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2023/12/6 現在 パワーエックス急速充電サービス、「PowerX Charge Station事業」におけるテスラ車両の充電後不具合が報告されている件についての調査速報

修正・追加履歴

2023年12月6日に公開したレポートにおきまして一部記載内容に誤りがございましたので、内容を訂正及び説明を追加させていただいております。ご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。

  • 2023/12/7

    • ケースB車両情報を修正,ケースB冒頭に説明文を追加

  • 2024/1/9

    • 背景部分のテスラ⾞両、アダプターのCHAdeMOの互換性・安全性に関する説明文を一部修正・追加

  • 2024/2/2

    • 充電開始前の安全性確認のためのプロトコルと車両システムへの過電圧保護における、CHAdeMO仕様書の内容に関する記載を削除




はじめに

テスラ車をご利用のお客様からの弊社充電利用後に不具合のご相談をいただき、2023年11月29日より一時的にテスラ車両の弊社充電ステーションのご利用をお控えいただくことを推奨しております。この度は、皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。

不具合をご経験されたお客様とは、弊社から直接ご連絡・サポートをさせていただくと同時に、詳細調査を実施いたしました。その途中結果を以下レポートとしてご報告差し上げます。

1日でも早く、皆様に安心してサービスをご利用いただけるよう、問題の根本解決に向けてテスラ社とも連携し、原因究明を努めてまいります。状況に進展があり次第、改めてご報告差し上げます。


サマリー

これまでお客様よりお寄せいただいた不具合報告の全ての充電履歴とその生データを解析致しました結果、現時点では弊社充電器の電圧やCHAdeMO規格における通信に不具合は検出されず、弊社充電器に何らかの異常があるというデータは認められませんでした。

今回お客様よりお寄せ頂いた不具合報告に関する充電結果を分析する限り、弊社充電器の規格違反・異常な挙動により、お客様のお車を傷つけるような現象は認められていません。本レポートでは通信の履歴のご説明と、生データ(200ms単位の電圧・電流の履歴情報)の掲載も行なっておりますのでご覧ください。


背景

背景として、パワーエックスのチャージステーション(以下PXCS)では自社の充電器、Hypercharger(以下HC)を採用しております。HCはCHAdeMO 2.0.1認証を受けた超急速充電器で、過去の規格CHAdeMO 0.9~1.2に互換性を持っており、車両の通信プロトコルに自動で合わせて動作する事ができます。テスラ⾞両はCHAdeMO 0.9~1.2で動作するとみられる CHAdeMO適合ではありますが、互換性を公的に確認するCHAdeMO 認証は受けておりません。[2024/1/9 削除]

テスラ車両でPXCSをご利用いただく際には、テスラ車両の充電口(NACS)と日本規格であるCHAdeMOを物理的に繋ぐためにテスラ社の販売しているアダプターをご利用いただく必要があります。これはお客様にお持ちいただくもので弊社はご提供しておりません。

テスラ⾞両はCHAdeMO 0.9~1.2で動作するとみられますが、現在使用されているアダプターはテスラ社がEVのアクセサリとして独自に販売されているもので、CHAdeMOの互換性・安全性を保障するものではないことは、Chademo協議会の「よくある質問」(https://www.chademo.com/ja/faq)にも記載が御座います。
[2024/1/9 追加]

出典:https://www.chademo.com/ja/faq

また、このアダプターを通してCHAdeMO接続を行う関係上本来のCHAdeMOで利用可能な一部機能は利用できず、充電速度も50KW以下と制限されます。


■充電開始前の安全性確認の為のプロトコル

弊社の充電器ではCHAdeMO認証を受けておりますが、充電時にCHAdeMO規格に則り、この安全性確認の為のステップを踏んでから充電を開始するプロトコルになっております。


■車両システムへの過電圧保護

CHAdeMO規格では、充電器の利用可能な出力電圧が一定以下の場合、エラーが発生した場合でも、充電器は一定の上限に違反してはなりません。

弊社の充電器ではこの規格に則り、ケーブルチェック中(EV側電池は電気的に切り離された状態)、充電中とも、それぞれの上限を超えないよう、充電電圧を適正に制御します。これにより、 車両の誤った動作や突然の停止の場合にも、車両システムを安全に保護します。


■調査データ

下図の調査データは、今回の問題が確認された、実際のテスラ車のリアルな充電履歴データをもとに、通信やステータス、イベント、電圧/電流の時系列の変化についての解説と分析になります。

  • 充電履歴

    • [ケースA]

      • 発生時期:2023年11月上旬

      • 発生拠点:関東エリア

      • 車両:モデル3 RWD

    • [ケースB]

      • 発生時期:2023年11月上旬

      • 発生拠点:関西エリア

      • 車両:モデルY RWD モデル3 DUAL [2023/12/7 車両情報を修正]


正常な充電の場合(参考)

下図は京都でのテスラ車をつかったフィールドテストでの、正常に充電が完了した場合のログデータを使い、電圧/電流の経過をチャート化したものになります。

正常な充電の場合(参考)

<検証手順>
・試験対象 –
テスラモデル3 RW 2021 (ファームウェア 2023.38.9)
・CHAdeMOアダプター – 新旧バージョン利用
・テストケース - 異なるアダプターを使用し、車両の充電・停止を確認
・結果 – 車両は、すべてのケースで問題もなく充電完了し、HCも通常停止
・結論 – ①〜⑥全てのトライで問題なくフィールドテストに合格
(テスト終了後、HC京都でのSuperChargerでの充電も問題なし)


充電履歴-[ケースA]

ログデータ分析概要
下図は実際のログデータの全体の時系列ごとのステータス、電圧、電流、発生イベントをチャート化したものになります。全体で3 回の充電トライが行われましたが、HCはいずれも通常停止状態に遷移している状況です。

ログデータ分析概要

<時系列のイベント>
① 1 回目のトライ –
EV車が接続され、充電器からD1信号(充電開始信号1) が送信されたが、充電停止要求が検出される
② 2 回目のトライ –充電は実行されたが、 突然、EV車は電流を受け付けなくなり、最小閾値に達したため HCが充電を停止
③ 3 回目のトライ – EV車が接続され、D1 と D2(充電開始信号2) まで正しく推移。 EV車は電圧を上げず、HCはタイムアウトにより充電を停止

□[ケースA]-1回目のトライ
下図は実際のログデータの1回目のトライ部分のログのチャートとなります。EV車が充電を試みるも、利用側からの充電停止要求が検出され、HCは通常の停止プロセスに遷移しました。

1回目のトライのステータス・電流/電圧・発生イベントのチャート

<時系列のイベント>
・通信確認 -
D1信号(充電開始信号1)が送信され、CAN通信が確立
・絶縁チェック – K信号 (車両準備完了) が受信され、ラッチがロックされる
・停止 – 利用者からの停止要求により、HCは通常の停止プロセスに遷移
※ケーブル チェック タスクの実行直前に停止要求が検出されたため、HCから電圧・電流は供給されず


□[ケースA]-2回目のトライ

下図は実際のログデータの2回目のトライ部分のログのチャートとなります。EV車は充電開始しましたが、車両側の電流の受付停止により、HCの充電停止が発生しました。

2回目のトライのステータス・電流/電圧・発生イベントのチャート

<時系列のイベント>
・通信確認-
D1信号(充電開始信号1)が送信され、CAN通信が確立
・絶縁チェック – IMD(絶縁監視装置) および充電器のD2(充電開始信号2)の後、 499V (CHAdeMO 仕様に従い) でケーブルチェック実行された
・充電 - EV車のバッテリー電圧に従って電圧が最大 359 V に増加し、車両からの要求電流値に従って電流が最大 125 A に増加。 突然、EV車がHCから電流を受け付けなくなる
・停止 – 測定値が最小閾値を下回ったためHCがエラーを検出し、通常の停止で充電プロセスが停止


□[ケースA]-3回目のトライ

下図は実際のログデータの3回目のトライ部分のログのチャートとなります。ケーブルチェック後に電圧が >50V まで上昇せず、電流要求 =0A となり、HCが充電を停止しました。

3回目のトライのステータス・電流/電圧・発生イベントのチャート

<時系列のイベント>
・通信確認 -
D1信号(充電開始信号1)が送信され、CAN通信が確立
・絶縁チェック – IMD(絶縁監視装置) および 充電器 の D2(充電開始信号2)の後、 499V (CHAdeMO 仕様に従い) でケーブルチェック実行された
・充電 – 電圧上昇 V>50V が検出されず、充電要求がゼロとなり、タイムアウトが発生 (timeout-7)。 EV車はcompliance-7に準拠する必要あり。 (CHAdeMO仕様参照)
・停止 - HC がエラーを検出し、通常の停止で充電プロセスを停止


充電履歴-[ケースB]

ケースBは既にPowerXとしてはHC起因でないことは調査済みでございますが、今回注力して調査対象としているケースAの比較対象として掲載しております。[2023/12/7 追記]

ログデータ分析概要
下図は(1)とは別の拠点において、充電エラーが発生した際の実際のログデータをチャート化したものになります。車両は 40kW 以上で 25 分間充電を行いましたが、車両が突然 充電器 からの電流を停止し、最小電流しきい値に達したため、HCが充電を停止しました。

ケースBのステータス・発生イベント・電流/電圧チャート

<時系列のイベント>
① 絶縁チェック –
車両の絶縁チェックが通常より短い時間で終了
② 充電 – 車両は通常範囲を下回る最大123Aおよび~385Vで充電を実行
③ 充電停止– EV車は充電器からの電流の供給を停止。これにより、電圧426V、0Aでわずかなオーバーシュートが発生。HCは車両が充電を継続しないため充電を停止


■現在の問題の状況と原因解明に向けた対応について

以前のX(旧Twitter)投稿では、年式が新しめの車両に限るとご報告差し上げましたが、その後の詳細調査により現時点では、年式問わずモデル3およびモデルYのRWD(後輪駆動のシングルモーター)車両で現象が確認されております。弊社はテスラ社と連携し、引き続き原因を含めた全容解明に早急に努めて参ります。

本件進捗あり次第都度ご報告させていただきます。ご心配をおかけして誠に申し訳ございません。

2023年12月6日


■実際のログデータ

※ログデータについて:お客様のプライバシー保護の観点から日付と時刻は非開示とし、時間だけカウントしたデータになっております。


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