りきっていたはずだし、その制約の中から生まれたものも死ぬほどたくさんあった。プリセットサウンドとサンプリングで作ったインターネット上を漂う退屈なカノン進行のディスコパンク。劣悪な音質だけどエナジーが宿っていたのは自分でも分かる。単純なシーケンスやシンセの音選びにさえ気持ちが乗ってるってことが何よりも大事だ。音楽というのは奥深い。ただ今回のアルバムはいままでのそれとはまるで違う作品だ。
DYSTOPIA ROMANCE 4.0の歌詞カードの裏表紙に印刷されているQRコードが実は特別にハバナイHPに作ったテキストページの入り口になっている。ハバナイとは一体何なのかを説明しようと書き始めた文章で、本当はそこで収録曲についての自分なりの解釈を注釈したかったのだけど、気持ちが別の方向へと脱線してしまって楽曲について触れるにいたらなかった。その続きを何回かに分けて最後までやってみようと思う。

2018年、クラウドファンディングを利用したDYSTOPIA ROMANCE 3.0のリリースパーティーとしてゼップダイバーシティーのフリーライブをやれたことは大きな意味があった。自分の中のオルタナティヴとしてのマックスをやったわけだ。そして自分ではこれ以上はできないと分かったよ。あのライブの後、諦念や悔しさの中で「わたしを離さないで」と「僕らの時代」ができた。そして1年後にDYSTOPIA ROMANCE 4.0が完成した。オレがオルタナティヴやシーンを主軸に音楽について考えることはもう二度とないと思う。2011年から2018年まで延々とひとりで考え続けた。もう十分だろう。そういう意味で言えば最後までやったから後悔はない。だからこそいまはGEZANや十三月を心から応援したいとも思っている。彼らがやっていることがどれほどハードなことなのかが強烈に分かるよ。
そしてオレは自分の音楽についてもっと考えめぐらせることにした。もしくは人間や世界についてもっと注意深く見つめることにした。いままで以上に自分が体験したことや人が何気なく語ってくれた言葉から歌を作るようになった。みんなひどく酔っ払っているパーティーの終わりに、誰も覚えていないだろう切実な瞬間をオレは垣間見てそれを忘れないように歌にする。一度作った歌をもう一度作ることができないのは、その時と同じ気持ちになれないからだ。歌はオレにとってそのときの心のカタチの記録でもある。

avex trax:DYSTOPIA ROMANCE 4.0のリリースをサポートしてくれる今回の相棒であり圧倒的にバビロン側のレーベル。みんな親切で良い人ばかりだ。オレの作る音楽に影響を与え影を落としているのはブルーハーツ以外だと小室哲哉だね。とりあえず2019年は彼がいるレーベルで魂を売ることにしたよ。

ケルアックやギンズバーグがたむろしていたサンフランシスコの老舗の書店・City Lightsには“open mind”という言葉が壁や天井に貼ってあってそれを辿っていくと2階の写真・詩・科学の蔵書に行き着く、という話を友達に聞かせてもらったことがある。
open mind(オープンマインド)ということを意識的に考え始めたのはあるライブで“わたしを離さないで”を歌っていたときだ。モッシュピットから少し離れた位置でふだん見かけない人たちが歌詞を口ずさんでいるのがステージから見えた。他のミュージシャンにとっては当たり前のことかもしれないが、モッシュピットが当然のようにあるライブを長らく続けてきたオレにとってその外側にいる人たちがオレたちのライブに反応していることがとても新鮮な光景だった。“わたしを離さないで”という歌はそのときのオレ自身の心よりもずっと遠くへと向かっていたのだろう。自分が作った歌によって自分が導かれる。自分の理解がすべてではないってことだ。何年も後に自分の作った歌の見えていなかった意味に気づくことだってあるのさ。

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